失踪14年 美月の帰還

軽部雄二

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第13章

失踪

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事情を聞いたダルマ先生は、早紀江に直ぐに何かあったと決めつけるのは早計だと諭した。ダルマには今日の美月との会話が頭にある。やはり強化指定を受託した事に悩んでいたのかもと思ったのだ。大事にして後でひょっこりと美月が出て来る様な事になったら、可哀そうだと思ったのだ。
「お母さん。取り敢えず心当たりを探してみましょう。警察に通報するのはその後でも良いのではありませんか。」
「でも、こんな事は初めてなんです。絶対に何かあったに違いないと思います。」
 ダルマ先生は狼狽える早紀江に、美月が強化指定を受けた事を話し、それが原因で少し考える時間が欲しいだけかもしれないと伝えた。
「そうですか・・・・・。美月ちゃんが強化指定を受けたんですね。」
「はい。上級生を押しのけて指定を受ける事に戸惑っていた様子でした。」
 早紀江は今朝、美月が強化指定を受けるかどうかで悩んでいた事を思い出した。成程、言われてみれば有り得る事かもしれないなと納得しつつも、そんな事で夜遅くまで帰宅しない事が有り得るだろうかとも考える。今まで夜遅くまで出歩いた事など一度も無いのだから。
「では、どうすれば良いでしょうか?」
 ダルマ先生は暫し思案した後で言った。
「とりあえず残っている職員で周辺を探してみます。お母さんは自宅に戻って下さい。」
「いえ、それなら私も一緒に探します。」
「お母さんは一回、自宅に戻って下さい。美月さんが入れ違いで帰って来るかもしれないし、これから戻って来るかもしれない。何処かから電話を掛けて来るかもしれないでしょう。その時に親御さんが家に居ないのは拙い。」
「・・・・・・・。」
「お父さんはどちらに?」
「今日は仕事帰りに勤め先の人と飲みに行くと・・・・。」
「では、直ぐに家に戻り、お父さんに連絡をお願いします。」
「ですが・・・・。家で待っているだけなんて・・・・・。」
 美月に何かあったかもしれないのに、家で待っているだけなんて耐えられない。そんな早紀江の心中を慮ったダルマ先生は言った。
「それではお母さんは美月さんの親しい友達に、電話で美月さんがまだ帰っていない事を伝え、何か知らないか訊ねて貰えますか。」
「友達に・・・電話?」
 それは妙案だと早紀江は思った。帰りは同じバトミントン部の友達といつも一緒に帰って来てる筈だ。その友達が何か知っている可能性は高い。何故、思い付かなかったのだろうか?人間我を忘れていると、そんな事も思いつかないものだろう。冷静にならなくては。早紀江は冷静沈着なダルマ先生の提案に乗っかる事にした。
「分かりました。私は家に帰って、夫と娘の友達に電話してみます。」
「お願いします。何か分かったら知らせますから。」
 早紀江はダルマ先生に「お願いします」と、頭を下げると走って家路に着いた。
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