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ヒョウのレイちゃん クリスマス演奏会
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ヒョウのレイちゃんが通う幼稚園では、クリスマスの数日前に演奏会をします。
クラスごとに小さなステージに上がって、歌を歌い、演奏をするのを、家族が見に来ます。
年長組のレイちゃんのクラスでは、『もみの木』を歌い、『サンタが町にやってくる』を演奏します。
レイちゃんのママはピアノの先生、お父さんは趣味で地域の楽団に入っていて、トロンボーンを吹いています。
お家ではいつも音楽が流れているので、レイちゃんも音楽が大好きです。
「楽器の担当を発表します」
先生がクラスメイトの名前と楽器を発表していきます。
「レイちゃん、鈴です」
「はーい」
レイちゃんは鈴のきれいな音が大好きなので、やったーと心の中で喜びました。
さっそく練習が始まりました。
シャンシャンと鈴を鳴らし、シャラララと揺らします。
毎日の練習時間を、レイちゃんはとても楽しんでいました。
ある日、練習前に先生に呼ばれました。
「レイちゃんはリズム感がいいから、楽器を代わってほしいの」
レイちゃんはびっくりして、言葉がでてきません。
「シンバルのミータくんが、難しいって。それで、レイちゃんならピアノに合わせて上手にシンバルを鳴らせると、先生思うの」
シンバルは、金属の丸いものを打ち合わせて音を鳴らします。
ジャーンと高い音が出て、レイちゃんはあまり好きではありません。それに、シンバル隊は男の子二人で、女の子がひとりっきりなのは心細いのです。
でも、先生に変わってほしいとお願いされて、嫌とは言えませんでした。
しぶしぶ楽器の交代を引き受けて、その日からシンバルの練習を始めました。
ネコのミータくんは、幼稚園を休みがちな男の子。いつも元気なので、病弱というわけではないと思うけれど、レイちゃんはミータくんが休む理由を知りません。
ミータくんが幼稚園を休むので、演奏会の練習もあまりできていなくて、鈴の音がときどきずれます。
わたしはうまくできていたのに、と思う気持ちがあったけれど、レイちゃんは誰にも言いませんでした。
演奏会前日の夜。
「レイちゃん、明日、パパもお仕事休んで演奏会行くからな」
パパは仕事がとても忙しいので、幼稚園のイベントに毎回は来られません。
でも今回は来てくれると言ってくれました。
レイちゃんはパパが来てくれるのは嬉しいけれど、明日の演奏会のことを思うと、少し気分が沈みます。
「明日は絶対に見に行くから、心配しなくていいんだぞ」
パパは約束していても、急な仕事で約束を守れないことがあります。
レイちゃんが今素直に喜べないのは、パパのせいではありません。
鈴だったのにシンバルに代えられた残念な気持ちが、レイちゃんの心の中で消火できずにくすぶっていたのです。
「どうした? パパに言ってみな」
レイちゃんは、思い切ってパパに気持ちをぶつけました。こんな気持ちで演奏をしても、楽しめないと思ったからです。
「レイちゃんは鈴がやりたかったのか。それは残念だったな。パパもレイちゃんの鈴の演奏聴きたかった」
やっぱりパパもそう言いました。
レイちゃんが先生に嫌だと言えば良かったと思っていると、
「でもな」
とパパが続けました。
「先生は、レイちゃんのリズム感の良さを買って、シンバルをお願いしたんだろう。シンバル、難しかった?」
「そうでもない」
レイちゃんにとっては、鈴もシンバルも変わりありませんでした。すぐに覚えて、先生のピアノ伴奏と、他の楽器に合わせられました。
「レイちゃんならできるって信用してもらえて、実際にレイちゃんはできた。先生の期待に応えられて、レイちゃんはすごいじゃないか。パパは誇らしいな」
パパは嬉しそうな顔をしています。
「シンバルって、とても大切なパートなんだよ」
オーケストラの演奏を聴きながら、シンバルについて教えてくれました。
演奏会当日、レイちゃんから鈴を鳴らしたかった残念な気持ちが、きれいになくなっていました。
シンバルは、演奏を盛り上げるための大切な楽器だとわかったからです。
パパに相談をしてよかったなと思いました。
あとは練習してきたことを、本番でちゃんとやるだけ。がんばってきたから、きっと大丈夫。
ミータくんは登園していました。あまり練習していなかったけど、大丈夫かなと少し心配になりました。
年少組からスタートして、レイちゃんたち年長組の順番がやってきました。
楽器の前に横一列で並んで歌います。
歌は練習よりみんな大きな声で歌っていました。目の前に家族がいて、張り切ったのでしょう。
拍手をもらって歌が終わり、演奏のために移動します。
シンバルは太鼓隊とタンバリンと一緒に後ろの高いところで演奏します。
さっきよりもパパとママの姿がよく見えました。
心配していたとおり、ミータくんは演奏についていけていません。関係のないところで鳴らしています。
でもほかの音に消されて、ミスをしても目立ちませんでした。シンバルだったら、とても目立っていたでしょう。
それに鈴の音はかわいいから、ミスをしてもかわいい音が聴こえるだけなので、これも有りだな、なんてレイちゃんは感じました。
演奏会が終わってから、パパとママはすごく褒めてくれました。
かっこよかったよ。
がんばったね。
タイミングばっちりだったよ。
シンバルがあると、演奏が引き締まるね。
たくさんたくさん褒めてくれました。
レイちゃんも、終わってみたらとても楽しく演奏できていました。
交代してよかったんだなと、レイちゃんは思いました。
クラスごとに小さなステージに上がって、歌を歌い、演奏をするのを、家族が見に来ます。
年長組のレイちゃんのクラスでは、『もみの木』を歌い、『サンタが町にやってくる』を演奏します。
レイちゃんのママはピアノの先生、お父さんは趣味で地域の楽団に入っていて、トロンボーンを吹いています。
お家ではいつも音楽が流れているので、レイちゃんも音楽が大好きです。
「楽器の担当を発表します」
先生がクラスメイトの名前と楽器を発表していきます。
「レイちゃん、鈴です」
「はーい」
レイちゃんは鈴のきれいな音が大好きなので、やったーと心の中で喜びました。
さっそく練習が始まりました。
シャンシャンと鈴を鳴らし、シャラララと揺らします。
毎日の練習時間を、レイちゃんはとても楽しんでいました。
ある日、練習前に先生に呼ばれました。
「レイちゃんはリズム感がいいから、楽器を代わってほしいの」
レイちゃんはびっくりして、言葉がでてきません。
「シンバルのミータくんが、難しいって。それで、レイちゃんならピアノに合わせて上手にシンバルを鳴らせると、先生思うの」
シンバルは、金属の丸いものを打ち合わせて音を鳴らします。
ジャーンと高い音が出て、レイちゃんはあまり好きではありません。それに、シンバル隊は男の子二人で、女の子がひとりっきりなのは心細いのです。
でも、先生に変わってほしいとお願いされて、嫌とは言えませんでした。
しぶしぶ楽器の交代を引き受けて、その日からシンバルの練習を始めました。
ネコのミータくんは、幼稚園を休みがちな男の子。いつも元気なので、病弱というわけではないと思うけれど、レイちゃんはミータくんが休む理由を知りません。
ミータくんが幼稚園を休むので、演奏会の練習もあまりできていなくて、鈴の音がときどきずれます。
わたしはうまくできていたのに、と思う気持ちがあったけれど、レイちゃんは誰にも言いませんでした。
演奏会前日の夜。
「レイちゃん、明日、パパもお仕事休んで演奏会行くからな」
パパは仕事がとても忙しいので、幼稚園のイベントに毎回は来られません。
でも今回は来てくれると言ってくれました。
レイちゃんはパパが来てくれるのは嬉しいけれど、明日の演奏会のことを思うと、少し気分が沈みます。
「明日は絶対に見に行くから、心配しなくていいんだぞ」
パパは約束していても、急な仕事で約束を守れないことがあります。
レイちゃんが今素直に喜べないのは、パパのせいではありません。
鈴だったのにシンバルに代えられた残念な気持ちが、レイちゃんの心の中で消火できずにくすぶっていたのです。
「どうした? パパに言ってみな」
レイちゃんは、思い切ってパパに気持ちをぶつけました。こんな気持ちで演奏をしても、楽しめないと思ったからです。
「レイちゃんは鈴がやりたかったのか。それは残念だったな。パパもレイちゃんの鈴の演奏聴きたかった」
やっぱりパパもそう言いました。
レイちゃんが先生に嫌だと言えば良かったと思っていると、
「でもな」
とパパが続けました。
「先生は、レイちゃんのリズム感の良さを買って、シンバルをお願いしたんだろう。シンバル、難しかった?」
「そうでもない」
レイちゃんにとっては、鈴もシンバルも変わりありませんでした。すぐに覚えて、先生のピアノ伴奏と、他の楽器に合わせられました。
「レイちゃんならできるって信用してもらえて、実際にレイちゃんはできた。先生の期待に応えられて、レイちゃんはすごいじゃないか。パパは誇らしいな」
パパは嬉しそうな顔をしています。
「シンバルって、とても大切なパートなんだよ」
オーケストラの演奏を聴きながら、シンバルについて教えてくれました。
演奏会当日、レイちゃんから鈴を鳴らしたかった残念な気持ちが、きれいになくなっていました。
シンバルは、演奏を盛り上げるための大切な楽器だとわかったからです。
パパに相談をしてよかったなと思いました。
あとは練習してきたことを、本番でちゃんとやるだけ。がんばってきたから、きっと大丈夫。
ミータくんは登園していました。あまり練習していなかったけど、大丈夫かなと少し心配になりました。
年少組からスタートして、レイちゃんたち年長組の順番がやってきました。
楽器の前に横一列で並んで歌います。
歌は練習よりみんな大きな声で歌っていました。目の前に家族がいて、張り切ったのでしょう。
拍手をもらって歌が終わり、演奏のために移動します。
シンバルは太鼓隊とタンバリンと一緒に後ろの高いところで演奏します。
さっきよりもパパとママの姿がよく見えました。
心配していたとおり、ミータくんは演奏についていけていません。関係のないところで鳴らしています。
でもほかの音に消されて、ミスをしても目立ちませんでした。シンバルだったら、とても目立っていたでしょう。
それに鈴の音はかわいいから、ミスをしてもかわいい音が聴こえるだけなので、これも有りだな、なんてレイちゃんは感じました。
演奏会が終わってから、パパとママはすごく褒めてくれました。
かっこよかったよ。
がんばったね。
タイミングばっちりだったよ。
シンバルがあると、演奏が引き締まるね。
たくさんたくさん褒めてくれました。
レイちゃんも、終わってみたらとても楽しく演奏できていました。
交代してよかったんだなと、レイちゃんは思いました。
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