1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

文字の大きさ
460 / 733
村亡編

456.マギアラには浸透していない文化

しおりを挟む
「なるほどの。それくらい構わんぞ」
「ありがとうございます、村長。すみません、俺のせいで」
「なにを言っておる。おかげで荷物も無事に運んで貰えたではないか。それで嬢ちゃん達、こんななにも無い村ではあるが、泊って行ってくれるのか」
「「「はい」」」

「そうかそうか。では村で一番良い宿を使ってくれて構わんぞ。金は要らんが、見ての通り食料は……」
「大丈夫ですよ。こっちはこっちで用意してますから」

 ルカは亜空間を展開した。
 その中から米や野菜、肉に魚と有り余るだけの食料をチラ見せする。

「なんと!? これはまだ大量の食料を」

 すると村長は目を見開いた。
 村長だけではなく、隣に居た若い男やキヤチャも同様で、亜空間の中を覗き込む。
 大量の食料が食欲を掻き立て、空腹を強烈に刺激した。
 けれどその姿は一瞬のもので、ニヤリと笑みを浮かべると、亜空間をルカは閉ざす。

「っと、それじゃあ私達は行きますね。宿、ありがたく使わせていただきます」

 ルカは笑みを浮かべた。
 村長は血走った目をしていたが、それすら凌駕する冷たい目をルカはした。
 踵を返し、クルンと坂道を下って行くと、教えて貰った宿に向かった。

「良かったんですか、ルカさん?」
「なにが良かったのかな?」
「村長さん達の前で、あんなことをして。その、亜空間の中から食料を見せつけるなんて真似、非人道的な行いをしているようにしか見えませんでしたよ?」

 ルカは隣にやって来たダリアに諭される。
 確かにダリアの目線からすれば、ルカのやっていた行動は、飢えている村人を上から目線で舐め切った態度と捉えても何ら不思議ではなかった。
 けれどルカはそれを分かった上で特に否定することもなく、ダリアのことを試した。

「ダリアは私を尊重してくれるんじゃなかったの?」
「それはその……一応スカーレット王国の第三王女ですから!」
「良かった。忘れて無かったんだね」
「は、はい。で、でもルカさんの騎士も忘れない私の目標ですよ!」

 ダリアはルカに訊ねられ、迷わず胸を叩いてみせる。
 堂々とした態度に王族の気迫を感じ取ると、ルカは嬉しくなった。
 とは言え、ルカは瞬時に態度を変える。ふと頭の中で意識を切り替えたのだ。

「まあそれは置いておくとして、アレはわざとだよ」
「わ、わざと!?」
「そうだよ。みんなも気が付いてたよね?」

 ルカは後ろを続くクタクタなシルヴィア達に訊ねる。
 先程までのルカの態度に対応。その全てはわざとだった。
 ダリアは気が付いてなかったらしいが、溜息を吐きつつ、シルヴィア達は答えた。

「まあ一応気が付いてたけど、アレは流石に無いわよ」
「そうだねー。ちょーっと、やってるかなー」
「この村の人達は本当に食糧難なんですよ。それを助長するような真似はダリアさんの言う通り、非人道的かと思います」

 気が付いてくれていたらしい。流石は死線を潜って来た友達だと、ルカは嬉しく思った。
 けれどダリアと同意見で非人道的と言われた。
 だけど重くのしかかる言葉の楔を心に喰らっても動じたりはしない。それが千年前の魔法使いと言うものだからだ。
 そのためルカは口角を上げると、自分のやった行いに開き直ってみせる。

「だけどこれだけ煽れば、向こうからアクションを起こしてくるはずだ。それまで私達は待っていればいいんだよ」
「アクション?」
「そうだよ。私が欲しいのは情報だからね」

 ルカが煽ったのには明確な理由があった。
 それは敢えて空腹を助長させ、ルカ達のことを凄い魔術師だと魅せ付ける。
 そうすることで欲しい情報を落としてくれる、言えば都合のいい駒にする予定だった。
 だからだろうか。自分の思惑を脳裏に焼き付けると、ルカの表情は不敵に浮かぶ。

「さぁ、楽しみだよ」


「おお、結構広いね」

 ルカ達は村長の許しを得た上で、一番豪華でこの村唯一の宿にやって来た。
 当然通された部屋は一番奥。
 広々とした十二畳のスペースが設けられ、開放感すら感じられる。全く以って荷車とは大違いだった。

「ちゃんと床があるわね。ふぅ、これで荷車生活から一瞬だけでも解放されるわ」
「そうだねー。ところでジュナ二は?」
「ジュナ二なら馬小屋……の横で寝てるよ。特等席だって」

 シルヴィアは床に座り込んだ。気持ちが良さそうでうっとりしている。
 全身から無駄な力が抜けると、体がふにゃふにゃになっていた。

 それはライラックも同じようで、早速固いフローリングの床に横になる。
 のんびりと過ごせて何よりだと思いつつ、ふとここに居ないジュナイダー二代目について問う。
 生憎ジュナイダー二代目は宿の中には入れられなかった。可哀そうと思う反面、それも致し方が無い。
 けれど代わりにと言うべきか、馬小屋の隣のスペースがこちらも広く設けられていたので、そちらでくつろぐ運びとなった。本当は遊び足りないのだろうが、地竜の姿でも大概。
 残念だけど、納得して貰うことになり、ジュナイダー二代目も頭が良いので受け入れてくれた。

「そっかー。それじゃあ私達もゆっくり過ごせるねー」
「そうだね。まあ見たところベッドはないみたいだけど」
「ってことは……こっちの収納かなー?」

 部屋の中にはベッドが無かった。西洋側の地域だが珍しい。
 とは言え全く寝具が無いとは限らない。
 そこでライラックは部屋の中、壁に設置された押し入れのような収納に視線を飛ばす。

「あっ、私が見てきますね。よいしょ、うわぁ!?」

 ダリアが率先して動いてくれた。
 収納の引き戸を早速開いてみると、中には大量の寝具が入っていた。
 白いモフモフの布が折り畳まれており、シルヴィアとブルースターは首を捻るが、ルカとライラックだけはこの寝具に心当たりがあった。

「うわぁ、布団だね。そっか、この辺の村って東の文化の影響も受けているんだ」
「本当だねー。でもさ、こういう場所だとベッドってなかなか置けないよね?」

 収納の中に納められた寝具は布団。東の地域では特に珍しくはない。
 けれどここはマギアラの付近。スカーレット王国の外ではある、平和主義な中立の国ではあるのだが、基本的には西の文化が強いのだ。
 だけどこの宿では西の寝具ではなく、住居の形状や服装も相まって、東の影響の方が強く出ていた。まさか西側で布団を見かけられるとは、ルカも思わず「ほぇ」と口に出した。

「コレがお布団ですか?」
「私、使ったことないけど……へぇ、ベッド自体を置くとスペースを取るから片付けられるようにしているのね。考えたわね」
「そうですね。私も一度使ったことはありますが、マギアラでは見かけませんね」
「本当だよねー。色んな人がいて、色んな文化が入り込んできているのにねー」

 如何やらルカと同じ意見を持っていた。
 確かに部屋の中を改めて見てみるが、ここにベッドを置くのは少し違う気がする。
 それもそのはずここは大部屋。ベッドを幾つも置いてしまうと、折角の広々とした空間が使えなくなってしまうのだ。
 となれば自ずと布団に行き着くのも無理はなく、ルカ達はあらゆる面で納得ができた。

「でも眠れるだけありがたいよ。っと、今日はもうやることもないから、早めに宿のキッチンを借りようか」
「おっ、なにか作るのね! 手伝うわよ」
「ありがとう。それじゃあお米を使った料理を出そうかな」

 話も落ち着いたところで、今晩の夕飯を作ることにした。
 宿には予め状況を伝えてあるので、快くキッチンを借りられる。
 少し手の込んだものも作れるだろうと、ルカは亜空間の中から材料を吟味する。
 満足の行くご飯が作れればそれでいいと思い、部屋を出ようとするルカ達だったが、ふと人影があり足を止める。警戒心も多少残しつつも、そこに現れた人物には見覚えが当然あった。

「あの、少しいいかな」
「キヤチャさん? 如何したんですか?」

 そこに居たのはキヤチャだった。
 なんだか申し訳なさそうな顔をしているが、何かあったのだろうか。
 お互いに無言が数秒の間を生む中、キヤチャはルカにお願いをした。
 
「あの、村長が呼んでいるんだ。もう一度村長の家に来てはくれないかな?」
「「「えっ?」」」

 シルヴィア達は声を上げた。村長からの頼み事など、ルカの思う壺だった。
 だけどこの状況下で、ある程度想像が働いていたルカだけは平然としていた。
やはりと言うべきか、ルカの思っていた通りになったのだ。
 とは言えこっちから出向くことになるとは思わなかったので、やや不服そうだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ

蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。 とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。 どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。 など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。 そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか? 毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。

処理中です...