Bloody Code 〜特殊な血を持つ天才少年が謎のリングで仲間になった「アイドル」と現実世界を無双する〜

大森六

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第二章 東京都区別対抗学戦祭編

第28話 選ばれた二つの提案

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「本当はこの五つの案の良い点、悪い点を議論して選びたいが、ちょっと時間が押しているし、サクッと選びたいと俺は考えているが、みんなはどうかな?」


「賛成ですわ」

「俺も賛成だ」

「おっけ~」

「了解です」


 五人それぞれ良いと思った案を自身の案以外で二つ挙げることになり、「テロップ!」以外の案が割と均等に票を獲得した。

 東雲しののめが不満げに愚痴ぐちをこぼす。

「ちょっと、みんな。なんでテロップあかんの?」


「いや~まぁ、ダメというか……今回はギリギリ落選だっただけでしょ。多分」

 葛城かつらぎがフォローする。

「オナラで人を倒すなんて発想自体がぶっ飛びすぎて無理ですわ」


「成美ちゃんのオナラ、意外に破壊力あるかもな~」

「ありませんわ! 普通ですわ!」

「普通に臭いってことね」

「……」

 葛城が割って入る。

「はいはい。お嬢のオナラが臭いのはわかったから、みんなで早く決めようぜ」

「臭いなんて言っていませんわ!」

「俺はまず、立体戦棋は入れたほうが良いと思う。理由は他のチームでこの提案するイメージがわかない点で優位と思った事、対戦の仕方が如何様にもできるという事、審査員の求めている解答の一つだと感じた事だ」

 鏡が意見を述べる。


「俺も慎二と同じ考えだな~。これ複雑過ぎてリアルなボードゲームとしては制作できないだろうけど、バーチャルだったらいくらでもプレイヤーを補助できるツールを作れそうだし、楽しめると思う。 最初聞いたときは一般客ウケはほぼ無いと思ったけど、案外そうでも無いかも。コマ数減らして、一対一で簡単な対戦とか上の世代にウケそうと思ったわ」

 葛城も一票入れる。


「僕はトラップ、補給、武器創造の三つはとても良い案だと思いました。それぞれ観点が違うのでフラットな評価が難しいですが、良い武器を作ることが評価されるゲームという点が秀逸だと感じたので武器創造がいいかなと思いました。戦略かどうかという課題に沿っているかどうかギリギリのラインですが、僕は有り派です」


「ワタクシは––」


 メンバーが熱く議論し合う。

 その結果、「武器創造」と「立体戦棋」で決定した。そして休憩も兼ねて権田邸で簡単な食事を取ることになった。


『これ、簡単な食事なのか……』

 戸惑う四人の前にズラリと並べられた料理の品々。


「「「いただきます!」」」

 さすが権田財閥令嬢の簡単な夕食だ。全てが絶品で月人も食を楽しむ。

『太地、これうまいぞ! ホテルのディナーかよ』

「確かに美味しいけど、空間がすご過ぎて落ち着かないや……こんな長いテーブル、どこで作ったんだろう。まさに貴族映画のワンシーン。」


「ところで……六ちゃんさぁ、どうやって青三高に入ったの?」

 東雲あかりが口をもぐもぐ動かしながら太地に話しかける。


「あっ、それ俺も気になる。六条君の賢さで一高以外に入るなんてだよ」


 不思議な会話だ。一高は楽に入れて、三高は無理という論理。まさに太地にしか当てはまらない。

「えっと……得点を抑えて青三高に入れるように調整しました……」

「どういうことですの?」

「試験で調整って……」

 メンバー全員が興味津々である。しかしその興味を満足させるほどの回答を太地は用意していない。

「あはは……ですよね。結構苦労しました」


「なんでそこまでして第三高に行きたかったん?」


「……近かったから……です」


「「「 え? 」」」


「「「 …… 」」」


「家に?」


 恐る恐る確認する葛城。認めたくないのだろう……そんな理由だと。


「……はい。そうです」


「第一高の存在意義がわからなくなってきたのですわ」


「俺は第一高に入れたことを結構誇りを持っていたんだが」

 権田成美ごんだなるみ鏡慎二かがみしんじが落ち込む。やはりエリートは打たれ弱いのか……
 エリートの情熱が「家に近い」に完敗した瞬間だった。

 ズラリと並んだ豪華な料理が虚しく思えるくらいに空気が重くなる。

「た、食べましょうか! こんなに美味しい食事も滅多に食べられませんからね!」

 自分をフォローする太地。


『お前、一発で全員を凹ませたな』

「いやいや、わざとじゃないだろ」


 食器とスプーンがカチャカチャと音を立てる。


「まぁ、六ちゃんらしくていいやん。面白いし」


『ハハハッ』


 月人は思う。東雲のキャラクターは太地にとってありがたい存在だと。



 * * *


 休憩が終わり、メンバーは資料制作を開始した。どちらのアイデアもかなり明確なコンセプトとシステムがベースとなっているため、主催側エンジニアへ提出する資料作成はスムーズに進んだ。


 10月11日 16時––


「ふう~。こんなもんじゃないか? 資料の誤字脱字もチェック完了だ」

 葛城が疲れた様子で話す。


「資料は完璧なのですわ。これで提出しておきますわ!」

 権田成美も満足そうだ。

「みんなお疲れ~。よかったわ~間に合って」

「さすがに疲れたな……」

 東雲と鏡もホッとしているようだ。


「今日はとりあえず解散するのですわ! 後日ミーティングを開くのでその際に状況報告しますわ!」


「「「 了解! 」」」


「爺や!みなさんを車でお送りするのですわ」


「かしこまりました。お嬢様」



 * * *


 ––ガチャッ

「ただいま~」

 自宅に戻ってきた太地と月人。夕飯のいい匂いがする。ちょうど早紀子が調理を終えて料理をテーブルに並べているところだった。

 今晩のメニューは早紀子特製牛すじコロッケとポテトサラダだ。ハイボールのダンボールの数量が心なしか少なくなったように感じる。


「おかえり~。どうだったの?なんかの合宿?」


「そうだね。青一高の先輩と資料を作っていて。無事に提出できたよ」


 席についてふう~と息をゆっくり吐く太地。慣れないお泊まり資料制作は太地の体力よりもメンタルに響いたようだ。


「いやぁ……きつかった~!」

 達成感からか、美味しそうに炭酸水を飲みながら自身を讃える太地。一缶目のハイボールをプシュッと開けて早紀子も労う。

「お疲れ! なんだか知らんが無事やり遂げたのは偉い!」

『確かに今回はうまくやったよな。あのメンツで』

「ありがとう。なかなか面白いチームだね」


 コロッケにはコショウをかけるのが一番うまい、という結論に至った太地がコショウをガンガンかける。 向かい合っている早紀子はソース派だ。

「あんた、それコショウかけ過ぎでしょう。」

「いや、これがコロッケの味を何倍もうまくするんだよ」

『確かに美味い! が、ソースも食べてみて~な~』


 月人に選択権はない。いつも思うことだがそこが辛い。
 いつものように自然と三人で楽しく話が盛り上がっていく。

 ふと、空いた間をチャンスとばかりに太地が早紀子に話を切り出す。

「あのさ……11月11日に区別対抗学戦祭っていうイベントが(ゴンダブルースタジアムの略称)で開催されるんだけど、そこに青川区の代表で出ることになったんだ。」


「ヘェ~。代表ってすごいじゃない。前に太地が言っていた事ね」

「そうそう。そのことでね」

(テロのことが無ければ観に来てと言いやすいんだけど。正直なんと言えばいいか……)


「月人はどう思う? 母さんを誘っていいと思う?」

 太地が月人に聞く。大丈夫と言ってくれという表情に見える。

『……まぁ、なんとも言えねぇけど、観にきてもらった方がいいんじゃね~の』

「そうか……」

 話を続けない太地に対し、二缶目を開けながら早紀子が言う。
「まぁ、どれだけダッサ~い展開になっても気にしなくていいから。母さんが笑ってやるし! せっかく太地が頑張るんだし、友達と応援に行くよ。出店とかもあるんでしょ? やっぱり串とチューハイかなぁ……」


 嬉しそうな顔をしている母親を見てどこか気が楽になった太地。


「……ありがとう! 優勝するから観にきて!」


「月人……実際に起こるかどうかわからないけど、もし、その可能性があるなら僕たちがテロを阻止しよう!」


 太地の引き締まった表情に月人が応える。


『おうよ!任せろ!』
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