1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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炎の悪魔編

559.倒したけれど、被害も大きい

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 ワイバーン型は地に伏せ、動かなくなっていた。
 炎の波が弔ってくれたらしく、覆い被さっている。
 もはや再び動き出すことは無いだろう。
 そんな平穏がついにやって来た、シルヴィアとダリアの活躍があってこそ……と、呑気に笑っていられなかった。

「うっ……私は、生きているんですね?」

 うつ伏せで倒れていたダリアは体を起こす。
 咄嗟に魔眼を使ったおかげか、目の色と髪の色は真っ赤に燃える。
 おかげで《インフェルノ》さえ凌駕する《スカーレット》により、命を繋ぎ止めたものの、周囲の光景を見て絶句した。

「これは……えっ」

 言葉を失ってしまった。
 目の前の景色はより一層酷くなっている。
 炎の波が壁のように押し寄せると、まるで生き物のように、周囲木々を飲み込んでいた。

 もちろん、想像の範疇よりかは酷くない。
 けれど地面には亀裂が走り、大量の木炭が散らばっている。
 できるだけ、エルフの森に被害を出さないように努める。
 そんな目論見は達成されず、ワイバーン型を倒した代償は大きかった。

「これだと、エルフの皆さんに、面目が立ちません。どうしたら……」

 ダリアが一人後悔していると、空から声が聞こえた。
 よろけた声音で、痛みを伴っているのが伝わる。

「ちょっと、なにこれ。もしかして、私の……せい?」
「シルヴィアさん! お疲れさまでした。大丈夫でした……か?」

 ダリアはシルヴィアに振り返る。
 無事に……とはいかなかったが、ワイバーン型を倒すことには成功した。
 これもシルヴィアの功労のおかげだと、ダリアは褒めて迎え入れようとする。

 けれどシルヴィアの様子は明らかにおかしい。
 右足がプラプラ宙に浮いていて、庇うように左足に重心が移動している。
 おまけに表情は厳しく、汗がたくさん流れ、皺も多い。
 明らかに痛みを伴っている様子で、決して大丈夫では無かった。

「シルヴィアさん、なにがあったんですか!?」
「ちょっとやり過ぎちゃったみたい。まさか、こんなに硬かったなんて」
「もしかしなくても、また怪我をされたんですか?」
「怪我……ってレベルじゃないわね。でも大丈夫よ。これくらい、慣れてるから」
「慣れちゃダメですよ、シルヴィアさん」

 シルヴィアさんは痛みを伴う無茶な戦い方をする。
 自分の実力の劣る部分を、必死に補うように体を壊す。
 何度もダリアは見て来た。
 そのせいで何度も何度も怪我をして、もはや骨折が日常茶飯事だったが、今回は右足と、いつもとは違う場所だった。

「は、早く治療しましょう。えっと、添え木になりそうなものは……」
「ダリア、ごめんなさい」
「大丈夫ですよ。後、ワイバーン型はもう動く様子が無いです」
「ってことは倒せたのね。よかったわ、もし倒せてなかったら、私が足を折った意味が無かったものね」
「骨折している時点で、名誉の負傷なんでしょうか?」

 ダリアはついついボヤいてしまった。
 するとシルヴィアはダリアの肩を握る。
 突然のことで探していた手は止まり、シルヴィアと目が合う。
 悲しそうな目でダリアに訴えかけていた。

「そんなにカッコいいものじゃないわ。できれば、怪我をしたくないもの」
「シルヴィアさん」
「でもね、今回のことを仕方ないにはしないわよ。私は自分がまだ未熟で弱いことを知ってる。だから、もっと強くならなくちゃダメなの」

 シルヴィアは骨折しているせいか、アドレナリンがドパドパ出ていた。
 そのせいで、痛みを忘れてしまっている。
 だからこそ、今の間だけ強気になれた。

「こんなことになったのも私のせいよ」
「それは違います! シルヴィアさんは、充分やり切っていました」
「それはそうだけど……ねぇ?」
「大丈夫です。エルフの森も応えてくれますから」

 エルフの森は未だに燃えている。
 しかも被害は拡大している。
 この状況で、エルフの森が讃えてくれる訳が無い。
 シルヴィアはそう思ったのだが、熱風を押し流し、涼しくて心地の良い風がシルヴィアとダリアの髪を掻き撫でた。

 ヒュルゥ~

「「な、なに!?」この風、何処から」

 二人は突然のことで驚くも、警戒を怠らない。
 しかし敵意のようなものは感じられず、ましてや追撃もない。
 ただ一度の風が吹いただけで、それ以上に何も起きない。

「もしかして、エルフの森が答えてくれたのかしら>」
「き、きっとそうですよ!」
「そうだといいけど……ごめんなさいね、森をこんな風にしちゃって。でも、次は絶対にもっと上手くやってみせるから」

 シルヴィアはエルフの森に答える。
 左足一本で体を支え、よろめいてしまっている中でも、堂々としていた。
 その言葉に呼応したのか、草木が揺れる。火の粉を払い、シルヴィアとダリアを包む。

 ヒュルルゥ~

「また風が出たわよ」
「はい。温かくて、なんだか包まれているみたいです」
「そうね。もしかしたら、私達にもエルフの森が応えてくれたのかもしれないわね」

シルヴィアとダリアは優しく風に包まれた。
 そのおかげか、少しは向き割れた気になる。
 流石に魔力も限界だ。シルヴィアは先に座り込むと、右足が悲鳴を上げる。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「シルヴィアさん!? は、早く応急処置を」

 シルヴィアは限界だった。
 ダリアはシルヴィアの悲鳴を聞き、居ても立っても居られない。
 ルカ達との合流は完全に諦め、シルヴィアの治療に専念した。
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