1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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村亡編

458.魔術師は万能じゃない

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 ルカは村長に頼まれる形で、少しだけ調査をすることになった。
 もちろんルカとして見ても、調査をするのは理に叶っている。
 何故なら情報が圧倒的に足りていないからだ。

「ルカ、なんであんな言い方をしたのよ。どうせ調査する気だったんでしょ?」
「もちろん」

 ルカ達は村長の家を後にしていた。
 それもそのはず、村長の家で話をするより、実際に見た方が早いからだ。

 その道中でシルヴィアはルカに話し掛けた。
 今回のルカがあまりにも素っ気ない対応だったからか、不思議に思われてしまった。
 まるで最初から調査をする気であえて素っ気ない対応をしたかのようで、的を射た問いだった。そのせいか、ルカはすんなりと白状する。

「もちろんって、人の心無いの? 普段ならまだしも、本当に苦しんでいる人達の前で……エグいわよ」

 シルヴィアは軽蔑する目を向けた。
 唇を尖らせ、嫌味しかない含み顔を浮かべる。

 とは言え人の心が無いのは少し酷い気がした。
 ルカは“哀しい”と言う感情が欠如している素振りがあるだけ。
 けれどそんなことをルカが気にするはずはなく、柔らかな表情を浮かべる。

「そうだね。確かにやりすぎちゃったかもね」
「かもねじゃないわよ。開き直って」

 ルカの対応が気持ち悪かった。
 そのせいでシルヴィアは余計なツッコみを入れる羽目になる。

 けれどルカが完全に開き直っているのだ。
 ツッコみを入れざるを得なくなり、髪を掻き揚げて諦める。

「でも、これで真意は見えて来たよ。私達のことをただ使い勝手のいい魔術師とは思われなくなったみたいで安心したよ」
「どういうこと?」

 色々な意味で諦めてしまったシルヴィア。
 そんなシルヴィアの心の隙間を埋めるように、ルカは吐露する。
 首を傾げて理解が追い付かない。
 何を言いたいのか、深く考えようとする前に、いつもの癖で疑問符が出てしまった。

「どうもこうもなにもなにも無いよ。あるのは魔術師のことを勘違いしている一般人の思考だけ」
「結構酷いこと言うわね。でも的は射てる気もするわ」

 シルヴィアは納得したくはなかった。あまりにも魔術師で無い人を非難しているようだったからだ。
 けれどそれが間違いであり、それでいて的を射ている。
 矛盾するだろうが、魔術師の末端であるシルヴィアにとっては、深く突き刺さる言葉になった。

「最近になって少しだけ思うわ。魔術師のことを勘違いしている人、多いなって」
「そうだね。魔術師は決して万能じゃない。なんでもできると勘違いされても困るんだよ。魔術師はあくまで手段であって、仮説を吹き飛ばす結果だけの存在でもない。なにを糧にして、なにを生み出すのか、人間と同じで人それぞれ千差万別なんだよ」

 シルヴィアも少しずつ魔術師に対する他人の目と思考が読み解けてきたらしい。
 多くの人が魔術師のことを便利な道具としか見ていない。
 
もしかしするとあまりにも過敏な評価かもしれないが、ルカとして見れば魔法も魔術師も便利ではあるが手段でしかない。それが絶対ではなく、万能ではない。
 魔力だけで止まらずに何を糧にしているのか、何をしようとしているのか、完全に理解している人は少なく、その結果も無限だった。
 
そんなことを考えていると、シルヴィアと目が合う。
私のことを心配しているようで、何か言いたげだ。

「ルカ」
「なに、シルヴィ?」
「今、深いこと言おうとしてる?」
「言おうとしてる」

 バレていた。完全に意図を読まれていた。
 ルカは恥ずかしいと言う冷めた感情ではなく、解って貰えて嬉しかった。
 だからこそ否定を一切せずに真っ向からぶつかると、シルヴィアは呆気に取られる。

「そう。そうよね。止めた方が良いわよ」
「私も思った。意図して名言を作ろうとしたら、それは戯言でしかない。言葉は軽くて重い。矛盾した形の無いものだけど、ちゃんと人の心を隙間から埋めてくれるものだからね。どんな形であれ、それはその人を変えてしまうから」

 ルカはシルヴィアに注意されてしまった。
 確かに自分から名言を作るのは圧倒的に格好が悪い。むしろダサいの一言で足りてしまう。

 だからこそ自分から反省の言葉を吐き出していた。
 意図して名言を作る以上に、響かない戯言は無い。
 名言は良い言葉だから名言ではなく、他者を納得させ、深い感傷に浸される優れた言葉。あくまでもそうだと思わせる言葉でしかない。

 どれだけ足搔こうが、どれだけ優れた言葉であろうが、名言と戯言は表裏一体。
 言葉の受け止めた方次第で変化の一途を辿るのだ。
 そんな分かり切ったような、達観したような感情を思うと、シルヴィアは口走る。

「ルカ……」
「今度はなに?」
「今のはちょっと名言っぽいわね」

 全く意図していなかった。
 ルカはいつものことながら、普通の会話をしたつもりだった。
 
 けれど知らず知らずのうちに名言っぽくなっていたらしい。
 とは言え、だから何と言って具合だ。
 何処の誰のどんな言葉を名言と捉え、心の器で支えるのかは人それぞれなので、ルカにはそこまで刺さらない。

 だがしかし、シルヴィアは満足していた。
 表情に淀みが少しはあるものの、笑みが浮かんでいた。
 顔色の変化を見れただけで嬉しい。ルカは口角を仄かに上げるが、流石に誰にも気が付かれなかった。
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