僕はここにいる。

小屋瀬 千風

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僕のよろこび

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僕は世彩 蓮(ぜつや  れん)十六歳。小さな町に住んでいる。
僕は今、本を読んでいる。
僕は本を読むのが好きなんだ。
今読んでいる本は、今この世界、四つの種族から世界が成り立っていて、一つは人間、一つは旧人間、一つは魔族、もう一つは旧魔族で出来ているのだが、それを最初に知った人たちが、どういった行動をして、今の世界ができたのかを、簡単にまとめたお話なんだ。
ああ、旧人間とは、元は魔族だったが、何らかの方法で人間になったものの事で、旧魔族とは元は人間だったが、何らかの方法で魔族になったものの事だよ。
何らかの方法って言って、例えば、なりたい種族の血を飲んだり、なりたい種族を解体したり、解剖したり………など、いろんな説があるんだ。
実際は何だか分からないけど。
というか、旧人間、旧魔族は基本的に僕はいないと思う。
人間が勝手に作っているだけで、空想上のものに過ぎないと僕は思っている。
だって、旧が着いてもつかなくても今なっているものに変わりわないからね。

このお話の終わりっていうのは、いろいろあるんだ。
このお話自体、さまざまな視点から読むことができるからね。
魔族的には、こうもとれるし、人間的にはこうもとれる。
それが悲しかろうが、嬉しかろうがも、ものそれぞれだと思うけど。

「もう、朝の八時か。昨日の夜からぶっ通しで読んでたもんな、この本。」
そろそろ朝ごはんでも食べに下へ行きますか。
僕の部屋は二階にある。僕には妹がいる。
嫌いな妹。全然意見が合わないからだ。
妹の部屋も二階にある。隣にある。
毎日毎日、隣から物音がして、うるさくて本を読むのに集中出来ないので、妹が寝た、夜に本を読む。
できれば、昼にも読みたいのだが。
その他、二階には僕の母と父の部屋(主に母の部屋なんだが)と、トイレとペットの犬がいる部屋がある。
犬の名前は「コーヒー」体の毛の色が茶色いからだ。
犬の部屋といっても、大体いつもドアが空いているので、犬を育てるために必要なものばかりを置いている、収納部屋みたいになっている。

僕は一階に降り、朝ごはんを食べ、また自分の部屋に戻った。
「人間の他にあと、三つの種族があるって本当なのかなぁ。」
僕は本を読んだあともそう思っていた。確かに、母がいるって言っていた。けど、本当にいるのかわからない。
だって信じられないじゃないか。
何の証拠もないのに。
他の種族との交流は、人間の上級階級のものしか出来ないっていうし。
「あーあ、一回でもいいから、僕も交流したいなぁ。
魔族ってどんな感じなんだろう。
魔法はやっぱり使えるのかな、この本では使えてたし、あ、旧人間ってのも使えてたな、魔法。まぁ、元は人間だけど、魔族になった人のことを言うからね。
けど、魔族はともかく旧人間とか、旧魔族とかはあまり信じられないな。だってやっぱり、種族を変えることってできないと思うし。やっぱりそういうのって生まれつきだと思うし。」

人間、魔族のどちらかの種族になるかは、その親次第だ。親がどっちも人間だったら人間、魔族だったら魔族。
ハーフというものは存在しない。必ずどちらかだ。いるのかもしれないけど、人間の法律上、他の種族と結婚する事だめだと決まっている。
まぁ、もし戦争になった時、どっちにつくか迷うだろうし、もしそんなものが、人間のところで平和に暮らしていたら、僕たち人間側はとても不安になるからね。

僕は別に、最初から本好きと言う訳ではなかったんだ。
どっちかと言えばバカな方だし、頭も悪い。
本読み始めたきっかけも、頭が良くなるということを聞いたからだ。
まぁ少し、知識は身についた、はずだ。

僕が暮らしている町に、学校はない。
小さな町なのだから、学校を建てるお金とかがないのだろう。
僕は別にそれでも構わない、暇な日は本を読んだり、外に遊びに行くかするからだ。
外で遊ぶ時は、いつも隣の家の僕より一つ年上のお兄ちゃんと、もう片方の隣の家の、同年代の男の子と遊ぶ。
虫を捕ったり、水で遊んだりと、いろいろ。

僕はこの生活が好きだ。
変わってほしくない。
あの本で読んだ。
あの本の序盤、今とは違って、人間と魔族は 対立していて、人間の暮らす町は、どれも魔族によって壊されていった。
そりゃそうだ。
魔法が使える魔族に、僕達人間は勝てるわけがない。
こっちの攻撃だって、魔法で防いじゃうくらい強いんだからさ。

その後、人間のリーダーと、魔族のリーダーが共に話し合い、お互いに手を出さないことにした。
ここでお話は終わった。

僕達三人、今日は釣りをした。
「全然釣れなーい、飽きたー」
「まだあと少しだって!」
「そうだよ、多分、あと少し……」
僕達はいろんな話をしながら、釣りをした。
「げっ、もうこんな時間じゃん」
「もう帰ろうか」
「そうだね、さすがにもう暗いし」
僕達は家に帰った。
そこには、机を前に椅子に座った母、父、妹がいた。
椅子の下にはペットのコーヒーもいた。
みんな、僕の帰りを待っていたそうだ。
「蓮!こんな遅くまでどこ行ってたの!早く手を洗ってくるのよ」
「はーい」
まだ、夜の七時。
それほど遅くもないと思うが。
まぁ僕の家では、夜の七時に夜ご飯を食べる。

「ごちそうさまでした」

僕は決して、母や父が嫌いなわけじゃない。
ただ、少し厳しいと思うんだ。
門限は夜の七時までで、夜は十時に寝る。
僕はもう十六歳なんだぞ。
自己管理ぐらい自分でできる。
そう言いたかったが、やっぱり言えない。
怖いからね。
夜は十時に寝ないといけないのだが、僕は寝ていない。
「静かだもん。妹寝ていて静かだもん!本読める最高の時間帯だもん!」
そう親に言ってやりたかった。

「まぁ、今日はもう寝よう。昨日は朝まで本を読んでいたからな。」
僕は布団に入り、眠りについた。

周りがうるさい気がして、朝起きて、寝ぼけてよく見えない目で窓を見た。
そこには、僕が知っている町はなかった。


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