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32 確信
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一織には「ちょっと陸のところに行く」と言って、湊の部屋に来た。
陸と海斗は、まだ帰ってきていないみたいだ。
同じ寮の部屋なのに、なんだかいい香りがする…。
「そこ座って。コーヒー飲む?」
「…ありがとう」
ソファに腰を下ろすと、ふっと肩の力が抜けた。
「で」
湊が向かいに座る。
「何があった?」
直球すぎて、少し笑ってしまった。
「そんな顔してた?」
「してた。逃げた顔」
…やっぱり。湊にはバレていた。
「一織のこと?」
「…うん。陸から聞いた?」
「少しだけ。告白された?」
「…された」
「そっか」
驚くでもなく、静かにコーヒーを渡してきた。
「どう思った?」
どう、って。湊のその質問に、少し焦る。
「びっくりした」
「それだけ?それだけじゃないでしょ?」
図星だった。
「…すごく、嬉しかった」
口に出した瞬間、胸がきゅっとする。
「好きって言われて、帰る場所だって言われて…俺、特別なのかなって」
湊は、何も言わずに聞いている。
「でもさ」
俺は視線を落とした。
「一織って、全部持ってるじゃん。金も、頭も、将来も。俺なんかが隣にいたら、釣り合わないって思う」
「そっか。」
湊の声は、相変わらず穏やかだ。
「だから…逃げた。なんか咄嗟に、俺、渾身のかわいさで誤魔化した」
苦笑いすると、湊も少しだけ笑った。
「千尋らしい」
「らしいって言うな」
少しの沈黙。でも、穏やかな時間が流れる。
「じゃあさ」
湊が、ふっと言う。
「一織が全部持ってなかったら、どう?」
「え?」
「普通の家で、普通の将来で。それでも、同じこと言われたら?」
考えるまでもなかった。
「…それでも、嬉しい」
湊が、少し目を細める。
「じゃあさ。釣り合うとか、条件とか抜きにして。一織が他の誰かと一緒にいたら、どう思う?」
「誰かと…。」
胸の奥が、ずん、と重くなった。
「…嫌だ」
声が小さくなる。
「俺が、そばにいたい。帰る場所って言われたの、俺以外の人になるの嫌だ」
言い切った瞬間、気づいた。
あ、これ。
考えないふりしてたけど。
「…俺。一織のこと、好き…」
言葉にした途端、世界が少し静かになる。
湊は、やっぱり優しく笑った。
「やっと言えたね」
「…うるさい」
「でもさ」
湊は立ち上がって、俺の頭を軽くぽんぽんした。
「好きだって気づいたなら、次は、逃げないで。逃げてたら、いろんな勘違いをして、相手の気持ちもわからなくなるから」
その言葉が、胸に残った。
「湊はさ、どうして…そんなに…」
俺が問いかけたタイミングで、ドアが開く。陸が戻ってきた。
「話、終わった?」
「うん。ちょうどね」
湊は陸に、優しく声をかける。
自然に、陸は湊の隣に座り、手を握った。
「あっ…」
俺はそれを見て、思わず声を出した。
「そーいうこと。ようやく思いが伝わったんだ。ずっとすれ違ってたから。俺ら」
陸は、愛おしそうに湊を見つめる。
「もっと、素直になってればよかったって、今は思うんだ。だから千尋には、逃げないでほしい」
湊は、陸の肩に頭を寄せながら話した。
お互いを大切に思い合ってる2人がそこにはいた。
「…ありがとう、湊、陸」
俺は、ゆっくり立ち上がる。
「どういたしまして」
「何かあったら、すぐ言えよ。俺ら、友達だろ」
優しい湊と、頼りになる陸。
「うん。」
そう言って俺は、一織のいる部屋に向かう。
一織の目。
一織の声。
一織の腕。
一織の「好き」。
…俺、ちゃんと伝えなきゃ。
陸と海斗は、まだ帰ってきていないみたいだ。
同じ寮の部屋なのに、なんだかいい香りがする…。
「そこ座って。コーヒー飲む?」
「…ありがとう」
ソファに腰を下ろすと、ふっと肩の力が抜けた。
「で」
湊が向かいに座る。
「何があった?」
直球すぎて、少し笑ってしまった。
「そんな顔してた?」
「してた。逃げた顔」
…やっぱり。湊にはバレていた。
「一織のこと?」
「…うん。陸から聞いた?」
「少しだけ。告白された?」
「…された」
「そっか」
驚くでもなく、静かにコーヒーを渡してきた。
「どう思った?」
どう、って。湊のその質問に、少し焦る。
「びっくりした」
「それだけ?それだけじゃないでしょ?」
図星だった。
「…すごく、嬉しかった」
口に出した瞬間、胸がきゅっとする。
「好きって言われて、帰る場所だって言われて…俺、特別なのかなって」
湊は、何も言わずに聞いている。
「でもさ」
俺は視線を落とした。
「一織って、全部持ってるじゃん。金も、頭も、将来も。俺なんかが隣にいたら、釣り合わないって思う」
「そっか。」
湊の声は、相変わらず穏やかだ。
「だから…逃げた。なんか咄嗟に、俺、渾身のかわいさで誤魔化した」
苦笑いすると、湊も少しだけ笑った。
「千尋らしい」
「らしいって言うな」
少しの沈黙。でも、穏やかな時間が流れる。
「じゃあさ」
湊が、ふっと言う。
「一織が全部持ってなかったら、どう?」
「え?」
「普通の家で、普通の将来で。それでも、同じこと言われたら?」
考えるまでもなかった。
「…それでも、嬉しい」
湊が、少し目を細める。
「じゃあさ。釣り合うとか、条件とか抜きにして。一織が他の誰かと一緒にいたら、どう思う?」
「誰かと…。」
胸の奥が、ずん、と重くなった。
「…嫌だ」
声が小さくなる。
「俺が、そばにいたい。帰る場所って言われたの、俺以外の人になるの嫌だ」
言い切った瞬間、気づいた。
あ、これ。
考えないふりしてたけど。
「…俺。一織のこと、好き…」
言葉にした途端、世界が少し静かになる。
湊は、やっぱり優しく笑った。
「やっと言えたね」
「…うるさい」
「でもさ」
湊は立ち上がって、俺の頭を軽くぽんぽんした。
「好きだって気づいたなら、次は、逃げないで。逃げてたら、いろんな勘違いをして、相手の気持ちもわからなくなるから」
その言葉が、胸に残った。
「湊はさ、どうして…そんなに…」
俺が問いかけたタイミングで、ドアが開く。陸が戻ってきた。
「話、終わった?」
「うん。ちょうどね」
湊は陸に、優しく声をかける。
自然に、陸は湊の隣に座り、手を握った。
「あっ…」
俺はそれを見て、思わず声を出した。
「そーいうこと。ようやく思いが伝わったんだ。ずっとすれ違ってたから。俺ら」
陸は、愛おしそうに湊を見つめる。
「もっと、素直になってればよかったって、今は思うんだ。だから千尋には、逃げないでほしい」
湊は、陸の肩に頭を寄せながら話した。
お互いを大切に思い合ってる2人がそこにはいた。
「…ありがとう、湊、陸」
俺は、ゆっくり立ち上がる。
「どういたしまして」
「何かあったら、すぐ言えよ。俺ら、友達だろ」
優しい湊と、頼りになる陸。
「うん。」
そう言って俺は、一織のいる部屋に向かう。
一織の目。
一織の声。
一織の腕。
一織の「好き」。
…俺、ちゃんと伝えなきゃ。
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