目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?【高瀬陸×一ノ瀬湊 編】

綾波絢斗

文字の大きさ
2 / 13

2 苦しい恋心

しおりを挟む
「なあ、湊。花井さんって、ほんとかわいいんだよ」

その声を聞いた瞬間、胸の奥が微かにざわめく。僕はペンを走らせる手を止めずに、「そうなんだ」とそっけなく答える。

「この前さ、講義が終わって少し話したんだ。花井さん、話すと楽しいんだよね。なんか趣味も合うみたいでさ」

陸の声は、いつもより軽く弾んでいた。僕の部屋に広がる静けさが、陸の楽しげな調子にのみ込まれていく。

「へぇ……趣味?」自然に聞こえるように返したつもりだった。

「映画とか。俺が好きな監督、花井さんも知ってて。それで盛り上がってたら……なんか、距離が近くなって。でさ、うなじとかさ。なんか……やばかった」

その一言で、空気が止まった。ペン先がノートに強く押しつけられ、インクが滲む。

「……うなじ?」かろうじて声が出た。

「うん。髪をちょっとかき上げたときに見えたんだよ。なんか……ああいうの、反則じゃね?」

陸は笑って、頭をかく。無邪気なその仕草が、僕にはどうしようもなく残酷だった。

「……そうだね」唇の裏を噛みながら、僕は答えた。

——どうしてそんなこと、僕に言うんだよ。そんなの聞きたくない。でも言えない。言ってしまえば、この距離が壊れてしまう。

陸は気づかないまま、ソファに寝転んだ。白いシャツが少しめくれて、腹筋のラインがちらりと見える。無防備なその姿が、余計に苦しい。

「なあ、今度さ。どうやって花井さんを誘おうかな。一緒にカフェで課題とかやったら、もっと仲良くなれるかな」

「いいんじゃない?」やっと絞り出した声は、かすかに震えていた。

「だよな。……でも、断られたら慰めてくれよ?」陸が笑って、僕の肩を軽く叩く。

一瞬、その手の熱が肌に残る。その温度を消したくなくて、僕は息を詰めた。

「……いつでも」

氷の溶ける音だけが響く。静かな夜。言葉にできない想いが、胸の奥でひたひたと広がっていく。

——その笑顔が、やけに眩しくて。僕は、何も言えなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ラベンダーに想いを乗せて

光海 流星
BL
付き合っていた彼氏から突然の別れを告げられ ショックなうえにいじめられて精神的に追い詰められる 数年後まさかの再会をし、そしていじめられた真相を知った時

happy dead end

瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」 シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。

俺はすでに振られているから

いちみやりょう
BL
▲花吐き病の設定をお借りしている上に変えている部分もあります▲ 「ごほっ、ごほっ、はぁ、はぁ」 「要、告白してみたら? 断られても玉砕したら諦められるかもしれないよ?」 会社の同期の杉田が心配そうに言ってきた。 俺の片思いと片思いの相手と病気を杉田だけが知っている。 以前会社で吐き気に耐えきれなくなって給湯室まで駆け込んで吐いた時に、心配で様子見にきてくれた杉田に花を吐くのを見られてしまったことがきっかけだった。ちなみに今も給湯室にいる。 「無理だ。断られても諦められなかった」 「え? 告白したの?」 「こほっ、ごほ、したよ。大学生の時にね」 「ダメだったんだ」 「悪いって言われたよ。でも俺は断られたのにもかかわらず諦めきれずに、こんな病気を発病してしまった」

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

その部屋に残るのは、甘い香りだけ。

ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。 同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。 仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。 一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。

別れたはずの元彼に口説かれています

水無月にいち
BL
 高三の佐倉天は一歳下の松橋和馬に一目惚れをして告白をする。お世話をするという条件の元、付き合えることになった。  なにかと世話を焼いていたが、和馬と距離が縮まらないことに焦っている。  キスを強請った以降和馬とギクシャクしてしまい、別れを告げる。  だが別れたのに和馬は何度も会いに来てーー?  「やっぱりアレがだめだった?」    アレってなに?  別れてから始まる二人の物語。

好きとは言ってないけど、伝わってると思ってた

BL
幼なじみの三毛谷凪緒に片想いしている高校二年生の柴崎陽太。凪緒の隣にいるために常に完璧であろうと思う陽太。しかしある日、幼馴染みの凪緒が女子たちに囲まれて「好きな人がいる」と話しているのを聞き、自分じゃないかもしれないという不安に飲まれていく。ずっと一緒にいたつもりだったのに、思い込みだったのかもしれない──そんな気持ちを抱えたまま、ふたりきりの帰り道が始まる。わんこ攻め✕ツンデレ受け

片思いの練習台にされていると思っていたら、自分が本命でした

みゅー
BL
オニキスは幼馴染みに思いを寄せていたが、相手には好きな人がいると知り、更に告白の練習台をお願いされ……と言うお話。 今後ハリーsideを書く予定 気がついたら自分は悪役令嬢だったのにヒロインざまぁしちゃいましたのスピンオフです。 サイデュームの宝石シリーズ番外編なので、今後そのキャラクターが少し関与してきます。 ハリーsideの最後の賭けの部分が変だったので少し改稿しました。

処理中です...