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15.ヤマトの心
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「ヤマト君は、大切にしていたおもちゃを、自分で壊したんだ」
映像を見終わった僕は、驚いて放心した。
乱暴な遊び方をして、壊れてしまったのかなと思っていた。まさか、ヤマト君自身が感情に任せて壊していたなんて。
(びっくりしたね)
左隣に座るモモタが、温かい体を寄せてくる。おもちゃを踏みつけるヤマト君の姿は、犬には怖かったのかもしれない。
(ねえ、どうして、ヤマト君は大切に思っていたおもちゃを壊しちゃったの?)
膝の上のヒメが振り返り、首を傾けながら訊ねてきた。
とってもかわいらしい仕草に、僕の心が癒される。
僕はヒメの頭をなでながら、ヤマト君の行動について考えた。
「どうしてなんだろうね」
僕は一人っ子だ。
幼稚園や小学校で、きょうだいケンカをする話を聞くと、どうして仲良くしないんだろうと不思議に思っていた。
家に帰ると、僕の遊び相手は両親だけ。一緒に遊べるきょうだいが家にいたらいいのに、とあこがれたときもあった。
だからケンカせずに、仲良く遊べばいいのに、と思っていた。
弟がいるヤマト君は、ときどき苦しそうな顔をしていた。大切にしているものを弟に取られ、我慢していた。
貸したくないのに貸さないといけない。乱暴に扱われ、壊されても、怒れない。
幼い弟には、扱い方がわからないから。仕方がない、とヤマト君は自分に言い聞かせているように見えた。
溜まりに溜まった不満が、絵を破られたことで爆発した。
爆発先が、自分が大切にしていた、弟にあげたおもちゃだった。
「ヤマト君の優しさ、なのかな」
僕は想像を口に出した。犬たちは黙っている。
「ヤマト君は弟の物じゃなくて、自分があげた物を壊した。元は自分の物だから、ダイチ君に与える傷の深さを考えたとか」
(そんなことをして、ヤマト君の心は痛くないの?)
「ヒメは優しいね。ヤマト君の心を考えてあげられるなんて。きっと、痛いよ。思い出も一緒に壊しちゃったんだもん。だから、直そうと思ったんじゃないかな」
ヒメに伝えることで、びっくりしてフリーズしていた僕の頭の中が整理されていく。
僕の右足に、柔らかくて温かいものがぽんと乗った。コタローの前脚だった。
(ボクね、遊びに夢中になっておもちゃ噛みちぎっちゃったんだ。そしたら取り上げられちゃって、悲しくなったんだけど、宏子お母さんが同じおもちゃを買ってくれたんだよ)
目をきらきらと輝かせて尻尾を振っているコタロー。
「そうだね。きみたちは、全力で遊ぶもんね」
コタローの頭や背をなでながら、犬たちが夢中でおもちゃと遊んでいる姿を思い描いた。
かわいくて、無邪気な姿を想像するだけで、心とともに頬がゆるんだ。
「同じおもちゃを買ってもらったとしても、それはまた違うものなんだよ。ヤマト君は、物も思い出も、大切にする子なんだよ」
(壊しちゃったのに?)
「うん。衝動で壊しちゃった。だけど、直したいっていうことは、反省してるってことじゃないかな。それか後悔か」
本当のところは、ヤマト君にしかわからない。
もしかすると、本人もわからないかもしれない。
だけど捨ててしまわないで、修理を頼んだ。
これからも大切に持っておこう、そういう心があるからだと僕は思う。
ダイチ君にまたねだられたら、どうするんだろうと心配もあるけれど。
「さ、帰ろうか」
犬たちと話している間に、スクリーンは消えていた。
ヒナが膝から降り、僕も立ち上がった。
振り返って歩いていくと、アリサさんのときみたいに虹色が白くなっていく。
まぶしくなって僕は目を閉じた。
映像を見終わった僕は、驚いて放心した。
乱暴な遊び方をして、壊れてしまったのかなと思っていた。まさか、ヤマト君自身が感情に任せて壊していたなんて。
(びっくりしたね)
左隣に座るモモタが、温かい体を寄せてくる。おもちゃを踏みつけるヤマト君の姿は、犬には怖かったのかもしれない。
(ねえ、どうして、ヤマト君は大切に思っていたおもちゃを壊しちゃったの?)
膝の上のヒメが振り返り、首を傾けながら訊ねてきた。
とってもかわいらしい仕草に、僕の心が癒される。
僕はヒメの頭をなでながら、ヤマト君の行動について考えた。
「どうしてなんだろうね」
僕は一人っ子だ。
幼稚園や小学校で、きょうだいケンカをする話を聞くと、どうして仲良くしないんだろうと不思議に思っていた。
家に帰ると、僕の遊び相手は両親だけ。一緒に遊べるきょうだいが家にいたらいいのに、とあこがれたときもあった。
だからケンカせずに、仲良く遊べばいいのに、と思っていた。
弟がいるヤマト君は、ときどき苦しそうな顔をしていた。大切にしているものを弟に取られ、我慢していた。
貸したくないのに貸さないといけない。乱暴に扱われ、壊されても、怒れない。
幼い弟には、扱い方がわからないから。仕方がない、とヤマト君は自分に言い聞かせているように見えた。
溜まりに溜まった不満が、絵を破られたことで爆発した。
爆発先が、自分が大切にしていた、弟にあげたおもちゃだった。
「ヤマト君の優しさ、なのかな」
僕は想像を口に出した。犬たちは黙っている。
「ヤマト君は弟の物じゃなくて、自分があげた物を壊した。元は自分の物だから、ダイチ君に与える傷の深さを考えたとか」
(そんなことをして、ヤマト君の心は痛くないの?)
「ヒメは優しいね。ヤマト君の心を考えてあげられるなんて。きっと、痛いよ。思い出も一緒に壊しちゃったんだもん。だから、直そうと思ったんじゃないかな」
ヒメに伝えることで、びっくりしてフリーズしていた僕の頭の中が整理されていく。
僕の右足に、柔らかくて温かいものがぽんと乗った。コタローの前脚だった。
(ボクね、遊びに夢中になっておもちゃ噛みちぎっちゃったんだ。そしたら取り上げられちゃって、悲しくなったんだけど、宏子お母さんが同じおもちゃを買ってくれたんだよ)
目をきらきらと輝かせて尻尾を振っているコタロー。
「そうだね。きみたちは、全力で遊ぶもんね」
コタローの頭や背をなでながら、犬たちが夢中でおもちゃと遊んでいる姿を思い描いた。
かわいくて、無邪気な姿を想像するだけで、心とともに頬がゆるんだ。
「同じおもちゃを買ってもらったとしても、それはまた違うものなんだよ。ヤマト君は、物も思い出も、大切にする子なんだよ」
(壊しちゃったのに?)
「うん。衝動で壊しちゃった。だけど、直したいっていうことは、反省してるってことじゃないかな。それか後悔か」
本当のところは、ヤマト君にしかわからない。
もしかすると、本人もわからないかもしれない。
だけど捨ててしまわないで、修理を頼んだ。
これからも大切に持っておこう、そういう心があるからだと僕は思う。
ダイチ君にまたねだられたら、どうするんだろうと心配もあるけれど。
「さ、帰ろうか」
犬たちと話している間に、スクリーンは消えていた。
ヒナが膝から降り、僕も立ち上がった。
振り返って歩いていくと、アリサさんのときみたいに虹色が白くなっていく。
まぶしくなって僕は目を閉じた。
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