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炎の悪魔編
585.ディンネルに連れられ
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「ディンネル、私に見せたいものって?」
「黙って付いて来い」
復興の最中、少しばかりの休憩を挟んだ。
そんな中、ルカはディンネルに連れられた。
エルフの集落の外。焼けたエルフの森の中を歩くと、何処か空気が変わった気がした。
「私に精霊は見えないけど、なんだか落ち着いてる?」
昨晩だけで甚大な被害が出たのは確かだ。
普通なら、精霊達は荒れ狂う筈。
にもかかわらず、これほどまでに落ち着いているのは、ルカ達が最善を取ったからこそだろう。
「それでディンネル、私になにを見せたいのかな?」
話を一瞬だけすり替えてみたものの、ディンネルの口は堅い。
何も話そうとしないので、今一度同じ質問をした。
するとディンネルはゆっくり口を開く。話してくれるならさっさと話して欲しかったと思うルカの気持ちは野暮だった。
「お前は、私の記憶を覗いたんだな」
「ああ、《メモリアルハート》ね。それがどうかした?」
「くっ、どうしたもこうしたもあるか。お前には私の全てが筒抜けじゃないか」
ディンネルは何故か怒っていた。私はただ記憶を覗き見ただけなのに。
それが何になるのか、減るものなのか、私は悪用しないのに。
ルカは頸を捻り心外な態度を取るも、ディンネルは溜息を一つで収めた。
「まあいい。それで私は助けられたからな」
「御託はいいよ。それで、私に見せたいものって?」
恐らくは記憶と関係している筈だ。
ルカは急かすような真似をして、ディンネルの口を滑らせる。
勝手に集落を抜け出したと知れば、他のエルフ達から変な目を向けられるのは分かり切っている。できるだけ早く戻りたいので、ディンネルの言葉を早めた。
「お前に見せたいもの、それはだな……着いたぞ」
森の中を十五分程歩いていた。真っ平な道ではなく、上り坂を歩いた。
昨晩の疲労が多少残りつつも、辿り着いたのは随分と古い巨木の袂。
他の木々達と比べ、成長が著しい上に、葉の色が濃い緑色。この木だけを避ける形で、半径十メートルには何も無い。
圧倒的に樹齢が長く、誰が如何見てもこの森の御神木だった。
「この木は?」
「この森の御神木だ。そして、ここに私が見せたものが眠っている」
「眠っている? もしかして、木の中に隠してあるのかな?」
「どうしてお前は、人が満を持して言おうとしている言葉を先の言うんだ」
ルカは完全に空気を読んでいなかった。
ディンネルはそんな粗暴すぎるルカの態度にイラっと来る。
けれどルカ自身は一切の悪気が無い。単に思った言葉を口にしただけで、それがディンネルにとって決め台詞だっただけだ。
「まあいい。お前はこれを見てどう思う?」
「どうって言われても、まだなにも見て無いんだけど?」
「少し離れていろ。エルフの森を守護する精霊の長よ、我が問い掛けに答え、封じられるし異物を表したまえ」
ルカはディンネルに言われたので、少し後ずさりをした。
するとディンネルは御神木の前に立ち、何やら詠唱を始める。
真言と呼ばれるもので、御神木を通じてエルフの森の精霊に問い掛ける。
後姿は美しく、森長としての威厳を放つ。銀の髪がフワリと逆立つと、ルカにまで伝わる。
(凄いな。ディンネルに応えてくれている)
御神木を通じて祈りが届いたらしい。
暖かな魔力が流れ込むと、自然のエネルギーを直に触れる。
マイナスイオンを超えた、超マイナスイオンは心の穢れを取り払うと、ディンネルは十字の印を刻んだ。
(印を結んだ……ってことは)
ルカの予想はある程度当たっていた。
御神木に印を刻み、結んだ途端に空気が破裂した。
パン!
実際の音は一切無い。けれど頭の中で音が木霊する。
これは魔力が見せた幻覚だと一蹴したルカは、御神木が淡く光り輝いていたことに驚く。
夜間ならもっとはっきりしていただろう。けれど昼間と言うこともあり、ぼんやりと輝き、ディンネルは幹に指先をソッと触れた。
ムニュ
ディンネルの指先が幹の中に消えていく。
スルリとまるでスライムの中に腕を突っ込んだみたいに、多少の抵抗はあるものの腕全体が否応なく飲み込まれる。空間が変形した訳でも無く、単純に御神木を通じて預かって貰っていたものを一時的に返却して貰う。ルカにはそう見え、ディンネルが腕を抜く頃には手の中に何か収まっていた。
「ルカ、お前に見せたいものはコレだ」
如何やら返却して貰ったらしい。
踵を返してルカに近付くと、握っていた手のひらを開く。
中に収まっていたものの正体。それは透明な氷のクリスタルだった。
「コレはなに? もしかして、魔法の露結晶?」
「そうだ。この結晶は、私達を襲った悲劇の元凶。その魔法が解けずに結晶化したものだ」
魔法は結晶化する。限りなく低い確率ではあるが、純度の高い魔力は大気中の魔素を取り込むことで、形を留める。
大抵の場合は魔法は魔術に圧倒的に勝る。大気中に魔素が存在し、経路さえ整っていればいくらでも復元が可能で、自動的な魔法の行使が可能だった。
けれどこの結晶は違う。露結晶と呼ばれる、特殊な結晶だ。
露結晶は露結した結晶。本来は解けてしまう筈奈だった魔法が、魔力を有した状態で保存されたもの。魔素の供給は無いので、再び発動・行使することはできないが、貴重な代物であるのは変わりない。
何よりこの結晶の価値、それは使われた魔法や魔術が残っていること。
刻み付けられた魔導の存在が、歴史の中で廃れずに残る。
まさしく貴重な研究資源だった。
「悲劇の元凶? それってまさか……」
「そうだ。だから私はお前に訊きたい。お前は、なにか知らないか?」
「また唐突だな……うわぁ、マジだね」
ディンネルの目はマジだった。何も知らない筈のルカに期待を寄せている。
流石に少しは知恵を貸してあげないと悪い。
ルカは腕を組み、ディンネル達を襲った悲劇について、心当たりがないか胸に耳を傾けた。
「黙って付いて来い」
復興の最中、少しばかりの休憩を挟んだ。
そんな中、ルカはディンネルに連れられた。
エルフの集落の外。焼けたエルフの森の中を歩くと、何処か空気が変わった気がした。
「私に精霊は見えないけど、なんだか落ち着いてる?」
昨晩だけで甚大な被害が出たのは確かだ。
普通なら、精霊達は荒れ狂う筈。
にもかかわらず、これほどまでに落ち着いているのは、ルカ達が最善を取ったからこそだろう。
「それでディンネル、私になにを見せたいのかな?」
話を一瞬だけすり替えてみたものの、ディンネルの口は堅い。
何も話そうとしないので、今一度同じ質問をした。
するとディンネルはゆっくり口を開く。話してくれるならさっさと話して欲しかったと思うルカの気持ちは野暮だった。
「お前は、私の記憶を覗いたんだな」
「ああ、《メモリアルハート》ね。それがどうかした?」
「くっ、どうしたもこうしたもあるか。お前には私の全てが筒抜けじゃないか」
ディンネルは何故か怒っていた。私はただ記憶を覗き見ただけなのに。
それが何になるのか、減るものなのか、私は悪用しないのに。
ルカは頸を捻り心外な態度を取るも、ディンネルは溜息を一つで収めた。
「まあいい。それで私は助けられたからな」
「御託はいいよ。それで、私に見せたいものって?」
恐らくは記憶と関係している筈だ。
ルカは急かすような真似をして、ディンネルの口を滑らせる。
勝手に集落を抜け出したと知れば、他のエルフ達から変な目を向けられるのは分かり切っている。できるだけ早く戻りたいので、ディンネルの言葉を早めた。
「お前に見せたいもの、それはだな……着いたぞ」
森の中を十五分程歩いていた。真っ平な道ではなく、上り坂を歩いた。
昨晩の疲労が多少残りつつも、辿り着いたのは随分と古い巨木の袂。
他の木々達と比べ、成長が著しい上に、葉の色が濃い緑色。この木だけを避ける形で、半径十メートルには何も無い。
圧倒的に樹齢が長く、誰が如何見てもこの森の御神木だった。
「この木は?」
「この森の御神木だ。そして、ここに私が見せたものが眠っている」
「眠っている? もしかして、木の中に隠してあるのかな?」
「どうしてお前は、人が満を持して言おうとしている言葉を先の言うんだ」
ルカは完全に空気を読んでいなかった。
ディンネルはそんな粗暴すぎるルカの態度にイラっと来る。
けれどルカ自身は一切の悪気が無い。単に思った言葉を口にしただけで、それがディンネルにとって決め台詞だっただけだ。
「まあいい。お前はこれを見てどう思う?」
「どうって言われても、まだなにも見て無いんだけど?」
「少し離れていろ。エルフの森を守護する精霊の長よ、我が問い掛けに答え、封じられるし異物を表したまえ」
ルカはディンネルに言われたので、少し後ずさりをした。
するとディンネルは御神木の前に立ち、何やら詠唱を始める。
真言と呼ばれるもので、御神木を通じてエルフの森の精霊に問い掛ける。
後姿は美しく、森長としての威厳を放つ。銀の髪がフワリと逆立つと、ルカにまで伝わる。
(凄いな。ディンネルに応えてくれている)
御神木を通じて祈りが届いたらしい。
暖かな魔力が流れ込むと、自然のエネルギーを直に触れる。
マイナスイオンを超えた、超マイナスイオンは心の穢れを取り払うと、ディンネルは十字の印を刻んだ。
(印を結んだ……ってことは)
ルカの予想はある程度当たっていた。
御神木に印を刻み、結んだ途端に空気が破裂した。
パン!
実際の音は一切無い。けれど頭の中で音が木霊する。
これは魔力が見せた幻覚だと一蹴したルカは、御神木が淡く光り輝いていたことに驚く。
夜間ならもっとはっきりしていただろう。けれど昼間と言うこともあり、ぼんやりと輝き、ディンネルは幹に指先をソッと触れた。
ムニュ
ディンネルの指先が幹の中に消えていく。
スルリとまるでスライムの中に腕を突っ込んだみたいに、多少の抵抗はあるものの腕全体が否応なく飲み込まれる。空間が変形した訳でも無く、単純に御神木を通じて預かって貰っていたものを一時的に返却して貰う。ルカにはそう見え、ディンネルが腕を抜く頃には手の中に何か収まっていた。
「ルカ、お前に見せたいものはコレだ」
如何やら返却して貰ったらしい。
踵を返してルカに近付くと、握っていた手のひらを開く。
中に収まっていたものの正体。それは透明な氷のクリスタルだった。
「コレはなに? もしかして、魔法の露結晶?」
「そうだ。この結晶は、私達を襲った悲劇の元凶。その魔法が解けずに結晶化したものだ」
魔法は結晶化する。限りなく低い確率ではあるが、純度の高い魔力は大気中の魔素を取り込むことで、形を留める。
大抵の場合は魔法は魔術に圧倒的に勝る。大気中に魔素が存在し、経路さえ整っていればいくらでも復元が可能で、自動的な魔法の行使が可能だった。
けれどこの結晶は違う。露結晶と呼ばれる、特殊な結晶だ。
露結晶は露結した結晶。本来は解けてしまう筈奈だった魔法が、魔力を有した状態で保存されたもの。魔素の供給は無いので、再び発動・行使することはできないが、貴重な代物であるのは変わりない。
何よりこの結晶の価値、それは使われた魔法や魔術が残っていること。
刻み付けられた魔導の存在が、歴史の中で廃れずに残る。
まさしく貴重な研究資源だった。
「悲劇の元凶? それってまさか……」
「そうだ。だから私はお前に訊きたい。お前は、なにか知らないか?」
「また唐突だな……うわぁ、マジだね」
ディンネルの目はマジだった。何も知らない筈のルカに期待を寄せている。
流石に少しは知恵を貸してあげないと悪い。
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