1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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村亡編

470.悪魔の手の罠

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 気が付けば村人達に周囲を囲まれていた。
 まるでルカ達のこと手のひらの上で包み込むみたい。
 完全に逃げ道を封じられ、ルカ達は陽気に憑りつかれた村人達の圧を忙しく感じた。

「ううぅ、ちょっと怖いわね」
「そうだね。人間の圧は怖いから」
「そういう話じゃないわよ。あの目、ルカの言う通り誰かに操られているんでしょ?」
「うん。だから、おっと!」

 ルカが口走ろうとする間もない程、村人達は操られていた。
 シルヴィアの風魔術で展開された空気の幕。それすら強行突破して突っ込んでくる。

 まさに捨て身の攻撃。けれどこれは村人達の意思じゃない。
 目の奥に潜む悪魔によって行動の一部を制限され、無理やり動かされている証拠だった。

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 男村人は低い声で発狂する。
 まるでゾンビのような動きをしながら、表情だけがにこやかに微笑む。
 あまりにも不気味。そんな様相すら悪魔の仕業で、ルカ達のことを襲う。

「ルカさん!」

 男村人Aはルカのことを真っ先に狙った。
 鋭い爪で皮膚を引き裂こうと画策する。
 そのことにいち早く気が付いたダリアは、先程は躊躇っていたけれど、容赦なく種痘を叩き込む。

「ごめんなさい」

 そう言いながら腹部に強烈な一撃が入る。
 男村人Aは嗚咽を漏らすと、声をそれ以上出すことはなく、ぐったりして倒れてしまった。地面の上に伏せると、そのまま動かなくなる。

「ありがとうダリア。いい動きだね」
「私もルカさんに助けて貰いました。だから、もう迷いません。私はルカさんの、皆さんを守る魔術騎士です!」

 そういうダリアは大変頼もしかった。
 容赦なく迫り来る村人達を一切の容赦もなく手刀で倒してしまう。
 腹部に強烈な一撃を叩き込まれ、最悪肉離れとか、骨折程度してしまうんじゃないだろうか? そんな勢いを宿したまま、次々と村人達を伏せさせていく。

「あはは、凄いねー。ダリア、生き生きしているねー」
「そうですね。ですが……」

 ライラックは笑っていた。ブルースターは危惧していた。
 お互い見ている部分は一緒のようで、ダリアの後ろにはまだまだ村人が居る。
 本当にこれだけの村人がこの村に住んでいるのだろうか? 明らかに常軌を逸した数で、偽物を疑った。

「ダリア、多分全員が村人って訳じゃないよ」
「えっ、どういうことですか!?」
「そのままの意味だよ。多分半分以上は……やっぱり」

 ルカは襲い掛かって来た村人の顔面に拳を喰わらせた。
 容赦のない綺麗なストレートだったが、攻撃を喰らった瞬間、村人の体が蒸発した。
 如何やら偽物だったらしい。まさか遠隔で陽炎を作るなんて思わなかった。

「やっぱり。これは陽炎だよ」
「陽炎? ってことは、見えてるのってほとんど実体がないってわけ!?」
「そういうことになるかも。でも油断はしないでね。今の攻撃、通用したのは実体があるからだ」

 悪魔は人間なんかより遥かに魔力の量が多い。
 そのため何をしてくるか見当が付き難い。
 だからこそ、油断は大敵。今こうして囲まれているのは、完全に悪魔の手の中にスッポリ収められているのと同じなのだから。

「ブルースター、《オーロラウィング》、いつでも出せるよね?」
「ええ、問題ありませんよ。今すぐにでも出せます」
「そっか。それじゃあ短期決戦だ」

 ここは短期決戦で勝負を決めることにした。
 これ以上長引かせても、操られた村人達の体に悪影響が出るだけ。
 無作為に暴れ回っていても、ルカ達の負けは必至だった。

 だからこそ、ルカは今一番やるべきことを見定める。
 となればやはり一つしかない。
 そう思い視線をくべると、よろけた動きを見せる村長の手元に意識を移す。

「酒壺を取り返さないことには始まらないかな」

 この状況を打破する鍵。それは酒壺の中にある。
 本当はもう少し早くに提供して欲しかったと今更嘆く。
 けれどそんな後の祭りに気を取られる暇は無く、ルカは村長までの道をシルヴィアに頼む。

「シルヴィ、私が村長の所まで行ける道を作って」
「はっ!?」

 当然の反応だった。けれどゴチャゴチャ言っている暇は無い。
 ルカ達の周りには村人と実態を持った陽炎がにじり寄っている。

 吹き飛ばせば大惨事、ましてや空に逃げようにも空間が無い。
 曲者な悪魔の仕業はルカの在り余る実力を封じて来ていた。
 そのせいもあり自由な動きが取れず、唇を噛んでしまう。

「シルヴィ、早く! 私が行ける道を作って」
「あー、もう! なにか分からないけど、後でちゃんと説明してくれるんでしょうね。《ウィンドホール・ロード》!」

 ルカは切羽詰まってしまい、シルヴィアを焦らせる。
 その様子に感化されたのか、シルヴィアは訳が分からないまま、風の魔術で道を作り出す。
 しかも最適解に近い魔術。《ウィンドホール・ロード》は巨大な風穴を生み出すと、三次元的な空間すら利用して、風の道を生み出していた。

「これでいいんでしょ? 早く行って!」
「ありがとうシルヴィ。それじゃあ、これで蹴りを付けようか」

 ルカはシルヴィアの作ってくれた風の道に突入しようとした。
 けれどその前には村人の姿。しかし本物ではない。偽物だ。

「邪魔だよ!」

 揺ら揺らと揺れる陽炎を突き飛ばす。
 すると体が陽炎を透過して、吸い込まれるように風穴の開いた未知へと突入した。
 あまりにも最短の道。ルカは村長の手にある酒壺を取り戻すため、風の中を蹴り飛ばした。

「そらぁ!」

 ルカの体が風の道を異常な速度で駆けて行く。
 その姿を捉えることも、邪魔立てすることもできない。
 まさに風を味方に付けた姿に手出しは無用だった。
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