かまちょヤンキーにパシられる

時太

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第二部

ニヤリハット

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「よォ」

 ……よぉではない。気安く話しかけないでもらえるかな。僕たち今ちょっと気まずい時期なんだからチョットは遠慮しようよ。昨日はパシられるの回避して気持ち良かったけど、その夜殴り込みされないか心配でなかなか眠れなかったんだから!

 ちょ、ちょっと待って。

 なんでキチィちゃんのサンダル履いてるの?

 目を逸らして下ばかり見ていた僕は思わぬ衝撃を受けた。そのまま視線を上げて“奴”の全体像をみる。

 黒いキチィちゃん激カワサンダル。ラフな七分丈スボン白い半袖シャツ。カラフルなピンどめ。

 や、ヤンキーだ……!
 休日のヤンキーだ……!

 変な感動の仕方をしてしまって涙が出てきた。いや、これはあくびしてたからかも。

「にいさん! あのさ、まだ行きたいところあるんだけど……」

 親戚は、“あかねちゃん”の手を握りながら今まで見たこともない控えめさを出した。しかも僕の呼び方も変えている。誰だコイツはと思ったが、内では横暴になって外では大人しくなる内弁慶チャンなことを思い出した。
 隣の“あかねちゃん”はヤンキーに、言う。

「公民館に行っていい? 博道ひろみちくんに渡したいものがあるんだ」

 親戚の隣にいるのでつい比べてしまう。親戚より清楚な子だ。小学生でこんなサラサラヘアーを持っているとは。なんか家族から大切にされてる感じあっていいよね。隣の親戚のおさげを見ながら。
 チョット待て。今気づいたけどちゃっかり親戚も髪整えてる。どうした? カワイイじゃん。

 もしかしてこれはただのお祭りのパレードではなかったのだろうか。僕はアイドルのコンサートに迷い込んでいたらしい。

 周りをよく見てみれば、うちわを持っている人間が多い。いやこれはお祭りで配布されてるただのうちわだ。

 ……僕は今一体何をしているんだっけ。

「お前、妹いんだな」

 自然と近距離で声がした方を向いてしまった。

 ニヤニヤという効果音が似合う笑いをしているヤンキー。しまった。そう思ったが引き返せはしない。僕は開き直る。

 ふふん。馬鹿め。美優はイトコだよ。


「……イトコでそんな似るもん?」
「美優ちゃんイトコと仲いいの良いな~!」

 というわけで公民館に行くことになった。




 博道くんって誰?
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