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村亡編
472.酔って、酔われて、地獄絵図
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ルカは乱暴なやり方で酒壺を奪うと、壺に巻かれた紐を外す。
蓋になっているコルクを力づくで外すと、強烈な古酒の香りが壺の中から迸る。
「うわぁ」
ルカは渋い表情を浮かべ、古酒から顔を遠ざける。
別に酒が絶対ダメな訳じゃない。ただ、ルカはこの古酒の匂いに慣れていなかった。
それもそのはずこの古酒は……と、ルカは想像力を放棄し、空高く舞い上がる。
「せーのっ!」
ルカは村人達からの上を支配する。
上空十メートルの地点を陣取ると、グルグルと回ってみた。
手にしている酒壺の口を下に向け、ポトポトと滴らせる。
「ちょ、ルカなにやってるのよ!」
「アレってさー、ルカが渡した酒壺だよねー?」
シルヴィアとライラックが村人達と応戦しながら、視線をルカに向けた。
明らかにルカの動きが意図的で、小さな円を描いている。
にもかかわらず、酒壺の中身を滴らせ、何をしたいのかよく分からない。
「もしかすると、あのお酒にこそ意味があるのかもしれませんね」
「意味ってどんな意味ですか?」
「それは分かりませんが、なにか特別なお酒なのでは?」
「確か古酒って言っていました。ルカさん、芳しくない表情を浮かべていましたよ」
ブルースターとダリアも互いに前後で村人達と応戦する。
そんな中、考察する余地を見せた。
非常に余裕があるのだが、ルカのやろうとしていることに見当は付かない。
それもそのはず、ルカ以外には誰一人として、酒壺の出所も中身が何でできているのかも分かっていなかった。透明……とは行かない、少しの錆色を塗していた。
「後は成功すればいいけど……まあ、大丈夫だよね」
ルカは若干の不安要素を抱えた古酒を滴らせ、村人達に振りかける。
シトシトと小雨のように降る古酒に触れた村人達。
頭から覆い被さり、毛穴から浸透し、全身が酔いを知る。
それだけじゃない。舌で舐めると、村人達の目がひん剥きそうになった。
「「「うわぁぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん! 酒だ、酒の味だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、ぬなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっん!?」」」
村人達は突然発狂を始めた。
完全に阿鼻叫喚の嵐で、狂ったように酒に酔いしれる。
とは言え、これは酔っているのだろうか? 正直真偽は怪しい。
けれど目の前で怒っていることは常軌を逸していて、囲まれたシルヴィア達は伝染して頭を痛くする。
「な、なによこれ!? どうなってるのよ」
「分からないですけど、苦しんでいますよ!」
「あはは、完全に地獄絵図だねー」
「そうですね。酔いしれて、酔い地獄に落ちたと言えばいいのでしょうが?」
「……面白くない」
地獄絵図のど真ん中で目の前の光景を目の当たりにさせられる。
シルヴィア達はこの苦行に耐えるしかなく、目を伏せ耳を塞ぐ。
それでも聞こえて来る村人達の狂った声に本気で発狂しそうになる中、ポトポトと真上から水の滴る音がした。
「この音ってもしかして……」
シルヴィアが目を開けて上空を見上げた。
そこには悠々と酒壺をひっくり返すルカの姿があり、酒壺の中から錆色を塗した古酒を撒き散らす。
このままだと飲んじゃダメなのに酒に触れることになる。
シルヴィアはそう思い、自分達の周りに魔術を掛けた。
風の幕が覆い被さると、古酒だけが地面の中に吸われていく。
「ふぅ。ちょっとルカ! 学生はお酒飲んじゃダメなのよ、急に古酒を滴らせないでよ!」
「ごめん。でも見るべきは私じゃないと思うけど?」
「はっ?」
シルヴィアはルカに罵声を飛ばす。
学生は酒を飲んではいけないので、このままだと酒を浴びる羽目になった。
けれど間一髪で避けるも、ルカからはあっさりとした言葉しか出ない。
代わりに周りを見るように言われると、村人達が苦しみ終えた後だった。
「な、なによこれ」
「皆さんグッタリしていますよ。も、もしかして皆さん!」
「……安心してください。命に別状はありません。どうやら酔っ払って眠ってしまったみたいです」
ブルースター曰く、村人達は酒に酔って眠ってしまったらしい。
脈拍は安定していて、狂ったような動きも無くなり、スヤリと深い眠りについている。
頬は赤く、明日は二日酔い確定。
それ程まで酒を浴び続けてしまったらしく、肝臓や腎臓が心配になった。
「これで一件落着だね」
「一件落着って、なにを以って一件落着なのよ! もう訳が分からないわ」
「それも後でちゃんと説明するよ。……多分」
「多分じゃないわよ! ちゃんと説明するのよ」
シルヴィアはルカの態度が気に食わない。
ムッとした表情を浮かべると、ルカを圧に掛ける。
とは言えルカは完全に無視すると、村人の傍に寄った。
「そんなことより、早く家に送り届けないと。このままじゃ風邪引いちゃうよ」
「ううぅ、それを言われると弱いわね。はぁ、分かったわよ。もうクタクタ、変に疲れたわ」
シルヴィアは呆れてしまった。げんなりと肩を落とす。
他のみんなもそれぞれ疲れた様子を見せるが、ルカだけは怪しむ。
立ち尽くし腕を組んだまま、村長の体を介していた悪魔の存在に敵意を示した。
蓋になっているコルクを力づくで外すと、強烈な古酒の香りが壺の中から迸る。
「うわぁ」
ルカは渋い表情を浮かべ、古酒から顔を遠ざける。
別に酒が絶対ダメな訳じゃない。ただ、ルカはこの古酒の匂いに慣れていなかった。
それもそのはずこの古酒は……と、ルカは想像力を放棄し、空高く舞い上がる。
「せーのっ!」
ルカは村人達からの上を支配する。
上空十メートルの地点を陣取ると、グルグルと回ってみた。
手にしている酒壺の口を下に向け、ポトポトと滴らせる。
「ちょ、ルカなにやってるのよ!」
「アレってさー、ルカが渡した酒壺だよねー?」
シルヴィアとライラックが村人達と応戦しながら、視線をルカに向けた。
明らかにルカの動きが意図的で、小さな円を描いている。
にもかかわらず、酒壺の中身を滴らせ、何をしたいのかよく分からない。
「もしかすると、あのお酒にこそ意味があるのかもしれませんね」
「意味ってどんな意味ですか?」
「それは分かりませんが、なにか特別なお酒なのでは?」
「確か古酒って言っていました。ルカさん、芳しくない表情を浮かべていましたよ」
ブルースターとダリアも互いに前後で村人達と応戦する。
そんな中、考察する余地を見せた。
非常に余裕があるのだが、ルカのやろうとしていることに見当は付かない。
それもそのはず、ルカ以外には誰一人として、酒壺の出所も中身が何でできているのかも分かっていなかった。透明……とは行かない、少しの錆色を塗していた。
「後は成功すればいいけど……まあ、大丈夫だよね」
ルカは若干の不安要素を抱えた古酒を滴らせ、村人達に振りかける。
シトシトと小雨のように降る古酒に触れた村人達。
頭から覆い被さり、毛穴から浸透し、全身が酔いを知る。
それだけじゃない。舌で舐めると、村人達の目がひん剥きそうになった。
「「「うわぁぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん! 酒だ、酒の味だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、ぬなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっん!?」」」
村人達は突然発狂を始めた。
完全に阿鼻叫喚の嵐で、狂ったように酒に酔いしれる。
とは言え、これは酔っているのだろうか? 正直真偽は怪しい。
けれど目の前で怒っていることは常軌を逸していて、囲まれたシルヴィア達は伝染して頭を痛くする。
「な、なによこれ!? どうなってるのよ」
「分からないですけど、苦しんでいますよ!」
「あはは、完全に地獄絵図だねー」
「そうですね。酔いしれて、酔い地獄に落ちたと言えばいいのでしょうが?」
「……面白くない」
地獄絵図のど真ん中で目の前の光景を目の当たりにさせられる。
シルヴィア達はこの苦行に耐えるしかなく、目を伏せ耳を塞ぐ。
それでも聞こえて来る村人達の狂った声に本気で発狂しそうになる中、ポトポトと真上から水の滴る音がした。
「この音ってもしかして……」
シルヴィアが目を開けて上空を見上げた。
そこには悠々と酒壺をひっくり返すルカの姿があり、酒壺の中から錆色を塗した古酒を撒き散らす。
このままだと飲んじゃダメなのに酒に触れることになる。
シルヴィアはそう思い、自分達の周りに魔術を掛けた。
風の幕が覆い被さると、古酒だけが地面の中に吸われていく。
「ふぅ。ちょっとルカ! 学生はお酒飲んじゃダメなのよ、急に古酒を滴らせないでよ!」
「ごめん。でも見るべきは私じゃないと思うけど?」
「はっ?」
シルヴィアはルカに罵声を飛ばす。
学生は酒を飲んではいけないので、このままだと酒を浴びる羽目になった。
けれど間一髪で避けるも、ルカからはあっさりとした言葉しか出ない。
代わりに周りを見るように言われると、村人達が苦しみ終えた後だった。
「な、なによこれ」
「皆さんグッタリしていますよ。も、もしかして皆さん!」
「……安心してください。命に別状はありません。どうやら酔っ払って眠ってしまったみたいです」
ブルースター曰く、村人達は酒に酔って眠ってしまったらしい。
脈拍は安定していて、狂ったような動きも無くなり、スヤリと深い眠りについている。
頬は赤く、明日は二日酔い確定。
それ程まで酒を浴び続けてしまったらしく、肝臓や腎臓が心配になった。
「これで一件落着だね」
「一件落着って、なにを以って一件落着なのよ! もう訳が分からないわ」
「それも後でちゃんと説明するよ。……多分」
「多分じゃないわよ! ちゃんと説明するのよ」
シルヴィアはルカの態度が気に食わない。
ムッとした表情を浮かべると、ルカを圧に掛ける。
とは言えルカは完全に無視すると、村人の傍に寄った。
「そんなことより、早く家に送り届けないと。このままじゃ風邪引いちゃうよ」
「ううぅ、それを言われると弱いわね。はぁ、分かったわよ。もうクタクタ、変に疲れたわ」
シルヴィアは呆れてしまった。げんなりと肩を落とす。
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