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ねえ…、こんな噂、知ってる?
「みゆき町のイチョウ並木!」
「…何それ。」
「えー、友梨ちゃん知らないんだー。みゆき町のイチョウ並木。結構有名な話なんだけど。」
全く知らない。てかまた始まったよ。沖野の怪談話。
この前はなんだっけ、湖の水死体だっけ。あんま覚えて無いや。
「えっとね。みゆき町にさ、イチョウ並木あるじゃん。あのすごいおっきくて綺麗なやつ。」
「あるね。綺麗だけどカップルばっかで嫌になるとこだ。」
「なんか嫌な覚え方だねー。そう、あそこはデートスポットとして有名で、この辺の人だけじゃなくて、遠くからもいっぱいカップルがくる場所だよね。」
そんな幸せそうな場所に怪談みたいな噂あるのかな。
まー無いでしょ。前回の湖も何にも無かったし。カップルに不幸が起きるってんならちょっと面白いけど。
「でね、続き!いつもはそんな幸せな場所なんだけど…、9月20日の25時。その時間にはそのイチョウ並木に行っては行けません。なぜなら…」
…、ゴクリ。私はゆっくりと唾をのむ。
まて、なんだこの描写。
「親に結婚を許されなかったカップルが2人、心中をしたからなのです。」
「それからというもの、その時間にイチョウ並木を通ったカップルは呪われ、2人で一緒に…、」
死ぬのか。
「死んでしまうのです…!」
当たった。
沖野は得意げに、人差し指を上に向けてまるで、えっへんとでも言いたげな顔をしている。
この顔が憎たらしいほど可愛い。アホの子っていうんだろうか。この顔を見ると世の男どもはメロメロだろう。
「てかまた死んだな。沖野の怪談は大体死ぬよな。」
「うん。だって怪談ってそういうもんじゃん。」
そうなのか。意外と薄っぺらいな、怪談って。
いや、沖野の話が薄っぺらいんだ。こんなこと思うと、怪談を生業にしてる人が可哀想だ。
「でさー、それでなんだけどー。友梨ちゃん、あのね。」
「ん、なに沖野。」
急に沖野が上目遣いでコッチを見てくる。しかもちょっとモジモジしながら。なんだこれ、可愛い。
「今日さ、9月の18日じゃん。」
たしかにそうだ。一体それがどう。…、まさか。
「明後日一緒にイチョウ並木に確かめにさ…、行ってみない?」
「嫌だ。」
即答した。怪談が怖いというわけではない。そもそも私と沖野は女同士でカップルでも無いし。
ただ時間が問題なんだ。25時つまり夜の1時だ。ダルすぎる。いくらなんでも。
「えー、何でなの。いいじゃん行こうよー。」
「嫌だ。私たちは条件に当てはまってないし、そんな時間に人なんているわけもないでしょ。はあ、私たちは何を確かめに行くのよ。」
何も起きるわけない。多分警察に補導されて終わり。そんなめんどくさいことしたくない。
「いいじゃんか、ちょっと夜にお散歩しよって言ってるだけ。あそこ夜景も綺麗なんだよ。」
「夜に散歩って…」
それじゃあ別に1時じゃなくても、明後日じゃなくてもいいじゃん。
「うーん。あんまり乗り気じゃなさそうだね。じゃあさ,もう一個、興味の出る話題をしよう。」
沖野はまた人差し指を上に向けた。そして眼鏡をくいっと上げた。ちなみに眼鏡は付けていない。ただただかわいいだけだ。
「もう一個…、ね。」
はあ、多分ろくな話では無いんだろうけど、聞くだけ聞いておくことにしようか。
沖野なんか、すごい目がキラキラしてるし、得意げだし。この顔を見て無視は許されない。神が許しても私が許さない。
「イチョウってさ、普通黄色じゃん。でもその時間だけ……、イチョウの葉っぱがね、真っ赤な、血の色に染まるんだって………。」
うげ、なにそれ。もうイチョウじゃ無いじゃんそれだと。
全く興味惹かれないし、普通にちょっと怖いし、なんでそれで私が興味持つと思ったのさ。
「どう?面白そうだよね。」
私が反応に困っていたら、私の顔の前に迫り、満面の笑顔で、しかも一切汚れのない笑顔で、沖野はそう言ってきた。
こんな風に詰め寄ってくるあたり、沖野は意外と押しが強い。いや、多分天然でマイペースなだけ。これが素なんだ。
こうなったときの私は、いつも押しに負ける。そもそも沖野みたいな天使の前で、私が断るなんて、最初からできないんだ。
でも譲れないところもある。時間だ。
「うーん、あのさ、時間だけ。時間だけなんとかならないかな。さすがに深夜1時はめんどいっていうか、女子2人だと危ない気がするんだ。」
そう言うと沖野は、たしかにといった感じで、腕を組み、ウーンと、少し悩むそぶりを見せてから、
「まあ、うん、そうだね。あんまり夜遅いと危ないから、9時くらいにしよう。9時くらいに。」
沖野は組んだ腕をほどき、両手で数字の9を作った。だか、こっちから見るとよく分からない、変な形にしか見えなかった。ちなみに本人も納得してなさそうで、首を傾げながら、何度も指を組み替えてた。
それはまあ、いいとして案外すんなり聞いてくれたな。沖野は強情だから、なかなか聞いてくれないと思ったけど。やっぱり深夜は危ないって思ったのかな、幽霊とか関係なしに。
「うん。まあ9時ならいいかな。」
「えっ、本当に?やったー!さすが友梨。じゃあ明後日9時にイチョウ並木ね」
「みゆき町のイチョウ並木!」
「…何それ。」
「えー、友梨ちゃん知らないんだー。みゆき町のイチョウ並木。結構有名な話なんだけど。」
全く知らない。てかまた始まったよ。沖野の怪談話。
この前はなんだっけ、湖の水死体だっけ。あんま覚えて無いや。
「えっとね。みゆき町にさ、イチョウ並木あるじゃん。あのすごいおっきくて綺麗なやつ。」
「あるね。綺麗だけどカップルばっかで嫌になるとこだ。」
「なんか嫌な覚え方だねー。そう、あそこはデートスポットとして有名で、この辺の人だけじゃなくて、遠くからもいっぱいカップルがくる場所だよね。」
そんな幸せそうな場所に怪談みたいな噂あるのかな。
まー無いでしょ。前回の湖も何にも無かったし。カップルに不幸が起きるってんならちょっと面白いけど。
「でね、続き!いつもはそんな幸せな場所なんだけど…、9月20日の25時。その時間にはそのイチョウ並木に行っては行けません。なぜなら…」
…、ゴクリ。私はゆっくりと唾をのむ。
まて、なんだこの描写。
「親に結婚を許されなかったカップルが2人、心中をしたからなのです。」
「それからというもの、その時間にイチョウ並木を通ったカップルは呪われ、2人で一緒に…、」
死ぬのか。
「死んでしまうのです…!」
当たった。
沖野は得意げに、人差し指を上に向けてまるで、えっへんとでも言いたげな顔をしている。
この顔が憎たらしいほど可愛い。アホの子っていうんだろうか。この顔を見ると世の男どもはメロメロだろう。
「てかまた死んだな。沖野の怪談は大体死ぬよな。」
「うん。だって怪談ってそういうもんじゃん。」
そうなのか。意外と薄っぺらいな、怪談って。
いや、沖野の話が薄っぺらいんだ。こんなこと思うと、怪談を生業にしてる人が可哀想だ。
「でさー、それでなんだけどー。友梨ちゃん、あのね。」
「ん、なに沖野。」
急に沖野が上目遣いでコッチを見てくる。しかもちょっとモジモジしながら。なんだこれ、可愛い。
「今日さ、9月の18日じゃん。」
たしかにそうだ。一体それがどう。…、まさか。
「明後日一緒にイチョウ並木に確かめにさ…、行ってみない?」
「嫌だ。」
即答した。怪談が怖いというわけではない。そもそも私と沖野は女同士でカップルでも無いし。
ただ時間が問題なんだ。25時つまり夜の1時だ。ダルすぎる。いくらなんでも。
「えー、何でなの。いいじゃん行こうよー。」
「嫌だ。私たちは条件に当てはまってないし、そんな時間に人なんているわけもないでしょ。はあ、私たちは何を確かめに行くのよ。」
何も起きるわけない。多分警察に補導されて終わり。そんなめんどくさいことしたくない。
「いいじゃんか、ちょっと夜にお散歩しよって言ってるだけ。あそこ夜景も綺麗なんだよ。」
「夜に散歩って…」
それじゃあ別に1時じゃなくても、明後日じゃなくてもいいじゃん。
「うーん。あんまり乗り気じゃなさそうだね。じゃあさ,もう一個、興味の出る話題をしよう。」
沖野はまた人差し指を上に向けた。そして眼鏡をくいっと上げた。ちなみに眼鏡は付けていない。ただただかわいいだけだ。
「もう一個…、ね。」
はあ、多分ろくな話では無いんだろうけど、聞くだけ聞いておくことにしようか。
沖野なんか、すごい目がキラキラしてるし、得意げだし。この顔を見て無視は許されない。神が許しても私が許さない。
「イチョウってさ、普通黄色じゃん。でもその時間だけ……、イチョウの葉っぱがね、真っ赤な、血の色に染まるんだって………。」
うげ、なにそれ。もうイチョウじゃ無いじゃんそれだと。
全く興味惹かれないし、普通にちょっと怖いし、なんでそれで私が興味持つと思ったのさ。
「どう?面白そうだよね。」
私が反応に困っていたら、私の顔の前に迫り、満面の笑顔で、しかも一切汚れのない笑顔で、沖野はそう言ってきた。
こんな風に詰め寄ってくるあたり、沖野は意外と押しが強い。いや、多分天然でマイペースなだけ。これが素なんだ。
こうなったときの私は、いつも押しに負ける。そもそも沖野みたいな天使の前で、私が断るなんて、最初からできないんだ。
でも譲れないところもある。時間だ。
「うーん、あのさ、時間だけ。時間だけなんとかならないかな。さすがに深夜1時はめんどいっていうか、女子2人だと危ない気がするんだ。」
そう言うと沖野は、たしかにといった感じで、腕を組み、ウーンと、少し悩むそぶりを見せてから、
「まあ、うん、そうだね。あんまり夜遅いと危ないから、9時くらいにしよう。9時くらいに。」
沖野は組んだ腕をほどき、両手で数字の9を作った。だか、こっちから見るとよく分からない、変な形にしか見えなかった。ちなみに本人も納得してなさそうで、首を傾げながら、何度も指を組み替えてた。
それはまあ、いいとして案外すんなり聞いてくれたな。沖野は強情だから、なかなか聞いてくれないと思ったけど。やっぱり深夜は危ないって思ったのかな、幽霊とか関係なしに。
「うん。まあ9時ならいいかな。」
「えっ、本当に?やったー!さすが友梨。じゃあ明後日9時にイチョウ並木ね」
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