グランサンクチュア 〜地底天空都市の伝説〜

大森六

文字の大きさ
25 / 55
第一章 ヒューマニア王国

第25話 王家との食事 02

しおりを挟む
「ミラよ。お前はどう考えておるのじゃ?」

 突然国王にとてつもなく大きな問いを突きつけられて動揺するミラだったが、すぐに冷静な面持ちで返答する。


「国王が退位された後のヒューマニア王国はこの私、ミラ・ヴァン・クライトンが引き継ぎ、今以上に民の暮らしを守り、国家を発展させることをお約束いたします」


 国王が求めている回答だった。そしてゆっくりと頷く。

「うむ。ミラよ。まだ先ではあるが、この国をよろしく頼むぞ。そしてお前に残された3年をより良いものとし、盤石の体制を築くように」

「国王……いえ、父上! 本当にありがたきお言葉です」

「こんなふざけたことがあってたまるか! おいミラ! 俺は絶対に認めないぞ!」

 怒って出て行くレスタ王子。


「ミラよ。あのバカは放っておけ。今まで何度もチャンスを与えてきたが、もうだめだ」

 リアクションできないミラ王女。そしてそんな場面になぜ自分たちがいるんだと不思議で仕方ないロイ一家。ティアだけはリリアナ王女と朝食を楽しんでいる。


「すまなかったな、ロイよ。話を戻そう」

 国王は何事もなかったかのように切り替えて、先ほどのロイ一家への相談事について話し始める。

「魔族の件が一応解決となり、余も回復した今、再びブロッカでの生活に戻ろうとしているかもしれぬが、しばらく王宮での暮らしを続けて欲しいのだ」


「……え?」

「今の魔王軍のレベルと王国騎士団のレベルを考えると、もしも魔王軍が次にヒューマニア王国を攻めてきたら、国は簡単に滅びるだろう。それくらい力の差がある。それはロイやリリカが最もわかっていることかも知れぬがな」

 国王の話を静かに聞いているロイとリリカ。


「そうはならぬように、ロイとリリカに、騎士団と魔土術士ソレイジを鍛えあげてもらえぬだろうか? 魔族と戦えるレベルにまで。その間、ここ王宮で暮らしてもらいたいのだ。それは同時に、この王宮が二度と魔族の計略にはまらぬよう、護衛として留まっていてほしいのだ。情けない話ではあるが、今の王宮騎士団では護衛は務まらぬ」


 物凄い要求だった。しかも、国王から直々に。


 兵を鍛え上げるというのなら数ヶ月という時間ではすまないだろう。ロイはリリカの顔をみる。リリカもなんとも言えないという感じだ。


「……国王、あまりにも大きな決断となり、即答はしかねます。後ほど家族とも相談して、明日お返事させていただいてもよろしいでしょうか?」


「もちろんだ。いい返事を待っているぞ」


 そして国王はノアの方を向く。


「それからノアよ。近々、魔土術学院に入学する気はないか?」


「「「えぇ⁈  」」」


 ノアだけでなく、ロイとリリカも驚く。


「ノアよ。お主にはミラの良き友、良き仲間となってもらいたいのだ。そして2年後、ミラには見聞を広めるためにヒューマニア王国の外側の世界を巡らせようと思っておる。
 お主にはそのときにミラと共に旅をしてもらいたいのだ。ミラを危険から守る護衛として。そしてノア、お主自身のためにも」


「「「えぇ~!!!  」」」


 ノアだけでなく、ロイとリリカ、そしてミラ王女まで驚いていた。朝食を楽しく食べていたのはティアとリリアナ王女だけだった。


 * * *



 朝食が終わり、ロイたちは部屋へ戻った。そして、人生最大の家族会議が始まった。

「ちょっと、どうするの? ロイ」

「いや、俺が聞きたいよ」


 とりあえず、ロイとリリカ自身の問題のことで悩み始めたが、これは結論としてはもう出ているのと同じであった。魔族に負けるわけにはいかない。国の防衛力を高めないとヒューマニア王国は滅びる。
 それは何としても避けなければならない。つまり、国王への返事としては承諾しかないのだ。


「リリカは魔土術を教えることは構わないのか? 自身の勉強の時間が割かれることになるが」

「正直、そこも交渉だと思うわ。まず、食事は王宮もしくは訓練場で全て用意してもらう、ティアやノアに世話係をつけてもらうとか。それで私の自由な時間が逆に増えるかもしれないわ」

「なるほどな。まぁ、それくらいの要求は王宮にとって問題ないだろうし。俺はどうかというと……まぁ、特に問題ないな。ノアやティアの訓練だけはちゃんとやりたいんだが……」


「そうね。それも条件に加えましょう」

 こうして、二人で話し込む。そしてノアはノアで条件面を書き込んでいる。

「えっと……王都リトルガイア、城下町コンクーリへの出入自由。王宮内にノア専用の鍛冶場を増設、学院の飛び級特別試験の許可、図書の間の自由な閲覧……あ、あとダンジョンへの出入り自由と探掘後のアイテム受け取りの権利、国外への出入り自由、パーティーメンバーの決定権……」


「「……ノアのやつ、めちゃくちゃ要求出してるな」」


 そして朝を迎え、国王との朝食の場で要望を出してみた。国王は笑いながら快く承諾してくれた。

「国王、私から一つ提案なのですが、王宮に務めている護衛騎士を集めて希望者を私とノアを相手に戦闘の模擬訓練をするのはいかがでしょうか?」


「別にそれは構わん。その意図を聞いても良いか?」

「おそらく、多くのものは新参者の私やノアという庶民に王宮護衛の全ての権利をもたれることに否定的でしょう。特にノアはまだ十歳ですから。なので、希望者には一対一で戦ってみて、その実力差を分からせる方が、今後王宮護衛の任務を円滑に進められると思いまして」


「うむ。ロイの言う通りだな。ヘンドリック、そのように手配を」


「承知しました、国王陛下」


 そして、国王は笑顔でノアの方へ顔を向ける。

「ノアよ。お主の要望の一つにティアが10歳になったときに魔土術学院に入学できる権利を与えるとあったが、それはティアにそのような才能があると言うことか?」


 ティアが驚いてノアの方を見る。ノアは自信を持った表情で国王の問いに答える。

「国王、その通りです。ティアはすでに世間一般でいう、E級魔土術士ソレイジと同等の力を持っております。兄として、ティア本人が望むならそうしてやりたいと思いまして」


「お兄ちゃん……」


 ティアの目から自然と涙が溢れていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...