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第二章 東京都区別対抗学戦祭編
第21話 東京とテロ
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10月2日、学校のお昼休みで屋上にいる太地と月人。もうお弁当は食べ終わっていた。
昨日権田成美からメンバー5名の名簿が主催側に無事に受理されたと連絡が入った。
「これで色祭り出場確定だね」
『そうだな~』
改めて今年、第三回の要項を確認してみる太地。出るからには全てでトップを取るつもりだ。
「テーマが 『防衛』っていうのも、現在の東京事情を表していてなんというか、生々しいね。」
『2040年の東京都庁爆破の自爆テロ……あれから17年が過ぎているが、今だ更地のままだからな……あの場所は』
月人が真剣な表情で太地に言う。
「太地、少し長くなるが俺はあのテロ事件について、話しておいたほうがいいと思っている。今後、政府特務機関(GSD)へ近づくに連れて、何か関わってくるような気がしてな。
当時、メディアへの情報統制がされていたから一般人には知られていない事実も含まれているが……聞くか?」
「……うん。話して欲しい」
月人が東京都のここ20年間の歩みを語り始める。
『2035年東京都と日本政府による一大プロジェクトが発足した。それは停滞する第一次産業の発展を促すためにAI技術を積極的に導入するというもので、その中で特に東京都が力を注いで取り組んだ分野が農業だった。
東京都と都内の民間研究所によって開発されたAI Farming system 【NOUKA】。
そのままの意味で人に一切頼らず、AIにコントロールさせて農業管理を行うって感じだな。
突然の災害による対象地域の食料危機や経済状況の変化による価格高騰の問題等、できる限り柔軟に対応できるように、あるいは安定した価格と品質で市民に提供できるように……まぁ、そういった目的につくられたシステムだ。
それは資源を生み出す第一次産業の分野にまで人による管理ではなく、AIロボットによる管理を積極的に推進するという点から、当時大きな反響を呼んだ』
『期待も不安もごちゃまぜでな……』
『あの頃、太地はまだ生まれていないが、ガソリン価格や人件費の高騰など様々な理由から日本の主食である米や小麦の価格なんかが異常に高騰したんだ。
その背景もあって、世論全体でみるとNOUKA導入は比較的賛成する様な風潮ではあった』
太地が黙って頷いて聞いている。
『ただし、個人の農家や農業組合を除いての話だ。彼らは何度も政府にプロジェクトの見直しを要求したが東京都も日本政府も同意しなかった』
月人の語気が強くなる。
『農家と組合から様々な反論意見があったが、主な理由の一つとして、ほとんどの農家が薄利で運営している状況とあって、最新大型設備で高額なNOUKAを購入できる者など存在しなかった。
そこで政府は 代替案として農家が実質負担する割合を2割で抑え、残りを税金から補う形で対応することを提案した。ある程度納得して理解を示す農家もいたし、断固反対する農家もいた。当然だが税金の無駄遣いだと否定する世論と野党で国会は泥沼化したが、なんとか強引にプロジェクトをスタートさせたわけだ』
「どうしてそこまでする必要があったんだろう……」
『順調に進められるかと思われていたが、1年が経過した頃から問題が浮き彫りとなる。当初想定されていたAIロボの耐久性能が実際の環境に最適に機能せず、わずか数ヶ月で故障するケースが続出した。
他にも、出荷された商品にはしっかりと精米されていないもの、虫が混入しているものが出回るといったトラブルが頻繁に発生するわけだ。セカンドブレインを通してNOUKAをみた限りだが……ありゃ~本当にポンコツだ。
その当時の技術の限界とかではなく、開発が手を抜き過ぎだったんだ』
「そんな……そこに託した農家の人たちがあまりにも可哀想……」
頷く月人は太地の目を見て更に続ける。
『こうした状況からNOUKAによって生産された商品に対する市民の不信感が爆発する。
全国的に起こった市民の不買運動、そして不満の矛先は政府だけでなく、システムを採用した農家へも向けられちまった。精神的に追い詰められて事業を投げ出す農家も続出したんだ。
発表はされていないが、NOUKAシステムを購入した割合はなんと全体の約7割だ。その数は75万経営体と言われている。人数だともっと増えるぜ』
『太地、この意味がわかるか?』
「……」
黙っているが表情で太地が理解していることを知る月人。
(現在政府の方で発表されている農家の数は情報操作されている嘘の数字だ。
実際はもっと少ないってことだ……では一体どうやって僕たちは生活できているんだろう……)
月人は続ける。
『故障するか or 売れないかという不条理で絶望的な選択を迫られた農家に、東京都と日本政府は何一つ手を差し伸べることなくNOUKAプロジェクトは発足からわずか2年で終焉を迎えた』
『そして事件は起こる』
『2040年11月11日、旧新宿区(現在の黒川区)にそびえ立つ東京都の象徴の一つである、日本の巨匠建築家が設計した東京都庁第一本庁舎ビルが爆破テロによって崩壊した』
(そういえば、僕が生まれた年だな。2040年か)
『当時、市民団体によってNOUKAプロジェクトによる多額の損害に対する責任の所在を追求する運動が庁舎前の広場で行われていた中での出来事だった』
「巻き込まれたんだね。その人たちも」
『巻き込まれたわけじゃねえ。 狙われていたんだ。市民も』
「なんだって! どうして一般の市民まで⁈」
『……理由はある。とはいえ許されることではないがな』
月人は一旦太地の疑問を保留にして、話を先に進める。
『30万人もの死傷者を出したこの最悪のテロ事件は意外にも犯罪とは無縁のような農家が中心となって立ち上がった組織だと、後の犯行声明によって明らかになる』
「未だに信じられないよ。そんな大勢の人が一瞬で死ぬなんて」
『あぁ。そうだ。そして太地も授業で学んで知っているよな?
この残虐非道なテロを実行した日本のテロ組織とその主犯の名を』
「……あぁ……もちろん。かなりの衝撃だったから忘れられないよ」
テロ組織:No Farmers No Future 、通称【NFNF(エヌフ)】
最高指導者:宍土将臣(シシドショウジン)
昨日権田成美からメンバー5名の名簿が主催側に無事に受理されたと連絡が入った。
「これで色祭り出場確定だね」
『そうだな~』
改めて今年、第三回の要項を確認してみる太地。出るからには全てでトップを取るつもりだ。
「テーマが 『防衛』っていうのも、現在の東京事情を表していてなんというか、生々しいね。」
『2040年の東京都庁爆破の自爆テロ……あれから17年が過ぎているが、今だ更地のままだからな……あの場所は』
月人が真剣な表情で太地に言う。
「太地、少し長くなるが俺はあのテロ事件について、話しておいたほうがいいと思っている。今後、政府特務機関(GSD)へ近づくに連れて、何か関わってくるような気がしてな。
当時、メディアへの情報統制がされていたから一般人には知られていない事実も含まれているが……聞くか?」
「……うん。話して欲しい」
月人が東京都のここ20年間の歩みを語り始める。
『2035年東京都と日本政府による一大プロジェクトが発足した。それは停滞する第一次産業の発展を促すためにAI技術を積極的に導入するというもので、その中で特に東京都が力を注いで取り組んだ分野が農業だった。
東京都と都内の民間研究所によって開発されたAI Farming system 【NOUKA】。
そのままの意味で人に一切頼らず、AIにコントロールさせて農業管理を行うって感じだな。
突然の災害による対象地域の食料危機や経済状況の変化による価格高騰の問題等、できる限り柔軟に対応できるように、あるいは安定した価格と品質で市民に提供できるように……まぁ、そういった目的につくられたシステムだ。
それは資源を生み出す第一次産業の分野にまで人による管理ではなく、AIロボットによる管理を積極的に推進するという点から、当時大きな反響を呼んだ』
『期待も不安もごちゃまぜでな……』
『あの頃、太地はまだ生まれていないが、ガソリン価格や人件費の高騰など様々な理由から日本の主食である米や小麦の価格なんかが異常に高騰したんだ。
その背景もあって、世論全体でみるとNOUKA導入は比較的賛成する様な風潮ではあった』
太地が黙って頷いて聞いている。
『ただし、個人の農家や農業組合を除いての話だ。彼らは何度も政府にプロジェクトの見直しを要求したが東京都も日本政府も同意しなかった』
月人の語気が強くなる。
『農家と組合から様々な反論意見があったが、主な理由の一つとして、ほとんどの農家が薄利で運営している状況とあって、最新大型設備で高額なNOUKAを購入できる者など存在しなかった。
そこで政府は 代替案として農家が実質負担する割合を2割で抑え、残りを税金から補う形で対応することを提案した。ある程度納得して理解を示す農家もいたし、断固反対する農家もいた。当然だが税金の無駄遣いだと否定する世論と野党で国会は泥沼化したが、なんとか強引にプロジェクトをスタートさせたわけだ』
「どうしてそこまでする必要があったんだろう……」
『順調に進められるかと思われていたが、1年が経過した頃から問題が浮き彫りとなる。当初想定されていたAIロボの耐久性能が実際の環境に最適に機能せず、わずか数ヶ月で故障するケースが続出した。
他にも、出荷された商品にはしっかりと精米されていないもの、虫が混入しているものが出回るといったトラブルが頻繁に発生するわけだ。セカンドブレインを通してNOUKAをみた限りだが……ありゃ~本当にポンコツだ。
その当時の技術の限界とかではなく、開発が手を抜き過ぎだったんだ』
「そんな……そこに託した農家の人たちがあまりにも可哀想……」
頷く月人は太地の目を見て更に続ける。
『こうした状況からNOUKAによって生産された商品に対する市民の不信感が爆発する。
全国的に起こった市民の不買運動、そして不満の矛先は政府だけでなく、システムを採用した農家へも向けられちまった。精神的に追い詰められて事業を投げ出す農家も続出したんだ。
発表はされていないが、NOUKAシステムを購入した割合はなんと全体の約7割だ。その数は75万経営体と言われている。人数だともっと増えるぜ』
『太地、この意味がわかるか?』
「……」
黙っているが表情で太地が理解していることを知る月人。
(現在政府の方で発表されている農家の数は情報操作されている嘘の数字だ。
実際はもっと少ないってことだ……では一体どうやって僕たちは生活できているんだろう……)
月人は続ける。
『故障するか or 売れないかという不条理で絶望的な選択を迫られた農家に、東京都と日本政府は何一つ手を差し伸べることなくNOUKAプロジェクトは発足からわずか2年で終焉を迎えた』
『そして事件は起こる』
『2040年11月11日、旧新宿区(現在の黒川区)にそびえ立つ東京都の象徴の一つである、日本の巨匠建築家が設計した東京都庁第一本庁舎ビルが爆破テロによって崩壊した』
(そういえば、僕が生まれた年だな。2040年か)
『当時、市民団体によってNOUKAプロジェクトによる多額の損害に対する責任の所在を追求する運動が庁舎前の広場で行われていた中での出来事だった』
「巻き込まれたんだね。その人たちも」
『巻き込まれたわけじゃねえ。 狙われていたんだ。市民も』
「なんだって! どうして一般の市民まで⁈」
『……理由はある。とはいえ許されることではないがな』
月人は一旦太地の疑問を保留にして、話を先に進める。
『30万人もの死傷者を出したこの最悪のテロ事件は意外にも犯罪とは無縁のような農家が中心となって立ち上がった組織だと、後の犯行声明によって明らかになる』
「未だに信じられないよ。そんな大勢の人が一瞬で死ぬなんて」
『あぁ。そうだ。そして太地も授業で学んで知っているよな?
この残虐非道なテロを実行した日本のテロ組織とその主犯の名を』
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