庶民の俺が金持ちグループに入ったら、完璧な御曹司になぜか異常に懐かれた【目線の先には。一織×千尋編】

綾波絢斗

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「……ちょ、ちょっと待って」
俺は一歩、後ろに下がった。

「一織、そういうの急すぎ。好きとか、帰る場所とか……そんなの、いきなり言われても」
一織の真剣な気持ちを受け止められない自分がいる。

でも同時に嬉しい気持ちもあって…。

どうしていいかわからないでいたら、一織はただ、距離を詰めないまま、静かに俺を見る。

「逃げてる?」
低い声。責める感じはない。

「逃げてない。ただ……」
「ただ?」

「俺、よくわかんないんだよ。一織が俺に何を期待してるのかも。俺が一織の隣にいていいのかも」

そう言った瞬間、一織の顔が近づく。

「千尋が決めるのは一つだけ。俺のそばにいたいかどうか」

背中が壁に当たる。あ、これ、逃げ場ないやつ。

「答えは今じゃなくていい。でも――」

一織は俺の逃げ腰を見逃さない。

「嫌なら、ちゃんとそう言って。千尋の嫌がることはしない。」

……ずるい。
そんな言い方。嫌じゃないってわかってるくせに。

「……一織、ずるい」
「知ってる」

そのまま一織の顔が近づいてきた…
あっ…これって…キスされ…

その瞬間――

「おーい、お二人さーん」

間の抜けた声。

「いたいた。一織、急に飛び出していくし、探したぞ。ランチ冷めるぞ。」

「「……陸」」

一織の低い声と、俺のかぶり気味の声が重なる。

「あっ…ごめ…邪魔した?いい雰囲気だった?なになに~?付き合った感じ?」
茶化してくるけれど俺たちを見てそこまでじゃないことを察した陸。

「あれ?マジで?まだだった?」

「陸」
低い一織の声が響く。

「はい黙ります」
一瞬で黙る陸。

でも、俺の顔を見てニヤッとする。

「千尋、顔赤い」
「うるさい」

「一織は独占欲強いからな~。これはあれだな」
肩をすくめて、軽く言う。

「もう時間の問題だな」

「陸」
低い一織の声が響く。

「はいはい、俺、消えるわ。ランチ冷めるから早く来いよ。」

そう言いながらも、去り際に一言。

「千尋、ゼミ行く前に話した気持ち、ちゃんと伝えろよー」

……余計なこと言うな。

陸がいなくなって、また静かになる。

さっきより、ずっと近い距離で、一織が俺を見ていた。

「何話してたの?」
そう聞かれて、俺は、言葉に詰まった。
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