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第50章
美月の密かな楽しみ
その後、美月とひとみは対南工作員たちの日本語教師として教鞭を揮う事になった。美月もひとみも教師ではない。人に教える事に悪戦苦闘の連続だった。大体、美月はまだ13歳である。中学一年生なのだ。生徒は皆、年上ばかりである。朝鮮語も話せないのだから初めは無理ではないかと美月は心配したが、杞憂であった。まず、工作員たちは全く日本語が喋れない訳ではなかった。教える前から片言でどういう訳か皆、喋れたのだ。美月はその妙なイントネーションの日本語を正しい日本語に変換するだけで良かったのだ。後は日本で経験した世情を詳しく話せば良かった。日本ではこんな歌が流行っているとか、テレビ番組とか漫画とかスポーツなどの事だ。なんでも日本という国がどの様な国かを理解するのに有用なのだそうだ。ひとみは中年で若者の文化に疎かったので、若い美月の話す若者文化の情報は重用された。又、美月が教える工作員の生徒達は皆、真剣に授業に臨んだ。正しい言葉の発音を何度も繰り返して練習し、日本の世情について質問攻めにあった。美月の事を若いからと侮るといった生徒は皆無だった。最初は嫌々、日本語教師の任務を引き受けたものの、今では幽閉生活の中でも、工作員に日本語を教えるのが楽しくなっていた。
「美月ちゃんは教えるのが上手いのね。」
ひとみは工作員に日本語を嬉々として教える美月に感心して言った。ひとみは違うクラスの教室を受け持っていたが、美月ほど上手くはやれていない。
「この国の人達が日本語を流暢に喋れる様になれば、日本人が一杯いるように思えて、嬉しいの。」
美月は囚われの身でありながら、この国の人々を日本人化して、悪しき主体思想から解放してやろうという大それた計画を思い描いていた。
「美月ちゃんは教えるのが上手いのね。」
ひとみは工作員に日本語を嬉々として教える美月に感心して言った。ひとみは違うクラスの教室を受け持っていたが、美月ほど上手くはやれていない。
「この国の人達が日本語を流暢に喋れる様になれば、日本人が一杯いるように思えて、嬉しいの。」
美月は囚われの身でありながら、この国の人々を日本人化して、悪しき主体思想から解放してやろうという大それた計画を思い描いていた。
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