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波状編
614.ナタリーの苦悩1
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二月も下旬。まだまだ寒い。
ルカに頼らずとも自然と雪が降り頻り、窓の外を覗き込めば、街並みは白く雪化粧を纏っていた。
「はぁ」
息を吐いてみると、自然と白くなる。
校長室は暖房が効いているはずにもかかわらず、寒気のために窓を少し開けただけで、一気に冷え込んだ。
ナタリーは書類作業を一度止め、手を擦り合わせる。
あまりの寒さに堪える。そんな日々は千年前から生きているのでもうほとんどない。
けれどもこの時期になるとナタリーの脳裏を過るものがあった。
それを思い出させてくれるには十分な冷気だった。
「ふぅ。寒いですね……と言うことは、もう少しで終わりですか」
ふとカレンダーに視線を飛ばした。
今は二月だ。と言うことは来月は三月。
当たり前のことなのだが、もう少しで五年生が卒業する。
卒業式と言うことはそれは盛大だ。
魔術師のランク付けに加え、将来有望な即戦力なる魔術師を輩出することになる。
今年はルカ達が裏で目立つ一方で、四年生のナナミやハバト、三年生ではスプラやシンドバーの成長が目立っていた。
けれどそれはあくまでも在校生に限る。
五年生の中でも特段優秀な生徒は多かった。
例えば一昨年の生徒会メンバーであり生徒会長のヴァルバルトや魔法使いにも至れる固有魔術を持つレンジ。思い起こすだけで、魔術師の成長は目覚ましいと実感できた。
「彼等彼女等の今後に期待したいですね。この世界の魔力の衰退を止める術を見つけて欲しいですよ」
ナタリーは手を組んで願望を吐いていた。
そうだ。所詮はナタリーの願望に過ぎない。
誰に訊かれるわけでもなく、淡々と口走ると、ふと大事な行事を忘れかけていた。
けれど三月のタイミングで思い起こされると、やはり気になってしまう。
「前者は後で確認を取るにしても、後者はどうしましょうか? 流石にルカさんにやって貰うのはマズいですよね」
ナタリーはここまでの忙しい日常に忘れさせられていた。
けれど卒業式と言うことはアレが待っている。
そう。卒業生を在校生が送りだし、互いの躍進と研鑽を目的とした行事だ。
その代表生徒を選ぶのをすっかり忘れており、如何したものかと悩んでしまう。
「会議は来週でしたね。五年生は彼か、それとも彼でしょうか。迷うところですが、どちらでも構わないでしょうね。ですが問題は在校生です。彼等に匹敵し、それと同時にこの学校を成立させるうえで必要不可欠な生徒。どうしましょうか?」
ナタリーとしてみればルカが絶対的に強者だ。
在校生の本領発揮とばかりに、ルカをぶつけてもいい気がした。
けれどそれはできない。聖との意見も尊重する必要があり、ルカがこの学校で異端だからなんの効果も出せないと気が付いていた。
とは言え効果が何も出ない訳ではない。
むしろ悪影響の方が出かねない。
となればルカを推薦するのは絶対に無しだった。
「となればシルヴィアさん、それともスプラさん……いえ、彼女達はまだ発展途上ですよね。となれば、ブルースターさん……の場合は、加減はできるでしょうが、来年に向けて調整をお願いしたいですね。ブルースターさんの場合、少し特殊ですから」
ナタリーは頭を抱えてしまった。
自問自答をするあまり、何を選んだら正解なのか分からないのだ。
「ここは生徒会のメンバーに頑張って貰うのが正解でしょうね。となればナナミさん……は、戦ってくれるでしょうか?」
ナタリーの脳裏に沸いたのはニイジマ・ナナミだった。
彼女なら強くてこの学校を代表するに相応しい。
現生徒会長であり、その明るさで生徒を引っ張って来た。
けれどその内側にあるものは禍々しい闇。未だに解き放てていない感情を剥き出しにされた時、どんな変化が生まれるのか、楽しみであるのと同時に怖くなった。
「ナナミさんは確かに強いのですが、その強さを活かし切れていないのが現状ですよね……一度相談してみる必要がありそうですね」
ナタリーは悩みに悩んだ結果、先に手を打つことにした。
もう一つの案件もある。
これは一石二鳥とばかりに、もう一人の候補者と共に呼び出すことにした。
今日の放課後になら都合がいいだろう。
そう急ぐ話でもないので、ナタリーはルカの時とは比べ、有意義な時間の取り方を覚えていた。
「今年の卒業式も荒れるでしょうか? いえ、荒れて貰わなければなりませんね。それが本来の魔術師の責務。果たせる力が宿っているのか、見極めることが大事なんですから」
ナタリーは冷たくなったティーカップに口を付ける。
冷たくなった紅茶が喉の奥を流れていた。
苦い。そう思えるのは冷たくなったからで、ナタリーは一息を入れると再び書類に向き直り、忙しく作業に戻った。今は二月。もう直今年度の学校行事も終わるのだと、毎年のことだが儚く感じてしまう。それがハイエルフであり、ナタリーと言うルカに影響を少し当てられた存在だった。
ルカに頼らずとも自然と雪が降り頻り、窓の外を覗き込めば、街並みは白く雪化粧を纏っていた。
「はぁ」
息を吐いてみると、自然と白くなる。
校長室は暖房が効いているはずにもかかわらず、寒気のために窓を少し開けただけで、一気に冷え込んだ。
ナタリーは書類作業を一度止め、手を擦り合わせる。
あまりの寒さに堪える。そんな日々は千年前から生きているのでもうほとんどない。
けれどもこの時期になるとナタリーの脳裏を過るものがあった。
それを思い出させてくれるには十分な冷気だった。
「ふぅ。寒いですね……と言うことは、もう少しで終わりですか」
ふとカレンダーに視線を飛ばした。
今は二月だ。と言うことは来月は三月。
当たり前のことなのだが、もう少しで五年生が卒業する。
卒業式と言うことはそれは盛大だ。
魔術師のランク付けに加え、将来有望な即戦力なる魔術師を輩出することになる。
今年はルカ達が裏で目立つ一方で、四年生のナナミやハバト、三年生ではスプラやシンドバーの成長が目立っていた。
けれどそれはあくまでも在校生に限る。
五年生の中でも特段優秀な生徒は多かった。
例えば一昨年の生徒会メンバーであり生徒会長のヴァルバルトや魔法使いにも至れる固有魔術を持つレンジ。思い起こすだけで、魔術師の成長は目覚ましいと実感できた。
「彼等彼女等の今後に期待したいですね。この世界の魔力の衰退を止める術を見つけて欲しいですよ」
ナタリーは手を組んで願望を吐いていた。
そうだ。所詮はナタリーの願望に過ぎない。
誰に訊かれるわけでもなく、淡々と口走ると、ふと大事な行事を忘れかけていた。
けれど三月のタイミングで思い起こされると、やはり気になってしまう。
「前者は後で確認を取るにしても、後者はどうしましょうか? 流石にルカさんにやって貰うのはマズいですよね」
ナタリーはここまでの忙しい日常に忘れさせられていた。
けれど卒業式と言うことはアレが待っている。
そう。卒業生を在校生が送りだし、互いの躍進と研鑽を目的とした行事だ。
その代表生徒を選ぶのをすっかり忘れており、如何したものかと悩んでしまう。
「会議は来週でしたね。五年生は彼か、それとも彼でしょうか。迷うところですが、どちらでも構わないでしょうね。ですが問題は在校生です。彼等に匹敵し、それと同時にこの学校を成立させるうえで必要不可欠な生徒。どうしましょうか?」
ナタリーとしてみればルカが絶対的に強者だ。
在校生の本領発揮とばかりに、ルカをぶつけてもいい気がした。
けれどそれはできない。聖との意見も尊重する必要があり、ルカがこの学校で異端だからなんの効果も出せないと気が付いていた。
とは言え効果が何も出ない訳ではない。
むしろ悪影響の方が出かねない。
となればルカを推薦するのは絶対に無しだった。
「となればシルヴィアさん、それともスプラさん……いえ、彼女達はまだ発展途上ですよね。となれば、ブルースターさん……の場合は、加減はできるでしょうが、来年に向けて調整をお願いしたいですね。ブルースターさんの場合、少し特殊ですから」
ナタリーは頭を抱えてしまった。
自問自答をするあまり、何を選んだら正解なのか分からないのだ。
「ここは生徒会のメンバーに頑張って貰うのが正解でしょうね。となればナナミさん……は、戦ってくれるでしょうか?」
ナタリーの脳裏に沸いたのはニイジマ・ナナミだった。
彼女なら強くてこの学校を代表するに相応しい。
現生徒会長であり、その明るさで生徒を引っ張って来た。
けれどその内側にあるものは禍々しい闇。未だに解き放てていない感情を剥き出しにされた時、どんな変化が生まれるのか、楽しみであるのと同時に怖くなった。
「ナナミさんは確かに強いのですが、その強さを活かし切れていないのが現状ですよね……一度相談してみる必要がありそうですね」
ナタリーは悩みに悩んだ結果、先に手を打つことにした。
もう一つの案件もある。
これは一石二鳥とばかりに、もう一人の候補者と共に呼び出すことにした。
今日の放課後になら都合がいいだろう。
そう急ぐ話でもないので、ナタリーはルカの時とは比べ、有意義な時間の取り方を覚えていた。
「今年の卒業式も荒れるでしょうか? いえ、荒れて貰わなければなりませんね。それが本来の魔術師の責務。果たせる力が宿っているのか、見極めることが大事なんですから」
ナタリーは冷たくなったティーカップに口を付ける。
冷たくなった紅茶が喉の奥を流れていた。
苦い。そう思えるのは冷たくなったからで、ナタリーは一息を入れると再び書類に向き直り、忙しく作業に戻った。今は二月。もう直今年度の学校行事も終わるのだと、毎年のことだが儚く感じてしまう。それがハイエルフであり、ナタリーと言うルカに影響を少し当てられた存在だった。
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