庶民の俺が金持ちグループに入ったら、完璧な御曹司になぜか異常に懐かれた【目線の先には。一織×千尋編】

綾波絢斗

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103 大丈夫?

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「届かなかった?」
「そうじゃなくて……アンティークのお店のオーナーから渡されたよ。」
「えっ。」

「あと、これ。」
「……パライバトルマリン」

「うん。オーナーが“大切な人につけてあげて”って、プレゼントしてくれたんだ。」

「……千尋さ。何してた?」

その声が、ほんの少しだけ低くなる。

「もう! この話をしたかったのに、一織がいろんなことしてくるから全然話せなかったんだよ!」

そう言って俺は、ここ数日あった出来事を話した。

グラスハウスで出会ったこと。
一織と連絡が取れなくて、月下美人をひとりで見ていたこと。
そこからお店に連れて行ってもらって、オーナーと話して、手伝いまでさせてもらったこと。

数日間だったけど、すごく楽しかったこと。

「え? 千尋がコーヒー淹れたの?」

「うん。そうだよ? あっ、あとさ。お客さんが来るでしょ? 俺にも名刺を渡してくれる人たちがいて……」

そこまで言った瞬間、一織が小さく笑った。

「ははっ。千尋。やっぱ、すごいわ。」
「何? 何が? ねぇ? どうして笑うんだよ。」

「いや。もう、千尋。俺たちは大丈夫だよ。」

頬にキスが落ちる。

でもその手は、さっきより少しだけ強く俺の腰を引き寄せていた。

「どういう意味?」

「ん? 明日になればわかる。」

軽い調子なのに、どこか確認するみたいに俺を見ている。

「オーナーってどんな人だった?」
「ん~。なんか、いろんなことを見据えている感じ? 奥が深くて……でも、すごいやさしいおじいちゃんだった!」

「あはは。あの人を“優しいおじいちゃん”って言えるの、千尋ぐらいだよ。」

一織は笑いながらも、指で俺の顎をすくい上げる。

「他には?」

「え?」

「他に、何か言われなかった?」

少しだけ、探るみたいな声音。

「あっ。あとね。俺が望むなら、ここはいつでも開いています。また来てくださいね、って言われた。」

一織の動きが止まる。

「は? くっそ。あのじじい。」

「一織? じじい? なに? なんで急にそんなこと言うの?」

「いや、なんでもない。」

そう言いながらも、俺を抱き寄せる腕は緩まない。

「俺は、千尋の選択を優先するから。」
「選択?」
「どこに行くか。誰のそばにいるか。」

その言葉に、胸が小さく鳴る。

「でもさ。」

一織が、額を俺に軽くぶつける。

「千尋がどこに行っても、俺はそばにいたいと思ってるから。それは覚えておいて。」

「なんだよ、それ。」

一織の指が、俺の手に絡む。

「俺が選んだのは千尋だし。千尋が選ぶのも、俺だろ?」

さっきまでのじゃれ合いとは違う、少し深いキスが落ちる。

問い詰めるのを忘れて、気づけばまた、されるがままになっていた。
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