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チョコレート編
593.リューラの殺気
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ルカはリューラに案内され、シルヴィア達の元へ向かった。
けれどリューラからは殺気が出ている。
あまりにも微弱ではあるが、リューラを警戒している証拠だ。
「ルカ様、少々よろしいでしょうか?」
「なに?」
「このようなことを申し上げるのは心苦しいのですが、試させて貰ってもよろしいでしょうか?」
「試す? って……ふん」
リューラは突然ナイフを投げつけた。
あまりにも速いなげナイフに、ルカでなければ見逃していた。
それほどまでの投げナイフ捌きにルカは驚かされるも、リューラは初撃を外したことを悔しく思う。
「外してしまいましたね」
「そうだね。外したね」
「……はぁ。申し訳ございませんでした。ご無礼をお詫び申し上げます」
リューラの殺気がそこでフッと消えた。
何か満足でも得られたのか、表情が畏まる。
ルカのことを警戒しているのは変わりないが、それでも少しだけ緩く見えた。
「で、このナイフはなんの意味があるの?」
「はい。聡明なルカ様にはお分かりかと思いますが」
「聡明なルカ様ね。私のこと、警戒しているんだよね」
「……」
「口に出さなくてもいいよ。私には伝わってるからね。リューラさんだっけ、ただの二級魔術師じゃない。でしょ?」
ルカはリューラが本当に二級魔術師なのかと疑う。
何せ今の投げナイフ捌きだ。ただの魔術師には見えない。
ルカが実力を測ると、暗殺向きな準一級魔術師なのは確実だった。
「暗殺を専門にこなす、準一級魔術師。で合ってるかな?」
「そこまでお見抜きでしたか」
「あれ、本性を露わにしたのかな? それで私になにか用? このまますんなり、シルヴィ達に会わせる気が無い……でいいのかな?」
「申し訳ございませんが」
一体何故こんなことになってしまったのか。
ルカは訳が分からなかったが、リューラは如何にも本気らしい。
魔術師としての血が騒いでしまった……と言うにはあまりにも雑。
頬を掻きながら、リューラが何をしてくるのか待ってみた。
「では……死んでください」
「それは嫌だね」
リューラはナイフを投げつけた。先程同様投げナイフで牽制だ。
もちろんルカには決して届かない。
簡単に躱される……否、指と指の間で受け止められてしまうと、リューラは音を消してルカに近付く。
「《スニーク》」
「足音は消せても、姿は見えてるよ」
リューラはバカみたいなことをした。
目の前にいるにもかかわらず、発動したのは音を消す魔術。
しかも無詠唱で発動すると、ルカを驚かせたつもりだろう。
けれどルカにとってはなんてことは無いジョークだ。
所詮《スニーク》は足音を消す程度の魔術。
姿を捉えられている以上、《インビジブル》でも使わない限り、ルカの視線から逃れる術はない。
「そうですね。確かに私の姿はお見えかも知れませんが……」
「そうだね、姿は見えるよ。“ナイフ”もね」
流石はリューラ、伊達にリューネラ家に勤めていない。
ルカにソッと近付くと、何の動作も見せずにナイフをルカの蟀谷目掛けて突き刺そうとする。
ほんの数秒早く気が付いていなければ、ナイフの切っ先が蟀谷を貫いていた。
そんな恐怖さえ芽生える腕前に、ルカはゾッとしない。
「……気が付かれていたのですか?」
「うん、《スニーク》は囮だよね?」
「はい、その通りにございます。ですが釈然としませんね。私の必殺パターンを潰されてしまいました」
「確かに初見殺しではあるね。でも私には効かないよ」
ルカにとってはこの程度造作もなかった。
リューラには悪いとは思うが、千年前の殺伐とした時代、全盛の頃を生きていればこの程度寝ていても躱せる。
あくまでも現代人に通用する技の数々にルカは驚きもしなかったが、リューラとしては満足そうだ。
「ありがとうございました、ルカ様」
「いいよ。それよりリューラさん、なんのためにこんなことを?」
実際、リューラはルカを警戒していた理由はピンと来ない。
ただの魔術師の血が騒いだ……と言うにも違う。
リューラは負けを認めると、ナイフを取った理由を力説する。
「ルカ様は強盗団を耳にしておりますか?」
「強盗団? ああ、多少ね」
ここに来るまでの間に噂になっていた。
よく考えれば強盗なんて真似、窃盗に比べてリスクが高い。
にもかかわらず働こうとするなんて、何かの間違いではないかと思った。
「それって本当に強盗団かな? 窃盗団の間違いじゃなくて?」
「強盗団です。現に怪我人も出ています」
「怪我人!? それならもっと噂が拡散していてもおかしくないんじゃ……」
「殺してはいないので、慎重に調査を行っているそうです。また被害者の多くが、少々強欲な方であるとか。この街での被害は最近で、同一の強盗団と言うことから、この街でも死傷者が出るのではないかと密かに噂が伝播しているだけです」
リューラの言葉には重みがあった。
窃盗を目的とした魔術窃盗団なら死傷者を出すような真似は恐れる。
けれど相手が強盗団だと確証があるのなら極めて危険だ。実際、別の街で同じ犯罪集団だと目しているらしく、そこでは死傷者が出ているらしい。恐ろしくて言葉を失った。
(そんなバカな真似をするなんて、しかも標的をこの街に……)
ルカは身の危険さえ感じてしまいそうで……実際には危険なんてものは無い。
強盗団だろうがルカの前では意味を成さない。
それでも周りの安全が危惧されているのでぼんやり言葉が出ていた。
けれどリューラからは殺気が出ている。
あまりにも微弱ではあるが、リューラを警戒している証拠だ。
「ルカ様、少々よろしいでしょうか?」
「なに?」
「このようなことを申し上げるのは心苦しいのですが、試させて貰ってもよろしいでしょうか?」
「試す? って……ふん」
リューラは突然ナイフを投げつけた。
あまりにも速いなげナイフに、ルカでなければ見逃していた。
それほどまでの投げナイフ捌きにルカは驚かされるも、リューラは初撃を外したことを悔しく思う。
「外してしまいましたね」
「そうだね。外したね」
「……はぁ。申し訳ございませんでした。ご無礼をお詫び申し上げます」
リューラの殺気がそこでフッと消えた。
何か満足でも得られたのか、表情が畏まる。
ルカのことを警戒しているのは変わりないが、それでも少しだけ緩く見えた。
「で、このナイフはなんの意味があるの?」
「はい。聡明なルカ様にはお分かりかと思いますが」
「聡明なルカ様ね。私のこと、警戒しているんだよね」
「……」
「口に出さなくてもいいよ。私には伝わってるからね。リューラさんだっけ、ただの二級魔術師じゃない。でしょ?」
ルカはリューラが本当に二級魔術師なのかと疑う。
何せ今の投げナイフ捌きだ。ただの魔術師には見えない。
ルカが実力を測ると、暗殺向きな準一級魔術師なのは確実だった。
「暗殺を専門にこなす、準一級魔術師。で合ってるかな?」
「そこまでお見抜きでしたか」
「あれ、本性を露わにしたのかな? それで私になにか用? このまますんなり、シルヴィ達に会わせる気が無い……でいいのかな?」
「申し訳ございませんが」
一体何故こんなことになってしまったのか。
ルカは訳が分からなかったが、リューラは如何にも本気らしい。
魔術師としての血が騒いでしまった……と言うにはあまりにも雑。
頬を掻きながら、リューラが何をしてくるのか待ってみた。
「では……死んでください」
「それは嫌だね」
リューラはナイフを投げつけた。先程同様投げナイフで牽制だ。
もちろんルカには決して届かない。
簡単に躱される……否、指と指の間で受け止められてしまうと、リューラは音を消してルカに近付く。
「《スニーク》」
「足音は消せても、姿は見えてるよ」
リューラはバカみたいなことをした。
目の前にいるにもかかわらず、発動したのは音を消す魔術。
しかも無詠唱で発動すると、ルカを驚かせたつもりだろう。
けれどルカにとってはなんてことは無いジョークだ。
所詮《スニーク》は足音を消す程度の魔術。
姿を捉えられている以上、《インビジブル》でも使わない限り、ルカの視線から逃れる術はない。
「そうですね。確かに私の姿はお見えかも知れませんが……」
「そうだね、姿は見えるよ。“ナイフ”もね」
流石はリューラ、伊達にリューネラ家に勤めていない。
ルカにソッと近付くと、何の動作も見せずにナイフをルカの蟀谷目掛けて突き刺そうとする。
ほんの数秒早く気が付いていなければ、ナイフの切っ先が蟀谷を貫いていた。
そんな恐怖さえ芽生える腕前に、ルカはゾッとしない。
「……気が付かれていたのですか?」
「うん、《スニーク》は囮だよね?」
「はい、その通りにございます。ですが釈然としませんね。私の必殺パターンを潰されてしまいました」
「確かに初見殺しではあるね。でも私には効かないよ」
ルカにとってはこの程度造作もなかった。
リューラには悪いとは思うが、千年前の殺伐とした時代、全盛の頃を生きていればこの程度寝ていても躱せる。
あくまでも現代人に通用する技の数々にルカは驚きもしなかったが、リューラとしては満足そうだ。
「ありがとうございました、ルカ様」
「いいよ。それよりリューラさん、なんのためにこんなことを?」
実際、リューラはルカを警戒していた理由はピンと来ない。
ただの魔術師の血が騒いだ……と言うにも違う。
リューラは負けを認めると、ナイフを取った理由を力説する。
「ルカ様は強盗団を耳にしておりますか?」
「強盗団? ああ、多少ね」
ここに来るまでの間に噂になっていた。
よく考えれば強盗なんて真似、窃盗に比べてリスクが高い。
にもかかわらず働こうとするなんて、何かの間違いではないかと思った。
「それって本当に強盗団かな? 窃盗団の間違いじゃなくて?」
「強盗団です。現に怪我人も出ています」
「怪我人!? それならもっと噂が拡散していてもおかしくないんじゃ……」
「殺してはいないので、慎重に調査を行っているそうです。また被害者の多くが、少々強欲な方であるとか。この街での被害は最近で、同一の強盗団と言うことから、この街でも死傷者が出るのではないかと密かに噂が伝播しているだけです」
リューラの言葉には重みがあった。
窃盗を目的とした魔術窃盗団なら死傷者を出すような真似は恐れる。
けれど相手が強盗団だと確証があるのなら極めて危険だ。実際、別の街で同じ犯罪集団だと目しているらしく、そこでは死傷者が出ているらしい。恐ろしくて言葉を失った。
(そんなバカな真似をするなんて、しかも標的をこの街に……)
ルカは身の危険さえ感じてしまいそうで……実際には危険なんてものは無い。
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