庶民の俺が金持ちグループに入ったら、完璧な御曹司になぜか異常に懐かれた【目線の先には。一織×千尋編】

綾波絢斗

文字の大きさ
17 / 101

17 食事のひと時

しおりを挟む
一織が向かったキッチンは、島型の大きなカウンターがあり、最新鋭の調理器具がずらりと並んでいた。
俺がいつも寮で使う、小さな流し台と一口コンロとは大違いだ。

「何作る?俺、手伝うよ。」
 そう伝えるも、一織は冷蔵庫を開けながら静かに答えた。

「大丈夫。座ってて。」

冷蔵庫の中は、まるで高級レストランの仕入れ倉庫のようだった。
今日、百貨店の高級スーパーで俺たちが買った鯛やローストビーフ用の肉のほかに、見たこともないほど新鮮な食材が綺麗に並んでいる。

一織は迷いなく、今日の買い物で買った食材と、自宅の冷蔵庫にあった新鮮な野菜を取り出した。そして、アクアパッツァに使う予定だった鯛を手に取り、手際よく鱗(うろこ)を取り始める。

「え、一織、魚おろせるの?」 俺が驚いて聞くと、一織は淡々とした声で答えた。
「うん。」

キッチンからは、ニンニクとハーブ、オリーブオイルの香りが広がり始めた。 

「うまそぉ~。」

覗き込む俺の顔を見て、一織がクスリと笑った。料理をしながら、一織は俺に色んな質問をしてくる。
家族のこと、弟のこと、そして将来どの分野に進むのかまで。
一織が俺に色々聞いてくることが妙に嬉しい。一織とゆっくりと会話をしたのは初めてかもしれない。

料理をしている一織の姿をずっと見ていても飽きない。
使っている香辛料や、買ったことの野菜の話もした。

「できた。」

一織がカウンターに置いた皿の上には、ふっくらと焼き上がった鯛と、色とりどりの貝や野菜が乗ったアクアパッツァがあった。

「すごっ。お店のみたい。一織、早く食べたい!」
 俺が素直な感想を伝えると、一織は少し嬉しそうに目を細めた。

「そう言えば、どうして俺の料理だけなんで食べられるの?」
 俺は意を決して尋ねた。

一織はフォークを置いて、俺の目を真っ直ぐに見つめた。 
「…千尋の料理は、優しくて、変なものが何も入ってないから。」

「変なもの?」

「うん。小さいとき色々あって。俺、そういうのが、人より敏感にわかる。」
 一織は静かに告げた。 

俺にはわからない、何かがあったんだと感じた。

一織は再びフォークを手に取り、アクアパッツァを口に運んだ。 
「千尋は、俺の不安を消してくれる。」

「…ふーん。」 俺は照れ隠しに目を逸らしながら言った。 
「じゃあ、俺がいないと、一織は飯に困るってことか。」

一織は黙って頷いた。
その無言の頷きは、今朝の「お腹すいた」とねだる姿と同じ、大型犬のような素直さを感じさせた。

その時、ピーンポーンとインターフォンの音が鳴った。

誰か来た?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。

或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。 自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい! そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。 瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。 圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって…… ̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶ 【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ 番外編、牛歩更新です🙇‍♀️ ※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。 少しですが百合要素があります。 ☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました! 第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談?本気?二人の結末は? 美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。 ※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。

おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを成り行きで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。 ✻✻✻ 2026/01/10 『1.出会い』を分割し、後半部分を『2.引き取ります。』として公開しました。

僕、天使に転生したようです!

神代天音
BL
 トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。  天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。

処理中です...