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第53話 初バイト面接は波乱万丈 霞SIDE——前編
霞SIDE——
今日は7月初旬の土曜日——
朝の光が差し込むたびに思う。『これは夢じゃないよね?』って。
彼と過ごす日々は優しくて、甘くて、時々泣きたくなるほどに幸せ。
こんな毎日がずっと続けばいい……でも私なんかがそれを望んでいいのかなんて思う事もある。
でもそんな幸せの上にずっとあぐらをかいて過ごすわけにはいかない。
恭介から貰った優しさや大きな恩をこれから返していかなければ、いつまで経っても私はズルい自分を許せないし彼と同じ目線で歩むことが出来ないと思う。
だから今日から行動を起こす。それは単純で少し強引だけど効果的な方法。
バイトを始めて稼いだお金を溜めて、彼に私を買ってくれた時に貰ったお金を少しでも返すという方法。
そうすれば彼に買われたという歪な関係を気持ちから絶つことが出来る気がする。
現状はいちおう親の借金問題は一段落つき、それでも余ったお金は大学進学費用に一時的に充てさせて貰おうとも思ってたりと、本当に私を買ってくれた恭介には頭が上がらない……
流石に全額返すというのはあまりにも彼から貰った金額が大きくて一生掛かりそうだけど、それならそれでいいと思えるくらい私は彼と一緒に居たいと思っている。
そう思うとゆくゆくは結婚だって……恭介の妻になって一生を掛けて彼に寄り添うなんて事も……なんてまだまだ早いか……
もちろん彼にはこのことは秘密にしてる。
こんなこと言ったら絶対に私が稼いだお金を受け取ってくれないのはわかっているから、その時が来たら色々方法を考えようと思う。
そしてもう一つ秘密にしていることがある。
それは私がバイトの面接に応募した先が彼の働いているカフェ〔カフェ・セラヴィ〕だということ。
この前たまたまお店のSNSを見た時、バイト募集のポストがあって迷わず私は応募していた。
なぜわざわざそこかっていうと理由は単純明白。
恭介と一緒にいたかったから。彼と一緒に働きたかったから。
重い女と思われるのはわかってる。でも最近の私は、彼が近くに居ないだけで不安で心細くなってしまうようになっていた。もう恭介の隣が私の居場所になりつつある。
まるで幼い頃、お姉ちゃんをずっと追いかけていた時みたいに……
そして今日はいよいよ17時からバイトの面接の日。
少し緊張してしまい早朝に目が覚めてしまった私は、隣で気持ちよさそうに寝てる恭介の横顔を見てつい胸キュンして、ちょっと……いや盛大に襲ってしまった。
そんな甘いひとときのあと、朝ご飯を作って彼を送り出しいつも通り家事や勉強をこなす。でも、やっぱり少しソワソワして落ち着かず気づけば面接の時間が近づいていた。
私は身なりを整え最終チェックを終えると、カフェへ向かうために足早に玄関をくぐった。
————
カフェ・セラヴィは家から歩いて数分ほどの立地。
少し早めに着いた私は予定時刻の5分前になるまで近くで時間を潰し、緊張しながらお店のドアを押し開けた。
店内を見渡すとカウンターの中ではガタイのいい長身の40代くらいの男性と、細身でおっとりした顔立ちのロングヘアの若い女性が手際よく作業をこなしていた。
だがそこに恭介や神山先輩の姿は見当たらない。
私は意を決して近くにいた男性に声をかけた。
「すいません、私本日17時から面接をお願いしている……」
そう名乗ろうとした矢先だった。
そのガタイのよい男性はふっと表情を緩め、笑顔のままカウンターからぐっと身体を乗り出して天井に響くような声で私の言葉をかき消した。
「あっ!!君が柴乃宮霞ちゃん!?いやぁー来てくれて嬉しいよ!!ありがとねぇ!」
「はっ、はい!柴乃宮です……」
あまりの勢いに呆然としていた私をよそに、男性はすごいスピードでカウンターを回り込みあっという間に目の前に立っていた。
そしてまるで何事もなかったかのように満面の笑みで自己紹介をしてくれた。
「僕がこのカフェ・セラヴィの店長兼オーナーの内田真武です!今日は宜しくね!」
「あのっ……内田さん!宜しくお願いします!」
「そんなにかしこまらないで!あと真武《なまぶ》って呼んでくれていいから……って言ってもこんなおじさんには流石に言いにくいよね……まぁ真武さんでもオーナーでも店長でも好きに呼んで!」
近くで見る店長はとにかく大きかった。
恭介よりも高い身長にぶ厚い胸板と太い腕。そして黒髪のベリーショートヘアとかなりイカツい風貌。
恭介から実の叔父と聞いていたが、ある意味イカツさが似ている気がする。
そんな彼がカウンター内で作業している美人な女性に手を振りながら放った一言に私は更に驚愕する。
「愛ちゃん!遂に新しいバイトの子が来てくれたよ!!あっ、あれは僕の妻の愛ちゃん!」
「えっ!?奥様なんですか!?」
つい口をついてそんな言葉が漏れてしまう。
ぱっと見の年の差もさることながら、明らかに真逆の雰囲気のふたりが結婚しているなんて思いもしなかった。
「やっぱり意外だよね…よく美女と野獣カップルって言われるよ!ちなみに彼女とは同い年なんだ!」
「はっ、ははは……」
言葉が出ない。愛想笑いが精一杯だった。
同い年……なんだ……奥さん20代に見える……
そんな私を気にすることもなくオーナーは話を進めてゆく。
「じゃあ早速面接をはじめようか!休憩室で出来ると思うから案内するね!こっちだよ!」
そう言って店の奥へと歩いていくオーナーの背を私はそのまま追いかけた。
やがてオーナーは「STAFF ONLY」と書かれたドアを開き、それに続いて私も静かにその部屋の中へと身を滑り込ませる。
そして私は急に目に飛び込んで来た光景に思わずあっけに取られた。
その部屋の中で神山先輩が恭介の顔面にその大きなおっぱいを押しつけていたから——
次回:初バイト面接は波乱万丈 霞SIDE——後編
今日は7月初旬の土曜日——
朝の光が差し込むたびに思う。『これは夢じゃないよね?』って。
彼と過ごす日々は優しくて、甘くて、時々泣きたくなるほどに幸せ。
こんな毎日がずっと続けばいい……でも私なんかがそれを望んでいいのかなんて思う事もある。
でもそんな幸せの上にずっとあぐらをかいて過ごすわけにはいかない。
恭介から貰った優しさや大きな恩をこれから返していかなければ、いつまで経っても私はズルい自分を許せないし彼と同じ目線で歩むことが出来ないと思う。
だから今日から行動を起こす。それは単純で少し強引だけど効果的な方法。
バイトを始めて稼いだお金を溜めて、彼に私を買ってくれた時に貰ったお金を少しでも返すという方法。
そうすれば彼に買われたという歪な関係を気持ちから絶つことが出来る気がする。
現状はいちおう親の借金問題は一段落つき、それでも余ったお金は大学進学費用に一時的に充てさせて貰おうとも思ってたりと、本当に私を買ってくれた恭介には頭が上がらない……
流石に全額返すというのはあまりにも彼から貰った金額が大きくて一生掛かりそうだけど、それならそれでいいと思えるくらい私は彼と一緒に居たいと思っている。
そう思うとゆくゆくは結婚だって……恭介の妻になって一生を掛けて彼に寄り添うなんて事も……なんてまだまだ早いか……
もちろん彼にはこのことは秘密にしてる。
こんなこと言ったら絶対に私が稼いだお金を受け取ってくれないのはわかっているから、その時が来たら色々方法を考えようと思う。
そしてもう一つ秘密にしていることがある。
それは私がバイトの面接に応募した先が彼の働いているカフェ〔カフェ・セラヴィ〕だということ。
この前たまたまお店のSNSを見た時、バイト募集のポストがあって迷わず私は応募していた。
なぜわざわざそこかっていうと理由は単純明白。
恭介と一緒にいたかったから。彼と一緒に働きたかったから。
重い女と思われるのはわかってる。でも最近の私は、彼が近くに居ないだけで不安で心細くなってしまうようになっていた。もう恭介の隣が私の居場所になりつつある。
まるで幼い頃、お姉ちゃんをずっと追いかけていた時みたいに……
そして今日はいよいよ17時からバイトの面接の日。
少し緊張してしまい早朝に目が覚めてしまった私は、隣で気持ちよさそうに寝てる恭介の横顔を見てつい胸キュンして、ちょっと……いや盛大に襲ってしまった。
そんな甘いひとときのあと、朝ご飯を作って彼を送り出しいつも通り家事や勉強をこなす。でも、やっぱり少しソワソワして落ち着かず気づけば面接の時間が近づいていた。
私は身なりを整え最終チェックを終えると、カフェへ向かうために足早に玄関をくぐった。
————
カフェ・セラヴィは家から歩いて数分ほどの立地。
少し早めに着いた私は予定時刻の5分前になるまで近くで時間を潰し、緊張しながらお店のドアを押し開けた。
店内を見渡すとカウンターの中ではガタイのいい長身の40代くらいの男性と、細身でおっとりした顔立ちのロングヘアの若い女性が手際よく作業をこなしていた。
だがそこに恭介や神山先輩の姿は見当たらない。
私は意を決して近くにいた男性に声をかけた。
「すいません、私本日17時から面接をお願いしている……」
そう名乗ろうとした矢先だった。
そのガタイのよい男性はふっと表情を緩め、笑顔のままカウンターからぐっと身体を乗り出して天井に響くような声で私の言葉をかき消した。
「あっ!!君が柴乃宮霞ちゃん!?いやぁー来てくれて嬉しいよ!!ありがとねぇ!」
「はっ、はい!柴乃宮です……」
あまりの勢いに呆然としていた私をよそに、男性はすごいスピードでカウンターを回り込みあっという間に目の前に立っていた。
そしてまるで何事もなかったかのように満面の笑みで自己紹介をしてくれた。
「僕がこのカフェ・セラヴィの店長兼オーナーの内田真武です!今日は宜しくね!」
「あのっ……内田さん!宜しくお願いします!」
「そんなにかしこまらないで!あと真武《なまぶ》って呼んでくれていいから……って言ってもこんなおじさんには流石に言いにくいよね……まぁ真武さんでもオーナーでも店長でも好きに呼んで!」
近くで見る店長はとにかく大きかった。
恭介よりも高い身長にぶ厚い胸板と太い腕。そして黒髪のベリーショートヘアとかなりイカツい風貌。
恭介から実の叔父と聞いていたが、ある意味イカツさが似ている気がする。
そんな彼がカウンター内で作業している美人な女性に手を振りながら放った一言に私は更に驚愕する。
「愛ちゃん!遂に新しいバイトの子が来てくれたよ!!あっ、あれは僕の妻の愛ちゃん!」
「えっ!?奥様なんですか!?」
つい口をついてそんな言葉が漏れてしまう。
ぱっと見の年の差もさることながら、明らかに真逆の雰囲気のふたりが結婚しているなんて思いもしなかった。
「やっぱり意外だよね…よく美女と野獣カップルって言われるよ!ちなみに彼女とは同い年なんだ!」
「はっ、ははは……」
言葉が出ない。愛想笑いが精一杯だった。
同い年……なんだ……奥さん20代に見える……
そんな私を気にすることもなくオーナーは話を進めてゆく。
「じゃあ早速面接をはじめようか!休憩室で出来ると思うから案内するね!こっちだよ!」
そう言って店の奥へと歩いていくオーナーの背を私はそのまま追いかけた。
やがてオーナーは「STAFF ONLY」と書かれたドアを開き、それに続いて私も静かにその部屋の中へと身を滑り込ませる。
そして私は急に目に飛び込んで来た光景に思わずあっけに取られた。
その部屋の中で神山先輩が恭介の顔面にその大きなおっぱいを押しつけていたから——
次回:初バイト面接は波乱万丈 霞SIDE——後編
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