【完結】御食事処 晧月へようこそ 第5回ほっこり・じんわり大賞奨励賞受賞

衿乃 光希

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38.血液型

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 朋夏に教えられた病院に駆け込んだ一穂は、どこに向かえばいいのかわからなくて立ち尽くした。
 待ち合いで会計を待つ人。診察の受け付けをする人。たくさんの人と声と足音で溢れている。
 朋夏の連絡先を知らない一穂に、連絡の取りようがなかった。

「一穂!」
 ひときわ大きな声が、喧騒を切り裂くように一穂に届いた。
「源三郎おじさん!」

 現れたのは、源三郎だった。
「金田さんから連絡をもらって、車飛ばしてきた。一穂は大丈夫か」
「あたしより、千里さんでしょう。平気だよね。ちょっと怪我しただけだよね」

 源三郎が顔を曇らせた。
「おじさん!」
「ついてきなさい」

 源三郎について病院の奥に進む。
 一穂は大きな病気や怪我をしたことがない。両親と事故に遭ったあの日以来、病院とは縁遠かった。
 どこに向かっているのかわからなくて、不安が増していく。

 とある場所で源三郎は足を止めた。扉の先の部屋には金田夫妻が座っていた。
 一穂に気づいた朋夏が立ち上がって、一穂を出迎えた。

「一穂ちゃん。無事に着いて良かった」
「朋夏おばさん。千里さんの怪我はどんな感じ? 手当て受けてるんだよね」
「受けてはいるよ。手当てというか……手術をね」

「手術! ……かすり傷じゃないって事だよね」
「かすり傷じゃないけど、どういう手術かは教えてもらえてないの。骨折かもしれないし、どこか出血してるのかもしれない」
「出血? ヤバイじゃん」

「一穂ちゃんは、千里が特殊な血液型って、知ってた?」
「え? 知らないよ。千里さんもなの?」
「も、って?」
「あたし、RhマイナスA型で、子供の頃から怪我は気を付けるように言い聞かされてきたから」

「一穂ちゃんもだったんだ。すごい偶然。千里もRhマイナスA型なんだよ」
「輸血! 血足りてるの? 必要ならあたしの血使ってもらう」

 部屋から飛び出そうとした一穂を、朋夏が引き留めた。
「それは確認した。幸い輸血用のRhマイナスA型の血は輸血センターから運ばれてきたからって。事故って聞いた時に、Rhマイナスの事を言わないとって看護師さん捕まえたら、ちゃんと検査しますからって言われてさ。焦っちゃったよ」

「それじゃ、血に関しては大丈夫なんだよね。足りないってことはないんだよね」
「ないと思うよ。千里、定期的に献血通ってたし」

「自分の血液、貯蓄してたってこと?」
「そんな感じだね。もちろん自分用だけじゃなくて、Rhマイナスは少ないからって。今日、行く予定してたと思うよ」

「献血のために動いて事故に遭うなんて、酷い」
「そうだね。理不尽だと思うよ。あたしたちに出来るのは祈ることだけっていうのは、歯痒いね」

 悔しそうに言う朋夏の言葉に、一穂も頷いた。
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