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番外編 猫のいる街 1997

26.誠二郎 22

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愛は一時間ほど興奮状態にあったが、10時を回り、これ以上はダメだと寝かしつけることにした。
京子の代わりに二階に連れて行ってベッドに横にならせ、枕元で本を読んでやると、やがて瞼が下りてきてすぐに寝息を立て始めた。
天使のような寝顔をしばし眺めてから一階に戻ると、話があるからと京子が待っていた。
むろん、わしもあれで話が終わったとは思っていない。
食卓に向かい合わせに座る。
「まず団体のことを教えてもらえんか」
「ボランティアで野良猫の保護活動をしている民間の団体よ。野良猫を保護して、健康状態を確認して、猫の様子を見ながら譲渡会を開いて、引き取ってくれる人を探すの。引き取り手が見つからなくても、病気で譲渡できなくても、最後までちゃんと面倒を見てくれるそうよ。殺処分はしないって」
「お金はどうっているんだ」
「寄付で成り立っているそうよ。あとはボランティアスタッフの自腹や持ち寄りとか」
「そうか。それじゃ、良心的な団体というころか」
「そうだと思うわ。ま、野良猫たちにしてみれば、いい迷惑なんでしょうけどね。人と共に生きて欲しいからこその活動なんだけどね。それでね、お父さん。珠たちのことなんだけど」
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