かまちょヤンキーにパシられる

時太

文字の大きさ
上 下
21 / 23
第三部

無意識

しおりを挟む



 照島孝彦くん、小学6年生。好きなもの、新幹線と太鼓。嫌いなもの、にんじんとピーマン。
 先週のお祭りで太鼓叩いてたんだぜ! と言った少年の言葉で、僕の頭にピキーンと電流が走る。

 この子は親戚の意中の相手だ……!

 そんな衝撃を隠し、見てたかっこよかったよね、と感想を伝える。

「ま、まあな! てかおにいさん、おれのこと知ってたんだ」

 今思い出した。

「へへ。おれもビッグな男になったぜ……」

 照れくさそうだ。


 親戚が好きな相手だ。もう少しコネを作ってもバチは当たらないだろう。いつも僕を好き勝手連れ回す“ヤツ”に一泡吹かせるときがきたな。

 などと考えていると、孝彦少年の後ろから大きな影がヌッと現れた。


 学ランだ。さっきのキャッチ男と同じ制服。まさか、第二のキャッチ……

「タカ、お前ほっつき歩くなつっただろ。変なヤツに絡まれてんじゃねぇか」

 ガラが悪い。キャッチではなくヤンキーだった。よく見たら腰パン。なに時代のヤンキーだコイツ。どっかで見たエセヤンキーに似てるぜ……

 そして顔が整っているいわゆるイケメン。



 …………うちのクラスにいるヤンキーとカブリすぎじゃないか?
 どっちかがどっちかをパクったと言っても不思議ではないほど、ヤンキーとしての方向性が似ている。おいおい、キャラ被ったら見分けつかなくなるだろーが。

 しかしうちのヤンキーは金髪(プリン)だが、このヤンキーは黒髪だ。よかった~。いや、髪型ほぼ一緒だ……! もしかして生き別れの兄弟だったりするのだろうか。

「ちげーよ!! このおにいさんはヒーロー!! アニキの勘違い野郎!」

 孝彦くんも僕の親戚と同じように、内と外で呼び方を変えるタイプのようだ。
 あの時フィシュギュア!で助けたのもあってか、僕がヒーローと呼ばれるのはなんか面白い。

「そうだったのか。わりぃな、俺の弟が世話掛けた」

 お、おぉ。

 孝彦くんからイキっていると言われた彼から、素直な謝罪と感謝をもらっても、こいつイキリヤンキーだからな……が脳裏をよぎってしまって素直に受け取れない。なんか上からじゃない? と捻くれた受け取り方をしてしまうほどだ。

「アニキ面してんじゃねぇよ。キモすぎ」

 “アニキ”に関わると、孝彦くんの気性は荒ぶってしまうらしい。

 うん。イキリヤンキーという認識でも良さそうだな。

 身内からの扱いが雑だと、一気に心の距離が縮まる気がする。無意識に下に見てんのかな。


しおりを挟む

処理中です...