Bloody Code 〜特殊な血を持つ天才少年が謎のリングで仲間になった「アイドル」と現実世界を無双する〜

大森六

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第二章 東京都区別対抗学戦祭編

第32話  決戦前夜

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 ––11月10日––

 太地たいち月人つきとは総合運動公園で動きの最終確認をしている。太地の一つ一つの動作は一ヶ月前のそれとは比較できないほどスピードとキレが増していた。
 更にその間の呼吸の乱れも一切なく、終始落ち着いていて、周囲がよくみえるほどの余裕が表情から伺える。

 現状出来る限りのことは全てやったという自信が太地の中にもあるのだろう。


『よし! 遠隔でロードするぞ50mだ!』


「了解!」


 そう言って、月人がエンドサーフェイスに戻る。そして太地が攻撃用トレーニングドールとの一連の攻防の中で視野を広げつつ集中する。


「……load range 50」


 その瞬間、月人が太地からおよそ50m先の地点に現れる。更に驚くべきことに月人はその距離を保ちながら自由に動きまわっている。シャドウボクシングとはいえない、とてつもなく速いスピードで。まさに月人レベルのイメージトレーニングだ。

 その場にある大きな広葉樹に直接ミドルキックした際に、太地の表情が若干苦しそうになる。直接的な攻撃を与えた時に発生する衝撃はシンクロ率の分だけ太地にも感じるようだ。

(問題ない……いける!)

 ドールに攻撃をしながら太地が月人を再びエンドサーフェイスに呼び寄せる。そして同じように別の離れた場所に月人をロードする……この動きを10ターンほど連続で実行した。

 ドドン!!!

 ドールが吹っ飛び、広葉樹に拳ほどの大きさの穴があいた。構えをといて、やや仁王立ちで呼吸を整える太地。

「フゥ~~」
 月人と目が合いお互いがコクリと頷く。


「コラ~! 何やってるんだ!」

 公園の管理業者に見つかったようだ。 


『やべ~。逃げるぞ太地!』

「おい! 都合いい時だけ自分からリングに戻るのやめろ! 木に穴あけたのお前だろ!」


「えぇっと……すみませんでした!!!」


 ダッシュで逃げる。これまでで一番速いスピードで。


 * * *


 夕食を終えて、太地は部屋に戻り月人と最終確認をしていた。


「テロを意識する前提だけど、あくまで競技に勝つことが大切だと僕は考えている。例えテロが起こってもね」

『あぁ、俺もそうすべきだと思うぜ』


「青一高の先輩から聞いている他のライバルチームの情報も把握しておこう」


 先日グループの最終ミーティングで提供された資料を見る二人。


「まず、過去の二大会はどちらも黒川区が優勝しているね」

『あぁ、やはり川区(旧23区)の中心エリアだけあってプライドと実力を兼ね備えたチームなんだろうな』

「勝利へのこだわりも一番強いらしいよ」

『でもって青川区は3位と6位か。チーム力としては去年の時点で他校よりかなり劣っている印象だな……なるほど。お嬢が必死こいてメンバー探す理由もわかるってもんだな~』



「個人的には黄山区が気になるなぁ。GSDジスドがある区域だからね。学生のイベントに何かするとは思えないけど、なんとなく気になる」


『気にしなくていいんじゃね~か? 明日全部わかることだし、今回の三つの課題は最後の個人競技以外は他チームへ干渉や妨害をするようなものでもなさそうだしな。競技に対して十分に想定している青川区が気にしなくてもいいと思うけどな』

「確かにね」

 月人が続ける。


『強いていうなら、自由参加枠の2チームが気になるけどな。予選を勝ち上がって決勝の舞台に立つわけだろ。しかも今回の協議内容って学力あまり関係ないだろ? 運動能力やその場の対応力、発想力とかの方が勝敗を分けそうだしな』


「あと……自由枠の学生はもしかするとNFNFエヌフの人間の可能性も……」


『……ありえるよな……その時は遠慮した方が死ぬと思えよ、太地』


「あぁ。母さんも観にくるんだ。テロを阻止する事に遠慮もためらいもないよ」


 強く言い切る太地。考えたくもないが、二人ともこの可能性は低くないと感じている。そしてこの事は権田成美ごんだなるみには伝えている。権田財閥の力で情報戦で負けないようにするためにも、太地たちが想定しているあらゆるリスクは権田財閥と共有していた。


(頼むから何も起こらないでくれ……)



 * * *


 ––11月11日––

 そして、いよいよ色祭りが始まった。



『みなさんこんにちは! 第三回東京都区別対抗学戦祭、実況を担当します緑一高三年の滝沢実花たきざわみかです!』

『第三回目を迎える通称色祭いろまつり。 解説には第一回優勝チーム、黒川区リーダーの河村亮かわむらりょうさんにお越しいただきました! 河村さん、よろしくお願いします!』

『よろしくお願いします!』



『さて、今大会は青川区のゴンダブルースタジアムで行われるという事で私も非常にワクワクしておりましたが、改めてこの実況席から眺めてみて感じましたが、広いですね!』


『いやぁ~私も驚きました。これは学生のイベントで利用するにはあまりにも大きするぎるのではないかと不安だったんですが……まさかこういう方法でスタジアムを運用するとは!って感じですよね~』


『そうなんです! 今、河村さんからもお話がありましたように、本大会は会場に仕掛けがございまして……なんとスタジアムの普段競技を行う場所であるフィールドに、立体的な巨大人口芝生の丘が幾つか設置されていまして、観客の皆様が寝っ転がって休憩したり、ジュースとタコ焼きを両手で持ち歩きながら座る場所を探したりと、自由に楽しんでいらっしゃいます!』

『じゃぁ、本日の競技自体は一体どうやって観戦するの? という事なんですよね!』

『河村さん、いいフリをありがとうございます! そうなんです! 実は本競技はスタジアムの観客席裏側に巨大ディスプレイが10台設置されておりまして、各チームの状況をリアルタイムで映し出すという仕組みになっているのです!』


『サッカーの試合でたとえますと、メインスタンド側には我々実況席と審査委員席、さらにはVIP席やメディアブースなどがありまして、我々メインスタンドの反対側に位置するバックスタンド側とその両サイドに位置するゴール裏側に10枚の巨大ディスプレイが配置されているという形ですね』


『はい! ですから我々実況席からすると10チームの動きが全て把握できます!
 そして観戦に来られた観客の方々はフィールドの好きなところでくつろぎながら選手の応援ができるという、なんとも面白い観戦形式となっております!私も出店で綿菓子わたがし買いたい!』

『私はイカ焼きが食べたいですね』
 
『ですよね~。そんな羨ましい状況はもうしばらく続きそうです!
 選手入場まで皆様、この一風変わったお祭りをお楽しみください!』






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