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戦った

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 二段ベットの上の段に僕は寝ていたのだが、寝相が悪かった僕は寝返りを打った際、柵を突き破り床に落ち、頭を強打した。

 目が覚めると一面白の世界で何もない。僕は頭を打って病院に向かったはずだ。

「あなたは死にました。打ち所が悪かったのでしょう」

 そんな声が空間内に響いた。

「ここはどこなのでしょうか」

「中間地点ですね。死んだ後次に生まれ変わるための待機場所みたいなところです」

「なるほど」

「それであなたに提案があってあなたは特別に私と話を出来る状態なのです」

「あなたは神なのですか」

「神というより天使に近いですね。まあそれで提案というのは異世界に転生してみてはいかがかなという事です」

「いいですね。魔法とか使えますか」

「使えます」

 意外と早く受け入れた僕に逆に天使の方が驚いていたみたいだ。姿は見えないけれど。

「それでなのですが、あなたは生前善を積み重ねてきていたので一つスキルなどを持っていくことが出来ます」

「ラッキー」

「どんなスキルが良いですか」

「さくっとレベルが上がるスキルが良いですね。楽に」

「そうですか……わかりました。では一通り異世界の説明をします」

 そう天使は言うと、異世界でのしくみなどについて一通り教えてくれた。僕にくれるスキルについてはお楽しみとの事で教えてくれなかった。

 そして一通り説明が終わった後、僕の意識は異世界へと飛ばされた。

 この世界ではステータスというものが存在していて意識を集中するとそれが自分に見える。

 僕は生まれて間もない赤子になったのだが、ステータスを覗いてみると、天使にもらったと思しきスキルがそこにはあった。

『エロ本を読むとレベルアップ』

 ふざけたスキルだった。

 僕は絶望した。

 手足がうまく動かせるようになった頃、僕は自分の父親がエロ本を隠し持っていないか個室を探した。

「あった」

 父親はベッドの下にエロ本を忍ばせていた。

 僕はそれを読んでレベルがアップした。同じ本は何度読んでもレベルが上がることはなかった。最初の一回目だけであるらしい。

「おいおい、お前にはまだこの本は早いぞ」

 父親がにやにやした笑みを張り付けて僕に言った。僕はその父の後ろで仁王立ちしている母の鬼の形相を見てこれから起こる惨事に身を震わせた。

「あなた子供に何を教えようとしているの!」

 そんなこんなで僕はすくすくと成長していった。

 道端のエロ本探しをしてどんどんとレベルを上げて行った。

 強いけど変態。それが僕の評判だった。

 ある時、世界に魔王が復活した。白羽の矢が立ったのが16歳の僕である。なぜなら国内で敵なしといっても過言ではなかったからだ。

 国の精鋭兵士と戦っても僕の方が圧倒的に強かった。それはエロ本を読みまくったおかげでレベルアップしたおかげである。

 しかし僕を見る目は尊敬よりも軽蔑の方が勝っていた。

 だが、世界で魔王に立ち向かえるのは僕しかいないとの事なので僕は仕方がなく魔王討伐に向かう事にした。

 一応勇者扱いなので、僕の要望はほぼなんでも受け入れられた。

 僕が望んだのは回復薬や最強の武器防具は当然なのだが、これが一番大事な事だった。

「この国の全てのエロ本を僕に下さい」

 僕がそう言ったときの国王が僕を汚いものでもみるかのような目は僕は一生忘れられないだろう。

「わかった。国民を総動員して過去のものから今に至るまでのエロ本をかき集めよう」

 僕はそれと同時にアイテムが無限に入る収納袋を貰った。そこにエロ本を入れるためだ。

 そして今、僕は魔王と対峙している。

 魔王は当然激怒している。なぜならば僕が戦闘中にエロ本を読んでいるからだ。

 本来ならばエロ本を全部読んでから魔王に挑みたかったのだが、魔王が人間界に攻めだしてきたので、対峙せざるを得なくなったのだ。

「貴様、エロ本を読みながら我と戦うなど、我を愚弄しているのか」

「今現在の僕ではあなたに勝てないだからエロ本を読んでいるのです」

「ふざけるな! 人間界のエロ本のみならず、獣人、魔族のエロ本までも読む変態勇者め」

 魔王から変態扱いされた。

 僕は魔王と戦いながらもエロ本を何とか網羅し、レベルがカンストした僕はぎりぎりのところで魔王に勝つことが出来た。

「我の負けだ……変態勇者よ」

「それやめて」

 僕は魔王を討伐した。そしてレベルももう上限にまで到達した。だからこれからはもうレベルアップの為にエロ本を読む必要はなくなるだろう。

 僕は国に帰った。

 盛大ではないが祝賀会も開かれた。

 世界には平和が戻ったが変態勇者である僕とみんなの間にはまだ見えない壁のようなものがまだ存在していた。

 だが、もうこれからはエロ本を読む必要などない。今までの誤解は氷解するだろう。

 しかし、僕は今現在エロ本を自室で真剣に目を通している。

「僕は……僕は変態だったのか?」

『もーやっぱり、男の子やの』

 そんな声が天から聞こえた気がした。
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