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蜜柑甘味
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昔、甘いから食べてみなと言われて騙されてレモンを丸かじりさせられ、それから柑橘系の果物に拒否感を抱いていた。
だが、お手伝いの為、お婆ちゃんの家で片づけをして、それを終えた時、お婆ちゃんが「デザートでも食べんしゃい」と勧めてきた。
「ありがとう……これは何?」
「ありゃ、ミカンを知らんとか」
「はい。柑橘系は苦手な物で」
「これは大丈夫。甘いから食べんしゃい」
満面の笑みのお婆ちゃん。俺にとってはありがた迷惑なのだが、お婆ちゃんの笑みを曇らせたくはなかった。
「分かりました。いただきましょう。御丁寧に実まで剥いて下さり感謝いたします」
俺は覚悟の決まった武士のように言った。
そして、ひと粒を口の中に入れ、味をかみ締めた。
「あ、甘い! これが蜜柑なのか。これが柑橘系だとは信じられない。信じがたい奇跡だ」
「おおげさやね。でも甘くて当然よ。だってこれ蜜柑は蜜柑でも蜜柑の缶詰だもの」
蜜柑の缶詰。なるほどその手があったか。苦手な物でも拒否するだけではなく方法次第で打開策があろうとは、なんという見識の狭い世界で俺は今まで生きて来たのだろうか。
その日以来、ミカンの缶詰は保存食としてだけでなく、デザートとしても活躍し、やがて柑橘系も自然と食べられるようになった。
だが、お手伝いの為、お婆ちゃんの家で片づけをして、それを終えた時、お婆ちゃんが「デザートでも食べんしゃい」と勧めてきた。
「ありがとう……これは何?」
「ありゃ、ミカンを知らんとか」
「はい。柑橘系は苦手な物で」
「これは大丈夫。甘いから食べんしゃい」
満面の笑みのお婆ちゃん。俺にとってはありがた迷惑なのだが、お婆ちゃんの笑みを曇らせたくはなかった。
「分かりました。いただきましょう。御丁寧に実まで剥いて下さり感謝いたします」
俺は覚悟の決まった武士のように言った。
そして、ひと粒を口の中に入れ、味をかみ締めた。
「あ、甘い! これが蜜柑なのか。これが柑橘系だとは信じられない。信じがたい奇跡だ」
「おおげさやね。でも甘くて当然よ。だってこれ蜜柑は蜜柑でも蜜柑の缶詰だもの」
蜜柑の缶詰。なるほどその手があったか。苦手な物でも拒否するだけではなく方法次第で打開策があろうとは、なんという見識の狭い世界で俺は今まで生きて来たのだろうか。
その日以来、ミカンの缶詰は保存食としてだけでなく、デザートとしても活躍し、やがて柑橘系も自然と食べられるようになった。
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