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買い物
しおりを挟む特徴的なようで見つけづらい赤メッシュを目印に、少し時間がかかりながら無事合流できた。
「猫は今どうしてるの?」
「病院に入院してる! 思ったよりひどい状態だったっぽい」
ふーん、と曖昧な相槌を打ちながら、電車に乗ってホームセンターへ向かう。
「ここにペットショップあったんだ」
「そーそー!」
キャンキャンと仔犬の鳴き声が店内に響いている。
猫に必要らしい爪とぎやらトイレやら手入れ道具やらを探して、ペット用品コーナーを回る。
「あんまり犬の展示コーナーに行かないほうが良いよ」
「なんで?」
「……家族にしたくなるから……!!」
何かを堪えるようにして悶える廉に、なんとも言えない顔を向けながら、展示コーナーをちらりと見る。
「うぉ、猫デカ」
「やめろォ!」
毛がモッフモフのデカい猫は距離があってもちょっと怖かった。
腕にかすかな痒みを感じながら、無駄に迷う廉をばっさり切ってここでの用事をさっさと終わらせた。
「おもちゃとかお皿は百均行こうかなって思ってる」
「近くにあるの?」
「また電車乗ってくんだけど、大丈夫?」
「いいよ」
ついでに自分の要るものもあったら買おうかな。
街から田舎へ向かう電車に乗って、再び揺られる。
「天の家ってさ、どこで降りんの?」
「終点で降りるよ」
「ひぇ~めっちゃ時間かかるじゃん。引っ越そうとか考えなかった感じ?」
「別に家から通えるし、めんどいから、まあいいかなって」
「田舎の始発から乗れる良いところ教えてあげよう」
「何?」
「座れる」
「おおっ!」
百均で無事買い物を済ませて、ふぅと一息ついた。
「トイレはまた明日行って買うわ」
「結局そうするんだ?」
「はぁ。車ほしーい。電車だと荷物嵩張るー」
「ま、砂はゲットできたから最悪ダンボール」
「急に貧乏くさくなったね」
「じゃ、今日は付き合ってくれてありがと」
「うん。…………そういえばさ、源本陽介って人が廉のこと聞いてきたんだけど、」
俺がその名前を出した途端、廉の顔色が悪くなる。
上げた口角をそのままヒクリと震えさせ、目の焦点が一瞬合わなかった。
なにか、マズイことでもあるのだろうか。
廉から移るように、俺も背筋がビリビリとし始めた。
とん、と。
肩が叩かれた。
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