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海苔乗り。

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「今度、海苔のテーマパークが出来るらしいよ」
「そうなんだ」
「うん。海苔の歴史が学べたり博物館があったりするらしいよ。金額も安いみたいだし今度一緒に行こうよ」
「良いよ」
 そんなノリで僕達は海苔のテーマーパークへと行く事になった。
 当日、テーマパークへ入場した僕達は驚いた。入った瞬間海苔の臭いがダイレクトに鼻に届いたからだ。
「海苔を身近に感じられるよう設計されております」
 キャストが笑顔で言った。
 園内では海苔のゆるキャラの一枚海苔男ちゃんというキャラがペラペラとした妖怪ではなく、壁の妖怪のようにのそのそと歩いていた。
「まあ、あれは人間が中に入る都合、厚くなったんだろうな」
「夢を壊すような事を言うなよ。ここは夢の国だぞ」
「悪夢の国じゃなければ良いけどな」
 しかしそんな心配はよそに、僕達はとても楽しむ事が出来た。
 海苔を圧縮して壁が作られたボルダリング施設、海苔を糊でくっつけて同じように圧縮し、海苔のシートに乗り丘から下へと向かう、海苔下り、海苔で作った船に防水加工を施した船海苔、ゲームセンター内では海苔が景品の海苔UFOキャッチャーや、ストレス解消海苔破りコーナー、海苔ストラックアウト、海苔アーチェリー、フードコートでは海苔の食べ放題、各地方の海苔の食べ比べなど、正に海苔づくしのテーマパークだった。道行く人の服には海苔の欠片が幾つもついていて、喋っている時を見てみると歯に海苔が付いているのが視認出来た。何だかまるで臭いも含めて、別世界に迷い込んだかのような気分になった。ゾンビの世界にでもいるかのような。極めつけは、夜に空から刻み海苔が降ってくる演出だった。これこそ正に非日常で思う存分僕達は楽しんでテーマパークを後にした。
 後日、家に宅配で海苔で出来たベッドが送られて来て、部屋にそれを置いてダイブして海苔に乗り、臭いと共にあの日の記憶を思い起こしていると、自然と笑みが溢れた。
 僕はその日、幸せな気分で眠りに就き、夢の中で海苔になり、ノリノリな気分で海を漂っていた。
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