1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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エルフの森編

497.ウッドエルフの姉妹

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「ううっ……」
「あっ、シルヴィア。気が付いたんだ」

 シルヴィアはゆっくり瞼を押し上げた。
 仰向けのまま、みっともない格好で倒れ込んでいたが、ルカの覗き見る表情を見て理解する。如何やら自分は気絶していたらしいと。

「ルカ、私は……」
「殺気を浴びて気絶してたんだよ」
「殺気? ううっ、頭が痛い」

 シルヴィアは体に少しずつ力を入れて起き上がる。
 頭を押さえ、吐き気を催しながらも、何とか立ち直る。
 苦しそうな表情に申し訳なさを感じたルカだが、下手に刺激しないようにと努めることにした。

「そう言えばルカ、みんなは?」
「隣を見て」
「隣? うわぁ、みんな酷い顔ね……ライ以外は」

 シルヴィアの隣には先に置き上がっていたダリア達の姿があった。
 残念なことに、全員顔色が悪く、むしろ頗る良くない。
 ただ一人青ざめた様子の中、終始余裕そうに、むしろぐっすり眠った後のような爽快感を抱くライラックの姿が目立った。

「うーん、よく寝たー」
「良く寝たじゃないわよ。全く、ライはいつもこうだから」
「そうだね。ライ、私の殺気を喰らって大丈夫だった?」
「一応ねー。ルカも本気じゃなかったみたいだから、全然平気だよー」
「それは良かったよ。おっと、向こうも起きたかな」

 ライラックはルカの殺気を浴びても嫌悪する様子もない。
 快眠を貰えてありがとうと言いたげな表情を浮かべる始末だ。
 そんなライラックのことを呆れた目で見ると、反対側でも音がした。
 如何やら気絶していた姉妹も目が覚めたらしい。

「ううっ……あれ?」
「お姉ちゃん、ううっ……」

 ウッドエルフの姉妹は体を強張らせていた。
 目が覚めたものの、金縛りを喰らったみたいに動けない。
 床に倒れ込んだままの姉妹を心配し、ルカは近付いてみせた。

「誰?」
「お姉ちゃん、ルカって呼ばれてた人」
「ああそっか。で、なんで見下ろされてるのかな?」
「それは私達が倒れているから」
「そっか。そう言えばそうだった……どうしよう、動けないよ」
「落ち着いてお姉ちゃん。まずは冷静になって、お願いをしてみようよ」
「そうだね! ねぇ、ルカ」

 ウッドエルフの姉妹達は何やら話し込んでいた。
 体が動かないので、如何すればよいか分かっていない。
 そんな状況を鑑みてか、姉妹はルカに助けを求める。

「私達、起き上がれないんです。助けてください」
「そうそう、助けてよ!」
「……それはいいけど」
「それじゃあ早く早く! まだ自己紹介もできてないんだからさ!」
「そうですよ、お姉ちゃん。ルカさん、起こしてください」

 催促されてしまい、ルカは呆気に取られた。
 ウッドエルフ。一般的なエルフ種の中でも、特に樹木に精通した、森のスペシャリスト。
 その中でも金髪銀髪、おまけに高位の魔力反応を隠し切れていない辺り、相当の実力者でありながら、とんだ変わり者であることも初見ながらにルカは察した。

「それはいいけど、さっきまでのナイフは何処に行ったのかな?」
「ナイフ?」
「それは森長の命で……」

 銀髪の妹が金髪の姉の代わりに答えてくれた。
 如何やら今の状態こそが本来の姿らしい。
 それが分かれば敵対意識は無いだろう。
 ルカは安心を担保に手を貸すと、姉妹を起き上がらせた。

「よいしょっと」
「「おー」」

 何故か感激されてしまった。
 ルカはあまり嬉しくなく、表情を濁してしまう。
 けれど姉妹はルカのことをジッと見つめると、何か言いたげにする。

「えっと、なに?」
「優しいね、ルカって」
「うん。ルカさんは優しい……本当に魔法……」
「なにを勘違いしているのか分からないけど、二人共、もうナイフは仕舞ったんだね。それだけで良かったよ」

 大人しくなった代わりに、やけに観察眼を発揮する姉妹にルカは不気味だと思った。
 それも一瞬の内で終わり、姉妹は頃合いを見ると、シルヴィア達のことをジッと見る。
 目で合図をしていると判り、シルヴィア達は近付いてきた。

「目が覚めたんですね」
「私達より長く気絶してよねー」
「ライラックさん、そんなこと言っちゃダメですよ」
「それになにより、ライラックさんは気絶していませんよね」
「あはは、そだねー」

 ライラックを中心に、話が回った。
 如何やら姉妹を茶化そうとしたらしい。
 けれど逆に取りまとめられてしまうが、ライラックらしい臨機応変な切り返しを見せてくれた。
 その様子に姉妹は何か思う所があるのか、クスッと笑む。

「あははっ、ルカの友達面白いね」
「はい。ルカさんのお友達は面白い人が多いみたいですね、お姉ちゃん」

 二人は感心した様子に分析をし、ルカ達全員を間接的に褒める。
 けれど本当に褒められているのか、単にウザがられているのではないだろうか、様々な思考が巡り重なる中、姉妹はきちんとした姿勢を取る。

「それじゃあ改めて、エルフの森へようこそ」
「エルフの森へようこそです」

 何を言うのかと思えば、自己紹介ではなかった。
 期待していたものとは違い、ましてやあまりにも今更過ぎたせいか、ルカ達は反応が遅れる。

「「あれ?」」
「今更ですか?」
「そうね、今更よね」
「「「うんうん」」」

 集会場の中を取り巻く空気が変わる。
 あまりにも歪で良くも無ければ悪くもない。
 ここから如何転がしても掻き混ぜられそうな状況の中、ここからしばらく沈黙があり、誰も話を転がそうとしないのだった。
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