庶民の俺が金持ちグループに入ったら、完璧な御曹司になぜか異常に懐かれた【目線の先には。一織×千尋編】

綾波絢斗

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83 グラスハウス

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行先は会社ではないらしく、俺は家で留守番になった。

一通り、一織が家の説明をしてくれる。
ってか、家でかくね?庭、広くね?
プールあんの?

は?
俺、迷子になる自信があるんだけど…。

「セキュリティはしっかりしてるから安心して。あと、キッチンとかは全部日本製にそろえてあるから、使い方は同じ」

うん‥‥それはありがたいけど、冷蔵庫でかくね?業務用?

「あっ」
冷蔵庫を開けて中を見て驚き、一織を見た。

「うん。日本で食べてるものはそろえてあるから」
至れり尽くせりだ。

「ありがと。俺のためだよね」
「ん?そんなの当たり前のことだよ。俺のわがままに付き合ってもらってるんだから」
一織はそう言って、俺の頬にキスをする。

「離れたくない。せっかく一緒にいられると思っていたのに」
一織がギュッと抱きしめながら、拗ねている。

俺は一織の頭を撫でながら、
「待ってるから。頑張ってこい。俺、家の中探検してもいい?入っちゃダメなところとかある?」

「ないよ。どこでも見ていいし、使って。管理のスタッフの人は今日は来ないはずだから。あっ、あと、見たいって話してた、明日のフォーラムの各企業の資料も揃えてあるから」

「わかった。外に一人では行かない方がいい?」
「そうだね。俺が案内するから。今日は我慢して」
「ん。わかった」

一織は俺にキスを落とす。俺と離れたくないってわかるキス。

でも…俺は唇を離す。

「一織。もう、時間だろ。早く行け」
「…わかった」

名残惜しそうな一織を半ば強引に出発させた。

さてと。
家の中、見てみよ。
トイレとかバスルーム、何個もあるんだよな。きっと。

映画の世界みたいだ。
俺は家のドアというドアを開けて、見て回った。

ふと窓を見ると、庭にグラスハウスを見つけた。
何か、育ててるのかな。

花とか植物とか詳しくないけど…見に行ってみよ。
庭に出て、グラスハウスのドアを開ける。

「うわぁ。すごい」
そこには、見たこともない植物でいっぱいだった。

スマホでその植物をかざしながら、名前を確認していった。

「えーっと。これが、ヒスイカズラ‥‥うわっ。何これ?タッカ・シャントリエリ?別名ブラックキャットとバットフラワー。ほんとだ。確かにコウモリみたい」

「えっと。これは…」

「月下美人だよ」

後ろから突然声がして、驚いて体がビクッとなった。
慌てて振り向くと、物腰が柔らかそうなおじいさんが立っていた。

「勝手に入ってすみません!!」

「大丈夫ですよ。植物に興味があるのかな?」
「いえ…全然わからなくて。でも、見たことない植物がたくさんあったので、名前を知りたくて」

「お邪魔でしたよね。すみません。すぐ出ます」
「いやいや。大丈夫。ゆっくり見ていきなさい」

優しい笑顔のおじいさんに安心する。
ここの手入れをしているスタッフの方かな。

「部屋に飾る花を少し持っていくなら、一緒に回ろうか」
少し迷ったけど、時間もあるし、お誘いを受けることにした。

おじいさんとふたりでグラスハウスを歩いていて、思い出した…。
一織はスタッフは今日は来ないって言ってたことを…。

‥‥どうしよう。
もしかして、怪しい人…。

「あっ…あの。今日は友達から誰もいないって聞いていたんですけど…」
「今日は来ない予定だったんだけど、月下美人の花が咲きそうだったから見に来たんですよ」
おじいさんは迷いなく答えてくれた。

「月下美人?さっきの?」
「そう、一晩しか咲かない花なんです。今夜かなと思い、心配で。」

「一晩!?」
「夜半に咲くから、今日の夜、見に来たらいいですよ」

「おじいさんは見なくていいんですか?」
「私は大丈夫。お友達と見れるといいですね」

一織、今日は夜には帰ってくるかな。

「はい。一緒に見たいんですけど…夜帰ってくるかわからなくて…。でも、僕はひとりでも見に来ます!」
夜の楽しみができた。

「あっ。お腹すいていませんか?僕の料理でよかったら作ります」
「いえいえ、そんな悪いです」
「月下美人のこと教えてもらえたので!僕、作ってきます!」

そう言って俺は、キッチンに向かった。

日本食でいいかな…。

何が好きかとかわからなくて、
おにぎりとお味噌汁、卵焼きとサラダを作って、庭にあるテラスに持って行った。

家を探検する前に、ご飯炊いておいてよかった。

「ごはん作るって言ったけど、そんな大したもの作れなくて…すみません」
「いえいえ、とってもおいしそうですね。‥‥あっ」
「あっ。何か苦手なものがありましたか??」
「ニンジンと、トマトが…」
「え?おじいさんも苦手なんですか!?」
「も?」
「僕の友達も苦手なんです。でも、僕が作ったものは食べてくれるようになって…。サラダは僕が食べますね!」

そう言って、二人でおにぎりを食べた
初めて会ったのに、おじいさんの雰囲気がすごく心地よかった。

食べ終わったあと、おじいさんは部屋に飾る花も見繕ってくれ、帰って行った。
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