450 / 733
村亡編
446.特別な竜車
しおりを挟む
ルカは朝早くから待っていた。
寝ぼけ眼を擦り乍ら、大きな欠伸を掻いてしまった。
とても眠い。昨日は疲れが溜まった結果、気絶するように眠ってしまった。
ベッドの上で寝なかったせいもあり、上手く疲労も軽減されていない。
かなり苦しい想いをしたのも自業自得だと納得し、ルカは広場で座り込んだ。
「眠ぃ」
もうこのまま眠ってしまおうか。
竜車が来たら起きるように調整すればいい。
亜空間の中に入るのは止め、その場で自分の時間だけを止めた。
「どのみちシルヴィ達も来ないかもしれないんだ。ゆっくりでもいい。……いや、一人なら飛べるのでは?」
ルカは元も子もないことを考えてしまった。
けれど自分一人だったら亜空間を介した《テレポート》も使える。
それを使わずとも、《フライ》を使って飛行すればいいんだ。
ルカは一人の方が都合が良すぎることに気が付いてしまい、もの凄く心苦しくなった。
「いや、考えない方が良い……考えない方が……」
ルカは少しの間眠ることにした。
そうして時間が刻々と過ぎて行く。
気が付けばどのくらいだろうか。大体一時間ほど眠りについていた。
すると何かがペタペタ駆けて来る音がした。おまけにゴロゴロと車輪が回る音もする。
「ん?」
ルカは気が付いて目を開けた。
いや、近付いて来ていることには、百メートルは前から気が付いていた。
瞼の裏側の暗闇から抜け出すと、目の前には一匹の地竜が居た。しかし地竜にしては背中に短い翼が生えていて、何処となく見覚えは……あった。
「あれ、この地竜って確か」
千年前に見たことがある。これはナタリーが連れていた地竜だ。
とは言え普通の地竜じゃない。背中の短い翼は今は畳まれているだけ。
本当は飛竜なのだが、そんな話は今は如何だっていい。
問題はこの飛竜がナタリー達エルフ族に仕えるものであり、誰がここに呼んだのかだ。
「まさかナタリー、エルフの森にわざわざこの子を?」
まさか遣わせてくれるとは思わなかった。
ルカは「ふん」と笑いを浮かべてしまうと、何故か飛竜から声が聴こえた。
口をパクパク動かすと、ルカは魔術を使っていないのに、飛竜が喋っている。
「なんで笑っているの?」
「なんでって、私なんかに飛竜を寄越したからだよ」
「ん? 遠いからじゃないの?」
「それもあるけど、まさかエルフ族の竜車に乗せて貰えるとは思わなかったんだよ」
ルカはナタリーに移動手段の手配を頼んだとはいえ、ここまでの厚い待遇とは思わなかった。
現に飛竜の後ろには木組みでできたいい感じの荷車がある。
屋根も扉も窓も付いていて、最高の代物だった。
「それってこれのこと?」
「それのこと」
しかし当の飛竜はその良さに気が付いていない。
当然だ。竜のパワーや価値観からしてみれば、こんなもの必要がない。
自分を縛る枷でしかなく、自由に歩を進めることも叶わないのだ。
「私達のために竜車を引くの、ちょっと嫌でしょ?」
「僕は嫌いじゃないけど?」
「そうなんだ。良い子だね」
ルカはそっと飛竜の頬を撫でた。
するとくすぐったそうに「グギャァ」と鳴いた。
体に傷がない。おまけに大きくもない。この子はまだ子供……いや、大人に成りかけの段階だ。ルカは千年前に見た個体とは違うことを悟ったが、時間の流れとは儚いものだと知っていた。
「それより君は誰? ナタリーから頼まれてきたけど」
「私はルカ。トキワ・ルカ。ナタリーとは古い友人かな」
「そうなんだ! 僕はね、ジュナイダーだよ! ジュナイダー二代目」
「ジュナイダー? あれ、その名前は確か……」
如何やら受け継いでいるらしい。全くナタリーもかなり味のあることをする。
ルカはクスクスと笑いを浮かべると、そっとジュナイダー二代目に手を伸ばす。
「ところでジュナ二はエルフの森に行ったことはある?」
「うん! リタリーに連れて行ってもらったよ!」
「リタリーに? それなら安心だね。それじゃあ……時間まで、遊ぼっか」
ルカはジュナイダー二代目に遊びの誘いを入れてみた。
するとジュナイダー二代目は「やった!」と嬉しそうにはにかんでくれる。
やっぱり子供だ。いくら大人に成りかけの飛竜とは言え、子供っぽさも残っている。
ルカはそっと手を伸ばすと、ジュナイダー二代目と遊ぶことにし、退屈な時間を過ごすことにした。
「それじゃなにをして遊ぶ?」
「うーん……追いかけっこ!」
「追いかけっこ? それじゃあ空でやろうか」
「翼を使ってもいいの! いいのいいの!」
「もちろん。たまには飛ばないと使い物にならないでしょ? それじゃあ私が逃げるから、追いかけて来てね」
「よーし、絶対捕まえるぞ!」
ルカとジュナイダー二代目は朝早くだったこともあり、空へとその姿を逃がした。
一瞬で舞い上がると互いに追いかけっこをし合う。
飛竜らしく翼を広げるジュナイダー二代目に対し、ルカはいつも通りの〈フライ〉だったが、圧倒的なスピードは変らず、いくら飛竜とは言え捕まる気がしない。
少し大人げない遊びを繰り広げるのだった。
寝ぼけ眼を擦り乍ら、大きな欠伸を掻いてしまった。
とても眠い。昨日は疲れが溜まった結果、気絶するように眠ってしまった。
ベッドの上で寝なかったせいもあり、上手く疲労も軽減されていない。
かなり苦しい想いをしたのも自業自得だと納得し、ルカは広場で座り込んだ。
「眠ぃ」
もうこのまま眠ってしまおうか。
竜車が来たら起きるように調整すればいい。
亜空間の中に入るのは止め、その場で自分の時間だけを止めた。
「どのみちシルヴィ達も来ないかもしれないんだ。ゆっくりでもいい。……いや、一人なら飛べるのでは?」
ルカは元も子もないことを考えてしまった。
けれど自分一人だったら亜空間を介した《テレポート》も使える。
それを使わずとも、《フライ》を使って飛行すればいいんだ。
ルカは一人の方が都合が良すぎることに気が付いてしまい、もの凄く心苦しくなった。
「いや、考えない方が良い……考えない方が……」
ルカは少しの間眠ることにした。
そうして時間が刻々と過ぎて行く。
気が付けばどのくらいだろうか。大体一時間ほど眠りについていた。
すると何かがペタペタ駆けて来る音がした。おまけにゴロゴロと車輪が回る音もする。
「ん?」
ルカは気が付いて目を開けた。
いや、近付いて来ていることには、百メートルは前から気が付いていた。
瞼の裏側の暗闇から抜け出すと、目の前には一匹の地竜が居た。しかし地竜にしては背中に短い翼が生えていて、何処となく見覚えは……あった。
「あれ、この地竜って確か」
千年前に見たことがある。これはナタリーが連れていた地竜だ。
とは言え普通の地竜じゃない。背中の短い翼は今は畳まれているだけ。
本当は飛竜なのだが、そんな話は今は如何だっていい。
問題はこの飛竜がナタリー達エルフ族に仕えるものであり、誰がここに呼んだのかだ。
「まさかナタリー、エルフの森にわざわざこの子を?」
まさか遣わせてくれるとは思わなかった。
ルカは「ふん」と笑いを浮かべてしまうと、何故か飛竜から声が聴こえた。
口をパクパク動かすと、ルカは魔術を使っていないのに、飛竜が喋っている。
「なんで笑っているの?」
「なんでって、私なんかに飛竜を寄越したからだよ」
「ん? 遠いからじゃないの?」
「それもあるけど、まさかエルフ族の竜車に乗せて貰えるとは思わなかったんだよ」
ルカはナタリーに移動手段の手配を頼んだとはいえ、ここまでの厚い待遇とは思わなかった。
現に飛竜の後ろには木組みでできたいい感じの荷車がある。
屋根も扉も窓も付いていて、最高の代物だった。
「それってこれのこと?」
「それのこと」
しかし当の飛竜はその良さに気が付いていない。
当然だ。竜のパワーや価値観からしてみれば、こんなもの必要がない。
自分を縛る枷でしかなく、自由に歩を進めることも叶わないのだ。
「私達のために竜車を引くの、ちょっと嫌でしょ?」
「僕は嫌いじゃないけど?」
「そうなんだ。良い子だね」
ルカはそっと飛竜の頬を撫でた。
するとくすぐったそうに「グギャァ」と鳴いた。
体に傷がない。おまけに大きくもない。この子はまだ子供……いや、大人に成りかけの段階だ。ルカは千年前に見た個体とは違うことを悟ったが、時間の流れとは儚いものだと知っていた。
「それより君は誰? ナタリーから頼まれてきたけど」
「私はルカ。トキワ・ルカ。ナタリーとは古い友人かな」
「そうなんだ! 僕はね、ジュナイダーだよ! ジュナイダー二代目」
「ジュナイダー? あれ、その名前は確か……」
如何やら受け継いでいるらしい。全くナタリーもかなり味のあることをする。
ルカはクスクスと笑いを浮かべると、そっとジュナイダー二代目に手を伸ばす。
「ところでジュナ二はエルフの森に行ったことはある?」
「うん! リタリーに連れて行ってもらったよ!」
「リタリーに? それなら安心だね。それじゃあ……時間まで、遊ぼっか」
ルカはジュナイダー二代目に遊びの誘いを入れてみた。
するとジュナイダー二代目は「やった!」と嬉しそうにはにかんでくれる。
やっぱり子供だ。いくら大人に成りかけの飛竜とは言え、子供っぽさも残っている。
ルカはそっと手を伸ばすと、ジュナイダー二代目と遊ぶことにし、退屈な時間を過ごすことにした。
「それじゃなにをして遊ぶ?」
「うーん……追いかけっこ!」
「追いかけっこ? それじゃあ空でやろうか」
「翼を使ってもいいの! いいのいいの!」
「もちろん。たまには飛ばないと使い物にならないでしょ? それじゃあ私が逃げるから、追いかけて来てね」
「よーし、絶対捕まえるぞ!」
ルカとジュナイダー二代目は朝早くだったこともあり、空へとその姿を逃がした。
一瞬で舞い上がると互いに追いかけっこをし合う。
飛竜らしく翼を広げるジュナイダー二代目に対し、ルカはいつも通りの〈フライ〉だったが、圧倒的なスピードは変らず、いくら飛竜とは言え捕まる気がしない。
少し大人げない遊びを繰り広げるのだった。
1
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ
蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。
とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。
どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。
など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。
そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか?
毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる