庶民の俺が金持ちグループに入ったら、完璧な御曹司になぜか異常に懐かれた【目線の先には。一織×千尋編】

綾波絢斗

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外に出るタイミングで、バイクが止まった。

「陸!」
「急いで!」

差し出されたヘルメットを受け取り、俺は無言で頷いた。

エンジン音が夜を切り裂く。
何かを巻くように、狭い路地を縫いながら目的地に向かう感じだ。

どれくらい走ったのかは覚えていないけれど、気づけばホテルの前で停まり、陸はカードキーを渡した。

「じゃ、明日な。」
「え、ちょっ」

陸は足早に去っていった。

取り残された俺は、ホテルの自動ドアをくぐった。
エレベーターにキーをかざすと、その階まで連れていってくれる仕組みらしい。

そして、指定された部屋の前に立った。

ドアを開ける。部屋は明るい。

誰かいる??

「千尋。久しぶり。」
そう答えたのは海斗だった。

「海斗!!」
この間、一瞬しか会えなかったから、ちゃんと話すのは久しぶりだ。

「色々大変だったな。」
海斗が慰めるように言ってくれる。

「ん。でも、仕方ないかなって思う部分もあるし…」
その一言で、少し泣きそうになる。

「これに着替えて。今から蓮が来るから、入れ替わりでこの部屋に行け。明かりはつけずに、一番奥の部屋で静かにしてろ。」

「え??」
「とりあえず、急げ。」

「うん。」

俺は急いで着替えた。
海斗ともっと話したいし、一織のことも聞きたいのに…

着替え終えた瞬間、深山さんが部屋に入って来た。

「千尋くん。時間がありません。移動してください。」
「は、はい。」

「頑張れよ!」
海斗の声を背に、俺は廊下に出た。

そして、指定された部屋に入る。

暗いし…
誰もいない…
どうしたらいいんだろ…。

スマホの明かりを頼りに、一番奥の部屋まで行った。
よくわからないから、おとなしくソファに座る。

すると、入口の方で話し声が聞こえた。

「午後、迎えに来る。」
「千歳、明日は湊たちと行く。さっきの連絡も聞いてたんだろ?」
「でも…」
「お前の言う通りにしてるだろ。これ以上付きまとうな。」
「わかった。明日、会場で。」

カチャ。

ドアが開いた。
そして明かりがついた。

「え…千尋。」

心底驚いた一織の顔。
そんな顔を初めて見て、思わず笑ってしまった。

「ははっ。なんて顔…」

言い終わる前に引き寄せられた。
強く抱き締められて、そのまま唇を塞がれた。

「まっ…」

待ってって言う暇もないくらい続くキス。

会えなかった切なさと時間が、息ができないくらいに一織の想いとなって流れ込んでくる。

俺も、その想いに応えた。

そして、ようやく唇が離れた時、

「…会いたかった。」

一織の低い声が聞こえた。
少し、掠れている一織の声。
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