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第6章 それぞれの夢へ向かって
第109話 イチャつく2人
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電車から降り、散歩がてら、いつもとは違う道のりで自宅へ向かった。
道路脇のイチョウの黄葉が綺麗だ。
ふと、ある場所で立ち止まった。
「あ、ここって……」
車が激しく往来する交差点近く。
ここは昔、貴臣が事故に遭った場所だ。
骨折と全身打撲だから、それなりに痛かったはずだ。
隣にいる貴臣に訊いてみた。
「撥ねられた瞬間さ、あ、もう死ぬかもとか思った?」
「それが、正直覚えてないんです。気付いた時にはもう、そこに寝転がっていて、周りに人だかりができていて。真っ青な空が良く見えて、流れる巻雲を綺麗だなぁと思いながら見ていました」
貴臣は信号機の横を指差しながら苦笑った。
死と直面する瞬間は走馬灯とか見えるって言うけど、あれは本当なのかな。とにかく、後遺症も残らずに元気でいてくれて良かった。
貴臣は俺に意味深な目を向けてくる。
「寝転がりながら、兄さんのことを考えたりもしましたよ」
「え、マジで?」
あの頃は毛嫌いされていたので、俺のことなんて頭の隅にもないと思っていたのに、そう聞いて嬉しくなる。
「はい。兄さんにこのことを伝えるの面倒だなって」
「えっ」
いい意味ではなかったので少々落ち込むが。
「予想では、翌日に母親に連れられて『お前、大丈夫かよ』と言って困ったように笑うだろうなと思っていたんです。だからまさか、病院へすぐに来てくれるだなんて思いもしませんでした」
その時のことを言われると、やはり気恥ずかしくなる。
あんなに泣かれて、と言われてしまう前に俺は口を開いた。
「嬉しかったろ。俺が来て」
わざとそんな風に言うと、貴臣は素直に「はい」と答えた。
「嬉しかったです。それに加えて申し訳なかったと。今までの自分は馬鹿だったとも思いましたよ」
「ふふ。じゃあやっぱり事故のお陰だな、俺たちが仲良くなれたのは。なかったらどうなってたんだろ」
「そうですね…。けれど俺は、例え事故がなかったとしても、遅かれ早かれ兄さんを好きになっていたと思いますよ」
くすぐったい気持ちになる。
この世には自分にとって絶対的な運命の人がいると何かで読んだ時、心の底からはまったく信じてなかったけど。
今は信じられる。
きっと見えない赤い糸が繋がっていたんだ。
「……そうかなぁ」
「えぇ。兄さんはきっと俺を諦めなかったと思いますよ。それにもういいじゃないですか。こうしてお互い、想い合えることができたんですから」
「貴臣」
その熱い眼差しに見惚れて、俺もボーッと貴臣を見つめ返す。
そんな俺たちの間に、ヌッと体を入れてきたのは秋くんだった。
「いちゃつくのは2人でいる時だけにしてよねー」
おでこをゴリゴリと擦られながら言われ「すいません」と謝った。
秋くんは1人で歩きだしたので、俺と貴臣は後を着いていく。
「あーあ。俺も早く誰かとイチャイチャしたいなー」
「焦らなくても大丈夫だよ。秋くんはきっと、誰かの1番になれるよ」
軽く言ったけれど、俺の本音だ。
心の拠り所になる人を焦らずに見つけて欲しいし、幸せになってほしい。
笑って、みんなで中田家へ向かった。
カフェから出て、大型書店や駅ナカを散策した後に秋くんはまた自ら『父さんにも会いたい』と言ってくれたのだ。
母さんに『やっぱり今日行くよ』と連絡すると、大急ぎでご飯を作ってくれるとのことだった。
自宅に到着すると、すぐに父さんが出てきてくれた。
「久しぶりだね、秋臣。大きくなったな」
「……うん。お父さんも元気にしてた?」
久々の親子の再会。
エプロンを付けた母さんも、笑って出迎えてくれた。
柔らかな空気がずっと流れていた。
道路脇のイチョウの黄葉が綺麗だ。
ふと、ある場所で立ち止まった。
「あ、ここって……」
車が激しく往来する交差点近く。
ここは昔、貴臣が事故に遭った場所だ。
骨折と全身打撲だから、それなりに痛かったはずだ。
隣にいる貴臣に訊いてみた。
「撥ねられた瞬間さ、あ、もう死ぬかもとか思った?」
「それが、正直覚えてないんです。気付いた時にはもう、そこに寝転がっていて、周りに人だかりができていて。真っ青な空が良く見えて、流れる巻雲を綺麗だなぁと思いながら見ていました」
貴臣は信号機の横を指差しながら苦笑った。
死と直面する瞬間は走馬灯とか見えるって言うけど、あれは本当なのかな。とにかく、後遺症も残らずに元気でいてくれて良かった。
貴臣は俺に意味深な目を向けてくる。
「寝転がりながら、兄さんのことを考えたりもしましたよ」
「え、マジで?」
あの頃は毛嫌いされていたので、俺のことなんて頭の隅にもないと思っていたのに、そう聞いて嬉しくなる。
「はい。兄さんにこのことを伝えるの面倒だなって」
「えっ」
いい意味ではなかったので少々落ち込むが。
「予想では、翌日に母親に連れられて『お前、大丈夫かよ』と言って困ったように笑うだろうなと思っていたんです。だからまさか、病院へすぐに来てくれるだなんて思いもしませんでした」
その時のことを言われると、やはり気恥ずかしくなる。
あんなに泣かれて、と言われてしまう前に俺は口を開いた。
「嬉しかったろ。俺が来て」
わざとそんな風に言うと、貴臣は素直に「はい」と答えた。
「嬉しかったです。それに加えて申し訳なかったと。今までの自分は馬鹿だったとも思いましたよ」
「ふふ。じゃあやっぱり事故のお陰だな、俺たちが仲良くなれたのは。なかったらどうなってたんだろ」
「そうですね…。けれど俺は、例え事故がなかったとしても、遅かれ早かれ兄さんを好きになっていたと思いますよ」
くすぐったい気持ちになる。
この世には自分にとって絶対的な運命の人がいると何かで読んだ時、心の底からはまったく信じてなかったけど。
今は信じられる。
きっと見えない赤い糸が繋がっていたんだ。
「……そうかなぁ」
「えぇ。兄さんはきっと俺を諦めなかったと思いますよ。それにもういいじゃないですか。こうしてお互い、想い合えることができたんですから」
「貴臣」
その熱い眼差しに見惚れて、俺もボーッと貴臣を見つめ返す。
そんな俺たちの間に、ヌッと体を入れてきたのは秋くんだった。
「いちゃつくのは2人でいる時だけにしてよねー」
おでこをゴリゴリと擦られながら言われ「すいません」と謝った。
秋くんは1人で歩きだしたので、俺と貴臣は後を着いていく。
「あーあ。俺も早く誰かとイチャイチャしたいなー」
「焦らなくても大丈夫だよ。秋くんはきっと、誰かの1番になれるよ」
軽く言ったけれど、俺の本音だ。
心の拠り所になる人を焦らずに見つけて欲しいし、幸せになってほしい。
笑って、みんなで中田家へ向かった。
カフェから出て、大型書店や駅ナカを散策した後に秋くんはまた自ら『父さんにも会いたい』と言ってくれたのだ。
母さんに『やっぱり今日行くよ』と連絡すると、大急ぎでご飯を作ってくれるとのことだった。
自宅に到着すると、すぐに父さんが出てきてくれた。
「久しぶりだね、秋臣。大きくなったな」
「……うん。お父さんも元気にしてた?」
久々の親子の再会。
エプロンを付けた母さんも、笑って出迎えてくれた。
柔らかな空気がずっと流れていた。
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