グランサンクチュア 〜地底天空都市の伝説〜

大森六

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第一章 ヒューマニア王国

第54話 ロイとヘンリーの模擬戦

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「お~い、マリア!」

 感動のあまりその場で固まっているマリアにノアが駆け寄る。

「ノアさん、すごいですね……」

「マリアはモグラーに興味があるかもしれないって思ったんだよ。だから今日呼んだんだ。もしかして、物を作る事に興味があるんじゃない?」

 メガネの奥の目がいつも以上に大きく開く。

「どうしてそれを知っているのですか? 誰にも話した事ないのに」

「あれだけ繊細なマナコントロールができるって事が一番ピンと来た理由なんだけど、あとは普段の動作とかで何となくそう感じて。ダンジョンでガンガンモグるっていうよりかは何かを工房にこもって作っていたい派でしょ?」

 笑って答えるノア。

「そうなんです。私は小さい時から身の回りの物を手作りで……例えば洋服とか髪飾りとか食器とか……細かいモノから大きなモノまで色々なものに興味があって」

「だったらさ、マリアに一つ提案したいことがあるんだけど」

 ん? と不思議そうな顔でノアを見る。

「僕と一緒に工房でゴーレムを動かせるように研究しない?」

「えぇ? さっきのアレをですか? やりたいです! 私も参加していいんですか?」

 ノアがニコッと笑って頷く。

「よし! じゃあ、ノア工房の一人目の助手はマリアで決定だ! 後で国王陛下にマリアが王宮へ自由に入れるように許可をもらってくるよ」

「えぇぇ~!」



 * * *


 一方、王宮の訓練場ではロイがヘンリーと模擬戦を行うところだった。周りには王国騎士団の騎士たちが見守っている。

「ヘンリー! 頑張れよ! 俺たちでもロイさんには一太刀も入れたことないんだから緊張せずに全力でやれ!」


「ロイさんに一撃入れたら今度晩飯おごってやるぞ!」

 騎士たちが盛り上がっている。


「あいつら仕方ねぇな……後でしごき倒してやるか」

 ヘンリーは周りの浮かれた雰囲気にのまれることなく落ち着いていた。

(絶対にここで認められて、騎士団の訓練に参加させてもらうんだ。集中しろ……)

「おっ、ノアの言う通り、こいつ結構いいかもしれないな」

 ヘンリーから感じる闘志と集中力にロイが興味を示した。

「ヘンリー、今から一対一の模擬戦を行う。自由に攻撃してこい。魔土術を使っても武器を使っても構わない。お前の全てをこの模擬戦にぶつけろ!」

「はい! よろしくお願いします!」


 いよいよ模擬戦が始まった。

 ヘンリーは勢いで飛び込まずにソイラソードに風魔土術をエンチャントする。

「ほう、風が使えるのか。そこからどう来る?」

 ロイとの距離をゆっくり詰めていくヘンリーの額からポタリと汗が地面に落ちる。物凄い威圧だ。これが英雄ロイ・グリードの圧倒的な存在感。

(隙が一切無い……ならば、その隙を作るまでだ!)

 ヘンリーが一直線にロイに向かって突っ込んでいく。そして上半身に一太刀入れる素振りを見せてロイの状態を起こし、手前の地面に向かって風を巻き起こしながら一閃。

「くっ、煙が……」

 地面から砂煙が舞い上がり、ロイはヘンリーの姿を見失う。

「ここだ!」

 ヘンリーがロイの側面へ回り込み、しかも足元へ渾身の一撃! 流石に意表をつかれたか?


(…………え! 剣でしっかりとガードされている)

 視界の悪さは英雄にとって何一つ問題にならない。

「なかなかいい攻撃だったぞ!」

 ドゴン! 

 叩きつけるようなロイの一撃だったが、ギリギリのところでかわしたヘンリー。一旦距離をとってから、再びロイに正面から挑んでいく。

 キンキンキンとソイラソードが弾かれる音が響く。ヘンリーが両手で握って振り切る全力の太刀が片手で簡単にいなされる。

「実力差があって当たりまえだ。でも僕はノアやティアみたいに何かをここに残さないといけない! 絶対にあっさり負けたりしないぞ!」

 ガン!

 ロイの一撃で大きく後ろへ吹っ飛ばされたヘンリー。競技場の壁まで飛ばされてしまった。

「グハァ……とんでもない威力だ。剣で受けて防御していたのに……」

「どうした! もう終わりか!」

 ロイのあおりにヘンリーはニヤッと笑う。そして突然ロイに向かって走り出した。


「おいおい、あいつ諦めてヤケクソの特攻かよ」

 周囲の騎士たちが勝負を諦めて見ていたその時、ヘンリーは少し手前からクルッと回転してロイに背中を向ける。

「ん? どういうつもりだ? 突進か? まだ距離があるうちに背中を……」

 ヘンリーはソイラソードを後方へ突出つきだし、エンチャントした風魔土術を発動する。
 剣の切っ先から強烈な風が吹き出してヘンリーの身体がロイに向かって一気に加速する! 勢いがついた状態で再び回転しながらロイに向かって横一文字斬り!

「ウオォ! これでどうだぁ!」


 キィーンと大きく空気を切り裂いて響く音。

 ヘンリーのソイラソードが折られて刃が騎士たちの方へ回転しながら飛んでいく。

 ロイがまたしてもヘンリーの太刀を受けきった。そして勢いよく突っ込んできたヘンリーの背面に素早く肘打ちを加えて地面に叩きつけた。

「…………」


「おい! あいつ気絶してるぞ! 水持ってこい!」

「ロイさん、ちょっとやり過ぎじゃないですか? 学院生相手ですよ」

「……身体が反射的に動いちまった。それくらい最後のあいつの一撃は気持ちがのったいい攻撃だったよ……」


 白目を剥いて気絶しているヘンリーを見てロイは笑顔で騎士団全員に告げる。


「ヘンリーが目を覚ましたら伝えておけ! 明日から騎士団の訓練に参加するようにとな! 俺たちの新しい仲間だ! お前らも仲良くしてやれよ!」


「「「了解しました!」」」


 目を覚ました後、ヘンリーは騎士たちからロイの言葉を聞かされて、その場で大泣きして喜んでいた。

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