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第二章 東京都区別対抗学戦祭編
第9話 近かったから
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「「「いただきます!」」」
今日の晩御飯は早紀子特製ゴーヤチャンプルー。
プシュッ!
ハイボールの1缶目を開けてゴクゴク流し込む早紀子。
「うまい! 仕事終わりの酒はうまい!」
唸る早紀子。
プシュ~!
負けじと炭酸水を流し込む太地。今日は特に疲れたからか、炭酸水が体内にじゅわ~っと浸透していくように思えた。
「うまい! 学校の後の炭酸水はうまい!」
『いや~炭酸水ってシュワシュワして気持ちいいな!』
月人も満足げだ。
月人は自分で飲むことも食べることもしないが、太地の感覚をある程度共有することができるのだ。 数値的には18%のシンクロ率による感覚共有と言ったところか……
アイドルとなって以来、食事は月人にとっても楽しみな時間となっている。
「太地、夏休み終わって、学校始まったけどどう?」
早紀子が2缶目に手を伸ばしながら聞く。
「う~ん……今日は疲れたよ。色々あったから」
確かに学校外で色々あった。それは母親の早紀子には決して言えない。
「第三高に行くって聞いたときは正直驚いたけど、まぁ楽しくやれてたらそれでいいから」
「うん。ありがとう。今のところ楽しく過ごしてるよ」
『……』
食事を終えて部屋に戻ってきた二人。
『太地はさ、第三高を希望してたのか?』
月人が聞く。
『お前の学力なら余裕で青川区立第一高校にいけたはずだろ?』
東京都は2057年現在で合計9つの区に別れており、それぞれ「特別区立高校」という制度が存在する。
東京都に住む中学3年生は、春先に東京都が主催する学力技能測定会に参加する義務がある。もちろん、他県の入学希望者も参加することができる。近年、優秀な人材はここを登竜門として挑戦するのが風潮となりつつある。
学力技能測定会では文字通り学力や身体能力、健康状態など身体が持つ有りと有らゆる可能性を数値化し、その全てを測定しランク分けする。
トップレベルのスコアを出した生徒だけが入学を許されるのが各々の区の第一高校、第二高校であり、第三高校はそれらと比較すると多少見劣りする存在であった。スコアが低すぎる学生には不合格通知が届き、特別区立高校には入学できない。
希望校など学生本人の意思は関係ない。ただ、スコアをもとに入学可能な高校を東京都全体から幾つかピックアップして本人に提示される。能力が高いからといってどこでも選べるというわけではないのだ。
ちなみに青川区では区立が第一高校から第七高校まで存在している。
ランクが低い第七高校がいわゆる「おバカ高」かというと、そうではない。
他の有名私立高と比較しても全く引けを取らない学力で、この特別区立高校自体が群を抜いてハイレベルなのだ。
もはや特別区立高校に入学できれば、将来が約束されているとまで言われている。
そんな化け物が集まる特別区立高校の中で、太地の学力は圧倒的だと月人は分析している。おそらく早紀子もそれをわかっていたのだろう。
『第三にした理由とかあるのか?』
「将来探偵やるって決めている奴が面倒な第一高に行ってどうするんだよ。就活とかしないし。どこでもいいでしょ。最も家から近い高校を選んだだけだよ。」
『まじかよ……』
「通うの楽だしね。在学中も父さん探しするつもりだったから、家から近いほうがいいなって」
「それがたまたま青三高だったってわけ。だから、学力測定とか苦労したんだよなぁ。 トップとドベは割と簡単に取れるけど中間よりちょっと上とかちょっと下っていう成績を狙うのが一番難しいんだよ。合格時はいろんな区の第三、第四あたりの合格通知がきたよ。狙い通りって感じ」
屈託のない笑顔の太地。
『……その無駄な努力に感動したわ』
呆れる月人。探偵にそこまで固執していたとは……
『まぁ、それくらい本気で探すという強い気持ちの表れでもあるな』
「ところでさ、月人に幾つか聞きたいことがあって……」
『なんだ?』
「まず最初に……念話的なことはできないの?
テレパシーというか……声に出さず月人と話をしたい時にどうすればいいかなって」
『あぁ、できるぜ。太地の血液に流れるあらゆる情報をスキャンして俺(アイドル)に共有させることがこのシステムの基礎だ。太地が俺に伝えたいと思う情報を意識してみな』
「意識するって言われても……」
太地は左手のリングを見ながら大げさに意識してみる。
『……今日のゴーヤチャンプルー美味かった』
「正解! すごいな、これ!」
『楽勝だな。感覚のステータスを上げれば距離も関係なく俺と意思疎通できるぞ』
「それだよ! そのステータス!」
月人と重なるくらいに勢いよく前のめりにつっこんでくる太地。
「なんなのそれ? よく会話に出てくるけど。もう少し具体的に教えてくれない?」
『近いって! わかった! わかったから』
考える月人。
『ちょっと待ってろよ。見たほうが早い。視覚化できるように調整するから』
月人の右手が手際よく動き出す。何かを作成しているようだ。
《ステータスウィンドウ作成……完了しました》
《ローダーとの情報共有設定……変更完了しました》
アナウンスが流れる。
『よし!できたみたいだな』
頷く月人。満足そうに見える。
『太地、「ステータスオープン」って、さっきみたいに念じてみろ』
「ステータスオープン!」
今日の晩御飯は早紀子特製ゴーヤチャンプルー。
プシュッ!
ハイボールの1缶目を開けてゴクゴク流し込む早紀子。
「うまい! 仕事終わりの酒はうまい!」
唸る早紀子。
プシュ~!
負けじと炭酸水を流し込む太地。今日は特に疲れたからか、炭酸水が体内にじゅわ~っと浸透していくように思えた。
「うまい! 学校の後の炭酸水はうまい!」
『いや~炭酸水ってシュワシュワして気持ちいいな!』
月人も満足げだ。
月人は自分で飲むことも食べることもしないが、太地の感覚をある程度共有することができるのだ。 数値的には18%のシンクロ率による感覚共有と言ったところか……
アイドルとなって以来、食事は月人にとっても楽しみな時間となっている。
「太地、夏休み終わって、学校始まったけどどう?」
早紀子が2缶目に手を伸ばしながら聞く。
「う~ん……今日は疲れたよ。色々あったから」
確かに学校外で色々あった。それは母親の早紀子には決して言えない。
「第三高に行くって聞いたときは正直驚いたけど、まぁ楽しくやれてたらそれでいいから」
「うん。ありがとう。今のところ楽しく過ごしてるよ」
『……』
食事を終えて部屋に戻ってきた二人。
『太地はさ、第三高を希望してたのか?』
月人が聞く。
『お前の学力なら余裕で青川区立第一高校にいけたはずだろ?』
東京都は2057年現在で合計9つの区に別れており、それぞれ「特別区立高校」という制度が存在する。
東京都に住む中学3年生は、春先に東京都が主催する学力技能測定会に参加する義務がある。もちろん、他県の入学希望者も参加することができる。近年、優秀な人材はここを登竜門として挑戦するのが風潮となりつつある。
学力技能測定会では文字通り学力や身体能力、健康状態など身体が持つ有りと有らゆる可能性を数値化し、その全てを測定しランク分けする。
トップレベルのスコアを出した生徒だけが入学を許されるのが各々の区の第一高校、第二高校であり、第三高校はそれらと比較すると多少見劣りする存在であった。スコアが低すぎる学生には不合格通知が届き、特別区立高校には入学できない。
希望校など学生本人の意思は関係ない。ただ、スコアをもとに入学可能な高校を東京都全体から幾つかピックアップして本人に提示される。能力が高いからといってどこでも選べるというわけではないのだ。
ちなみに青川区では区立が第一高校から第七高校まで存在している。
ランクが低い第七高校がいわゆる「おバカ高」かというと、そうではない。
他の有名私立高と比較しても全く引けを取らない学力で、この特別区立高校自体が群を抜いてハイレベルなのだ。
もはや特別区立高校に入学できれば、将来が約束されているとまで言われている。
そんな化け物が集まる特別区立高校の中で、太地の学力は圧倒的だと月人は分析している。おそらく早紀子もそれをわかっていたのだろう。
『第三にした理由とかあるのか?』
「将来探偵やるって決めている奴が面倒な第一高に行ってどうするんだよ。就活とかしないし。どこでもいいでしょ。最も家から近い高校を選んだだけだよ。」
『まじかよ……』
「通うの楽だしね。在学中も父さん探しするつもりだったから、家から近いほうがいいなって」
「それがたまたま青三高だったってわけ。だから、学力測定とか苦労したんだよなぁ。 トップとドベは割と簡単に取れるけど中間よりちょっと上とかちょっと下っていう成績を狙うのが一番難しいんだよ。合格時はいろんな区の第三、第四あたりの合格通知がきたよ。狙い通りって感じ」
屈託のない笑顔の太地。
『……その無駄な努力に感動したわ』
呆れる月人。探偵にそこまで固執していたとは……
『まぁ、それくらい本気で探すという強い気持ちの表れでもあるな』
「ところでさ、月人に幾つか聞きたいことがあって……」
『なんだ?』
「まず最初に……念話的なことはできないの?
テレパシーというか……声に出さず月人と話をしたい時にどうすればいいかなって」
『あぁ、できるぜ。太地の血液に流れるあらゆる情報をスキャンして俺(アイドル)に共有させることがこのシステムの基礎だ。太地が俺に伝えたいと思う情報を意識してみな』
「意識するって言われても……」
太地は左手のリングを見ながら大げさに意識してみる。
『……今日のゴーヤチャンプルー美味かった』
「正解! すごいな、これ!」
『楽勝だな。感覚のステータスを上げれば距離も関係なく俺と意思疎通できるぞ』
「それだよ! そのステータス!」
月人と重なるくらいに勢いよく前のめりにつっこんでくる太地。
「なんなのそれ? よく会話に出てくるけど。もう少し具体的に教えてくれない?」
『近いって! わかった! わかったから』
考える月人。
『ちょっと待ってろよ。見たほうが早い。視覚化できるように調整するから』
月人の右手が手際よく動き出す。何かを作成しているようだ。
《ステータスウィンドウ作成……完了しました》
《ローダーとの情報共有設定……変更完了しました》
アナウンスが流れる。
『よし!できたみたいだな』
頷く月人。満足そうに見える。
『太地、「ステータスオープン」って、さっきみたいに念じてみろ』
「ステータスオープン!」
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