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第10話 生徒会長と朝チュン、そして…後編
「やっぱりゴワゴワして、暑いわね…」
シュルッ…………パサッ…
「ちょっちょ!?霞!?いきなり何してんの!?」
何故かおもむろにバスローブを脱ぎ捨てた彼女に、俺は焦って目を逸らす。
「なにって?横になるのにこのバスローブはモタつくし暑いから脱いだのよ?」
「いやいやなに『当たり前です』みたいな言い方!?俺もいるんだけど!?」
「知ってるわよ、いいじゃない別に。そもそも私、超薄着派なの。それとも恭介は嫌なのかしら?裸の私…」
いや、眼福です。むしろ素敵です。最高です!でもそういう事じゃなくない!?
「嫌ではない……けどさ!嫌とかそういう問題じゃないだろ!?直視出来なくなっちゃうんだよ!」
「そう、よかった。じゃあ問題無いわね」
「今の聞いてた!?問題あったくない!?」
「もうっ!グダグダと!恭介もこっちきなさい!」
「おいっ!?霞っなにを!?」
彼女は俺の言葉になど耳を貸さず、滑るような動きでベッドと掛け布団の間に潜り込むと迷いなく俺の腕を取りぐっと引き寄せてきた。
そして俺の視界は、一瞬にして彼女の美しい顔で埋め尽くされた。
「「………………」」
急激に縮まった距離に俺は言葉を失う。
ただ、耳元で鳴り響く心臓の鼓動だけがやけに鮮明だった。
彼女はまるで時間が止まったかのように、じっと俺を見つめている。
俺もなぜか目を逸らせず彼女を見つめ返してしまう。ほどなくしてゆっくりと彼女の口が動き出した。
「恭介……もうすぐ、あなたが買ってくれた私の時間。終わっちゃうわね……」
「……」
彼女の表情は真剣そのものだった。そしてどことなく寂しげな声色で話し続ける。
「初めてこういう所に来るのがあなたで良かったわ」
「…………なぁ霞……昨日は、ごめんな」
「……いいのよ、恭介の気持ち。わかってるつもりよ」
「ごめん、ほんとに……」
「大丈夫、私のファーストキスはちゃんと貰ってくれたし」
彼女の言葉に俺の心臓はドクンッと跳ね上がり、心に言葉が突き刺さる。
そうか、俺は彼女のファーストキスを金で買ったんだ…
「霞……やっぱりそうだったのか」
「ええそうよ。あなたが初めての人。意外だった?」
「まあな」
「私、キス上手かったかしら?」
「わからない、でも俺は……その、ドキドキした」
「そう、それなら……他の男も喜んでくれそうね………」
彼女の目から急に光が消えてゆく……そんな気がした。
彼女の表情と言葉が胸に重くのしかかる。心が張り裂けそうなほどに痛い。痛い。イタい。そんな言葉聞きたくない。
「ねぇ恭介。おっぱい揉んでほしいの……」
「お前……急になに…」
「お願い!!………おねがいよ……恭介……」
彼女はいつもの冷静な口調からは想像もつかないほど、感情がむき出しになった声が空気を震わせた。
「霞……?」
切羽詰まったような、ただならぬ彼女の雰囲気に驚いた俺は素直に彼女に従う。
彼女の柔らかな胸にそっと手を当てると、すぐに暖かな彼女の体温が伝わってくる。そしてほんの少し手に力を込めた。
「っ…♡」
彼女の熱い吐息が俺の鼓膜を震わせる。だが、不思議と俺の中に興奮はなかった。
まるで感情だけが抜け落ち、どこか遠い場所へ行ってしまったように。
「恭介、お願い。もう一回……もう一回だけでいいから……キスして…」
何か思い詰めたような表情をする彼女を、俺はただじっと見つめた。
明かりのせいか、昨日よりも鮮明に映る彼女はどこか儚げで、触れたら壊れてしまいそうだ。
俺はその姿に引き寄せられるように、ゆっくりと顔を近づけそっと唇を重ねた。
「「……っん」」
それは、限りなく続くかのような深い口づけだった。互いに舌を絡め、息が尽きるまで求め合う。まるで、ふたりの心も体も溶けてひとつになろうとするかのように。
ふと俺の頬に温かいモノが触れる。
俺は彼女の唇から名残惜しげに唇を離し、頬に残る温もりの正体を探るように彼女を見つめる。そこには一筋の涙を流す彼女の姿があった。
「霞……おまえ……泣いてるのか?」
「ごめんなさい……ちょっと、見ないでくれると嬉しいわ……」
そう言って俺に背を向ける彼女。俺はそんな背中を見つめながら彼女に問いかける。
「お前……なんでこんなことを……」
「だって……だって!!!」
その声は部屋中に響いた。そして堰を切ったように再び感情を吐き出す彼女の肩は、微かに震えていた。
「今日、恭介とのこの時間が終わったら私は見ず知らずの男に買われるの!穢れてしまうの!女から娼婦《しょうふ》に成り下がるのよ!!だからその前に……その前に、あなたとの最後の温かい記憶が欲しかったの……ごめんなさい……ごめんなさい……ううっ」
声を詰まらせながら、彼女は身体を震わせている。
俺は何もわかっていなかった……彼女は不安を見せていないだけで、ずっと辛かったのだ。ただ強がっていただけなんだと…
「霞…………」
俺はそっと彼女の肩に手を添え、優しくこちらに向かせ直し彼女の顔を覗く。
やはり彼女は美しい顔をくしゃくしゃに歪ませ大粒の涙をこぼしていた。
「お前、本当はウリなんてしたくないんだよな?」
「当たり前じゃない!!私は好きな人だけのモノになりたいの!!知らないおじさんなんかに抱かれたくないわよ!!」
「お前は親の借金を返済出来れば、ウリはしないんだよな?」
「そうよ!昨日言ったじゃない!でもどうしようもないのよ……どうにもならないの!!」
「わかった…………」
もう彼女を泣かせたくない。こんな彼女を見たくない。そんな想いが背中を押し、俺は覚悟を決める。深く息を吸い込むとはっきりと聞こえる声で彼女に俺の覚悟の証を告げた。
「お前の親の借金。全部俺が払ってやる」
「……?何言ってるの!?こんな時に冗談なんてやめて!」
当然の反応だろう。でも俺は諦めずもう一度、本気の言葉を彼女にぶつける。
「霞、ちゃんと俺の話聞け!冗談なんかじゃないんだよ!俺は宝くじが当たって金ならあるんだ!だから本当に払ってやれるんだ!!」
「……えっ?」
彼女は驚きのあまりピタッと涙が止まってしまったようだ。そんな彼女に強い口調で言葉を突きつける。
「だからもうウリなんてするな!!俺と約束しろ!!」
「でもっ……なんで私なんかのために…そんなの、貰えないわよ……」
「霞、誰がタダでやるなんて言った?」
彼女の性格ならそんな金、受け取らない事くらいわかってる。だから俺は……
「霞!俺に1日10万、それを365日分……3650万でお前の1年を売ってくれ!!」
俺の放った最高にイカれた提案に、彼女の顔が驚きのあまり硬直している。無理もない。
まるで時間が止まったかのように、沈黙が満ちる。
……………
「…………霞?もしかして……足りな……」
「恭介……本当に、本当にいいの?信じていいの?後悔はしない?そんなお金、下手したら一生手に入らないかもしれないのよ?」
俺の言葉に被せるようにうつむきながら問いかけてくる彼女。
「もちろん、男に二言はない」
「でも……私、そんな価値がある女じゃないかも……」
その言葉に……霞の自虐的な言葉にまた俺の口は勝手に動きだす。
「馬鹿野郎!何言ってんだ!!霞、お前は俺にとって誰より優しくて!誰より美人で!!誰より価値がある女なんだよ!!!」
俺の感情が暴走した支離滅裂な言葉に反応して彼女は顔を上げる。
彼女は泣きながら笑っていた。いままで見たことのない程の素敵な笑顔で。
「ありがとう恭介……わかったわ……私の…私の一年を全部あなたにあげる!!私をあなたのモノにしてください!!」
まるで迷いを振り払うように胸に飛び込んでくる彼女。そして俺をギュッと強く抱きしめながら何かを確かめるように熱い口づけを交わしてくる。
激情のままの彼女の想いに応じながら、俺はもう一つの決意を胸に刻む。
俺はこの一年以内に……霞を買った男じゃなく、彼女の彼氏になってみせる!
この日、俺は生徒会長の1年を買った——
次回:あの夜の出来事——霞SIDE
シュルッ…………パサッ…
「ちょっちょ!?霞!?いきなり何してんの!?」
何故かおもむろにバスローブを脱ぎ捨てた彼女に、俺は焦って目を逸らす。
「なにって?横になるのにこのバスローブはモタつくし暑いから脱いだのよ?」
「いやいやなに『当たり前です』みたいな言い方!?俺もいるんだけど!?」
「知ってるわよ、いいじゃない別に。そもそも私、超薄着派なの。それとも恭介は嫌なのかしら?裸の私…」
いや、眼福です。むしろ素敵です。最高です!でもそういう事じゃなくない!?
「嫌ではない……けどさ!嫌とかそういう問題じゃないだろ!?直視出来なくなっちゃうんだよ!」
「そう、よかった。じゃあ問題無いわね」
「今の聞いてた!?問題あったくない!?」
「もうっ!グダグダと!恭介もこっちきなさい!」
「おいっ!?霞っなにを!?」
彼女は俺の言葉になど耳を貸さず、滑るような動きでベッドと掛け布団の間に潜り込むと迷いなく俺の腕を取りぐっと引き寄せてきた。
そして俺の視界は、一瞬にして彼女の美しい顔で埋め尽くされた。
「「………………」」
急激に縮まった距離に俺は言葉を失う。
ただ、耳元で鳴り響く心臓の鼓動だけがやけに鮮明だった。
彼女はまるで時間が止まったかのように、じっと俺を見つめている。
俺もなぜか目を逸らせず彼女を見つめ返してしまう。ほどなくしてゆっくりと彼女の口が動き出した。
「恭介……もうすぐ、あなたが買ってくれた私の時間。終わっちゃうわね……」
「……」
彼女の表情は真剣そのものだった。そしてどことなく寂しげな声色で話し続ける。
「初めてこういう所に来るのがあなたで良かったわ」
「…………なぁ霞……昨日は、ごめんな」
「……いいのよ、恭介の気持ち。わかってるつもりよ」
「ごめん、ほんとに……」
「大丈夫、私のファーストキスはちゃんと貰ってくれたし」
彼女の言葉に俺の心臓はドクンッと跳ね上がり、心に言葉が突き刺さる。
そうか、俺は彼女のファーストキスを金で買ったんだ…
「霞……やっぱりそうだったのか」
「ええそうよ。あなたが初めての人。意外だった?」
「まあな」
「私、キス上手かったかしら?」
「わからない、でも俺は……その、ドキドキした」
「そう、それなら……他の男も喜んでくれそうね………」
彼女の目から急に光が消えてゆく……そんな気がした。
彼女の表情と言葉が胸に重くのしかかる。心が張り裂けそうなほどに痛い。痛い。イタい。そんな言葉聞きたくない。
「ねぇ恭介。おっぱい揉んでほしいの……」
「お前……急になに…」
「お願い!!………おねがいよ……恭介……」
彼女はいつもの冷静な口調からは想像もつかないほど、感情がむき出しになった声が空気を震わせた。
「霞……?」
切羽詰まったような、ただならぬ彼女の雰囲気に驚いた俺は素直に彼女に従う。
彼女の柔らかな胸にそっと手を当てると、すぐに暖かな彼女の体温が伝わってくる。そしてほんの少し手に力を込めた。
「っ…♡」
彼女の熱い吐息が俺の鼓膜を震わせる。だが、不思議と俺の中に興奮はなかった。
まるで感情だけが抜け落ち、どこか遠い場所へ行ってしまったように。
「恭介、お願い。もう一回……もう一回だけでいいから……キスして…」
何か思い詰めたような表情をする彼女を、俺はただじっと見つめた。
明かりのせいか、昨日よりも鮮明に映る彼女はどこか儚げで、触れたら壊れてしまいそうだ。
俺はその姿に引き寄せられるように、ゆっくりと顔を近づけそっと唇を重ねた。
「「……っん」」
それは、限りなく続くかのような深い口づけだった。互いに舌を絡め、息が尽きるまで求め合う。まるで、ふたりの心も体も溶けてひとつになろうとするかのように。
ふと俺の頬に温かいモノが触れる。
俺は彼女の唇から名残惜しげに唇を離し、頬に残る温もりの正体を探るように彼女を見つめる。そこには一筋の涙を流す彼女の姿があった。
「霞……おまえ……泣いてるのか?」
「ごめんなさい……ちょっと、見ないでくれると嬉しいわ……」
そう言って俺に背を向ける彼女。俺はそんな背中を見つめながら彼女に問いかける。
「お前……なんでこんなことを……」
「だって……だって!!!」
その声は部屋中に響いた。そして堰を切ったように再び感情を吐き出す彼女の肩は、微かに震えていた。
「今日、恭介とのこの時間が終わったら私は見ず知らずの男に買われるの!穢れてしまうの!女から娼婦《しょうふ》に成り下がるのよ!!だからその前に……その前に、あなたとの最後の温かい記憶が欲しかったの……ごめんなさい……ごめんなさい……ううっ」
声を詰まらせながら、彼女は身体を震わせている。
俺は何もわかっていなかった……彼女は不安を見せていないだけで、ずっと辛かったのだ。ただ強がっていただけなんだと…
「霞…………」
俺はそっと彼女の肩に手を添え、優しくこちらに向かせ直し彼女の顔を覗く。
やはり彼女は美しい顔をくしゃくしゃに歪ませ大粒の涙をこぼしていた。
「お前、本当はウリなんてしたくないんだよな?」
「当たり前じゃない!!私は好きな人だけのモノになりたいの!!知らないおじさんなんかに抱かれたくないわよ!!」
「お前は親の借金を返済出来れば、ウリはしないんだよな?」
「そうよ!昨日言ったじゃない!でもどうしようもないのよ……どうにもならないの!!」
「わかった…………」
もう彼女を泣かせたくない。こんな彼女を見たくない。そんな想いが背中を押し、俺は覚悟を決める。深く息を吸い込むとはっきりと聞こえる声で彼女に俺の覚悟の証を告げた。
「お前の親の借金。全部俺が払ってやる」
「……?何言ってるの!?こんな時に冗談なんてやめて!」
当然の反応だろう。でも俺は諦めずもう一度、本気の言葉を彼女にぶつける。
「霞、ちゃんと俺の話聞け!冗談なんかじゃないんだよ!俺は宝くじが当たって金ならあるんだ!だから本当に払ってやれるんだ!!」
「……えっ?」
彼女は驚きのあまりピタッと涙が止まってしまったようだ。そんな彼女に強い口調で言葉を突きつける。
「だからもうウリなんてするな!!俺と約束しろ!!」
「でもっ……なんで私なんかのために…そんなの、貰えないわよ……」
「霞、誰がタダでやるなんて言った?」
彼女の性格ならそんな金、受け取らない事くらいわかってる。だから俺は……
「霞!俺に1日10万、それを365日分……3650万でお前の1年を売ってくれ!!」
俺の放った最高にイカれた提案に、彼女の顔が驚きのあまり硬直している。無理もない。
まるで時間が止まったかのように、沈黙が満ちる。
……………
「…………霞?もしかして……足りな……」
「恭介……本当に、本当にいいの?信じていいの?後悔はしない?そんなお金、下手したら一生手に入らないかもしれないのよ?」
俺の言葉に被せるようにうつむきながら問いかけてくる彼女。
「もちろん、男に二言はない」
「でも……私、そんな価値がある女じゃないかも……」
その言葉に……霞の自虐的な言葉にまた俺の口は勝手に動きだす。
「馬鹿野郎!何言ってんだ!!霞、お前は俺にとって誰より優しくて!誰より美人で!!誰より価値がある女なんだよ!!!」
俺の感情が暴走した支離滅裂な言葉に反応して彼女は顔を上げる。
彼女は泣きながら笑っていた。いままで見たことのない程の素敵な笑顔で。
「ありがとう恭介……わかったわ……私の…私の一年を全部あなたにあげる!!私をあなたのモノにしてください!!」
まるで迷いを振り払うように胸に飛び込んでくる彼女。そして俺をギュッと強く抱きしめながら何かを確かめるように熱い口づけを交わしてくる。
激情のままの彼女の想いに応じながら、俺はもう一つの決意を胸に刻む。
俺はこの一年以内に……霞を買った男じゃなく、彼女の彼氏になってみせる!
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