1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

文字の大きさ
492 / 733
エルフの森編

488.捕えたエルフの弓兵

しおりを挟む
 ルカのニヤついた笑み。
 それとは裏腹に、シルヴィア達は手を伸ばす。
 魔術を今放てば如何にかなるかもしれない。
 そんな危機感が先行するが、エルフ弓兵が繰り出した短剣の方が、一手早かった。

「死ね」
「ひょいっと」

 クールかつ殺伐とした一言。
 それを真に受ける気は更々なく、エルフの弓兵の腕をあっという間に糸が絡め取る。
 すると何が起きたのか。エルフの弓兵は完全に力が抜けてしまい、成す術なく地面に伏せた。

「ふぐっ!」

 エルフの弓兵は顔をうつ伏せにして、地面にめり込ませる。
 口元まで覆っていた布が泥だらけになり、少しだけ小さな穴が開く。
 薄っすらとした化粧の無い唇が尖り、ルカ達のことを威圧すると、糸を出した張本人を恨んだ。

「くっ、よくも……」
「よくもじゃないよー? 危ないよー」

 そこに居たのはライラック。
 指先から糸を出すと、エルフの弓兵を拘束する。
 腕だけじゃない。一瞬のうちに体を雁字搦めにしてしまうと、エルフの弓兵は動けなくなる。

「まるでミノムシね」
「どうかなー? 地面に倒れて動けない態度。反省したら、糸を解除してあげるよー?」

 ライラックは完全に優位に立っていた。
 エルフの弓兵のことを煽ると、モジモジと体を揺する。
 強引にライラックの糸を解こうとするが、全身を絞っていて、筋肉を動かすことができない。華奢に鍛えられた細身の体では尚のことで、エルフの弓兵は良いように弄ばれていた。

「動けない」
「当り前だよー。動ける訳ないでしょー?」
「くっ、この、今すぐ解け」
「解かない解かない。だって解いたら反撃して来るでしょ?」
「……」
「無言は肯定ってことだね。とりあえず、今のところはこのまま放置かな」

 とは言え地面にうつ伏せで寝転がせるのは流石に可愛そう。
 ブルースターは起こしてあげると、苦渋を舐めるエルフの弓兵と対面。
 整った顔立ち。やはり特徴的な耳は長い。如何やらダークエルフではなく、ましてやハイエルフでもない。普通のエルフ族の女性で、ルカは頬を掻いた。

「大丈夫じゃないよね?」
「ふん」
「別に私達は戦うつもりは無いよ。ましてや拷問する気もないから」
「ふん」
「ちなみにだけど、私達が来ること聞いてないかな? ディンネルって人なんだけど」
「……森長?」
「森長? ああ、森の長ってことね。村長的なこと」

 ディンネルはエルフの森を治めている張本人。
 ダークエルフであり、リタリーとの面識もある。
 ナタリーに手紙を寄こし、応援を頼んだもの彼女であり、その名前を口にすると、エルフの弓兵は黙り込んでしまった。如何やら真意を読み解こうと必死らしい。

「証拠は?」
「証拠ならこの書状。ナタリーから受け取ったものだけど」
「ナタリー? ナタリー・ルラン」
「そうそう。私達が応援に呼ばれた学生だよ。ここまで言えば信じて貰えるよね?」

 ルカはできる限りのことをした。
 信用に値する情報を口走ると、エルフの弓兵は目を逸らせる。
 如何やら考えているのは、「森長の?」辺りだろうか。
 ジト目になって見守ると、エルフの弓兵はムスッとした表情を浮かべる。

「信じない」
「えっ、こんなに情報があるのに?」
「信用には値しない。エルフの森を脅かす侵入者なら力づくでも」
「力づくって……この状況でどうやって」
「それは……ぐっ!」

 エルフの弓兵は万策が尽きていた。
 ここから何をすればいいのか分からない。
 体をモジモジさせると、最後の手段、情報漏洩の防止と不甲斐ない自分を戒める行為をし出したので、ルカは全力で止めた。

「ぐはっ! は、放せ……」
「ダメだよ。死のうとするのは」

 ルカは自決しようとするエルフの弓兵を咎める。
 口の中に指を入れ、絶対に歯で噛めないようにする。
 するとゴホンゴホンと咳き込み出し、エルフの弓兵は目から涙を流す。

「がはっ! ごはっ、がっ!? な、なにする」
「なにって、死ぬのはダメだよ。そんなことをしても解決にはならない」
「そんなことは分かっている。それに死ぬ気は……」
「分かってる。コレを使おうとしたんでしょ?」

 ルカは指の間に小さな緑色の塊を挟んでいた。
 プニプニとしているが、まるでそら豆の様。
 決して病気じゃない。これはエルフ族特有の魔道具だった。

「ルカ、それはなに?」
「これは草笛玉だよ。これを奥歯で押し潰そうとすると、中に溜まった空気が爆発して、強烈な音を出す。それが合図になって、援軍を呼ぶって代物だよ。まさか、今の時代も使われているなんてね」
「一体ルカは何歳なのよ?」
「そんなのはどうでもいいよ。とにかく古風だ」

 ルカは上手く話を濁すと、エルフに弓兵を睨んだ。
 目をソッと逸らし、ルカ達を見ないようにする。
 如何やらもう手は無いらしい。グッと奥歯を噛み締めると、ルカ達の完全勝利? かと思われた。その瞬間……

「そこでなにをしている」

 鋭い殺気が飛び交う。
 ルカ達のことをいさめるようで、痛々しく肌を貫く。
 自然と視線が上がる。そこに誰が居るのか。ルカ視線に留まると、そこに居たのは褐色の肌をしたエルフで、黒い影が鋭く伸びていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ

蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。 とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。 どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。 など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。 そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか? 毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。

処理中です...