Bloody Code 〜特殊な血を持つ天才少年が謎のリングで仲間になった「アイドル」と現実世界を無双する〜

大森六

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第三章 関東大一揆、洛外編

第74話 権田支部での特訓

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「今からpossessionポゼッション type “all”<全身憑依ひょうい>を?」

『あぁ、ここから家までは大体10分くらいか。ギリギリもつんじゃねーか? 』


 太地たいちはpossession type “all” を一度経験している。そう、クルミと出会った路地裏でのpossession だ。あの時の身体の疲労感は今でも忘れることが出来ない辛い思い出だ。

(あの時とは状況が全然違うからな……)


「よし……やってみようか!」

 人のいない場所でスピードを緩めて止まる。ゆっくりと呼吸を整えて、気持ちを落ち着かせる。

「……月人つきと、準備はいい?」

『いつでもOKだ』


「……possession type “all”」

 言葉を発した瞬間に月人が太地の身体に取り込まれた。そして淡い光が太地を包み込み太地の髪の毛が逆立つ。 顔立ちもより凛々しくなる。光がやや弱まって風が身体を包む。前回とは少し状況が違うようだ。

『これはどういうことだ……』

 月人が太地の生身の身体で話す。そして太地にも変化が。
 以前と同じように幽体離脱したような境地で自身を客観的に見るのかと思いきや、まだ自分自身の中にいるのがハッキリと分かる。

「月人、僕はまだこの身体の中にいるっぽいんだけど」

『あぁ? てことは……二重人格的な状況か?』

 一人の男子が二人で会話するかのように話しているのだ。周りから見たらとても奇妙な光景である。おそらく頭がいかれた学生と思われるだろう。

「……やっぱり念話だね。とりあえず右パンチ出してみようか」

『一応忠告しておくが、空に向けて打てよ』

「OK。じゃあ軽~く……」


 太地が右腕を突き上げた瞬間、『ボッ』っと音をたてて鋭い風圧が上方へ舞い上がった。いや、空気が突き刺さったと表現するべきだろうか。

「「……」」

「……よし。 家まで走ってみるか」

『一応忠告しておくが、集中して進めよ』

「う、うん」


 そして、太地は一歩目を踏み出して前進しようとした瞬間、想像以上に身体がコントロールできていないことに気付く。 身体があまりに動き過ぎて太地の意識が追いつかない。

「うわ! 何だこの軽さは! いやむしろあまりに身体が軽過ぎて力加減できない」

『ヤベェ! 一旦止まれ! 壁にぶつかるぞ!』

「ちょっ、やば! 止まれない! 月人ジャンプしてくれ!」

「ちっ、 飛ぶぞ!」


 月人がかわりに太地をコントロールする。ギリギリのところで数十メートルジャンプして建物への激突を何とか避ける。そのまま空中で話す二人。

『いや~危なかったな……』

「……とりあえず、今は月人が僕を動かして家まで運んでもらっていいかな? これは今すぐどうこうできる自信、全く無いよ」

『そうだな。わかった。とりあえず、体力的にどこまでもつかやってみるか』


 そして、そこから5分も経たずに家に到着した。太地にまだ余裕はあったが、とりあえず憑依を解いて、気を落ち着かせる事にした。


「はぁ、はぁ、はぁ……これはまだ無理だ。身体への負担が大き過ぎる。動けるけど疲労がすごい」

『そうだな。まぁ、前回のヘロヘロだったときと比べたら、今はかなりマシになったよな!』

「はぁ、はぁ……うん。そうだね。一応鍛えていたからね」

『とりあえず、飯食ってまた部屋で作戦でも練るか!』

「お腹減ったわ……」


 家の扉を開けてリビングへ。 疲れはしたが、大き過ぎる一歩を踏み出すことができた太地たちだった。



 * * *


 12月3日 10:00——   GSDジスド権田支部 トレーニングルーム

 太地と月人はスキルアップのトレーニングをしていた。それを観ている権田成美ごんだなるみ。そして天月千鶴あまつきちづると六太も何やらアイデアを出し合っているようだ。

『もうちょっとイメージを鮮明にしねぇと出てこないのかもな』

「一応想像はしているんだけど。ちょっとどうやったらいいかが全く分からないや」

 銃撃と打撃専門の攻撃用トレーニングドール2体を前にしてドールの攻撃を避けながら太地が月人と話している。どうやら新しいスキル【フリーハンド】をモノにしたいようだ。


「左手をイメージ? それとも左腕から指先までの全体をイメージ?」

『左手のみだ。自分でその左手を自由に扱うイメージだ』


 ドールの攻撃をかわしながら、スキルを習得するために色々試しているが一向に変化がない。
 そしてドールを攻撃し破壊してしまう。そしてまた月人が新しい強いドールを生成する。その繰り返しだ。


「何ですの……太地さんの動きが全く見えませんわ。強いことはわかっていたとはいえ、ここまでレベルアップしているなんて……負けられないのですわ!」

 太地の激しいトレーニングをの当たりにして成美の闘争心に火がついた。小さい頃から一番を目指してきた財閥令嬢にとって、運動競技も同様に一番を目指すべき対象であった。そんな背景で育った成美は柔道と弓道において、全国大会で優勝した学生王者の実力を持っていた。 

 本来十分に誇って良い素晴らしい才能なのだが、ワンパンで自慢の財閥SPを吹っ飛ばした太地が現れてからずっと、己の武術の才能を太地に見せられずにいた。なんせ太地が化け物過ぎて、自分が小さな存在に思えたから……

 そんな成美お嬢が一皮向ける、その瞬間が今訪れる。


「月人さん!」

『ん? お嬢どうした?』


「……ワタクシにも格闘の指導をしていただけませんか?」


「「 え!!」」



(お嬢がですわ口調じゃなく話してるってことは……超本気モードだ)

『……別にいいぜ。お嬢は何が得意なんだ?』

「柔道と弓道が得意ですわ!」

『お⁈  そりゃなかなかいいじゃねーか』


 そう言って月人が成美に近づいていく。太地も見守る中、月人が成美の額に右手を当てる。そして何かを読み取る。

『お嬢、爺やを呼んでくれ。必要なものを準備してもらうから』

「了解ですわ!」


 嬉しそうに対応する成美を見て、太地も何となく嬉しくなる。色祭りの時のチームプレイを思い出していた。ふと、六太むったの様子も見てみる。

『……そこで、オイラの登場だ! ガツーンってやるから千鶴はギラーンってやればもう相手はイチコロどころかコロだぜ!』

 サングラスを掛けてメガホンを持ってお決まりの簡易アウトドアチェアに座って指導する六太むった。まるで映画監督のようだ。

「うん。わかったわ。むっちゃん……可愛い」


(あいつは一体何をしているんだろう……)


『それからな、千鶴。お前のスキルはただの補助スキルじゃねーぞ。オイラが教えてやるからちょっとマネしてみな。 敵が襲ってきた時にだな、相手の眼球目掛けてこうやってメンチ切って……いや、千鶴の場合はメンチ放つって感じで……』


(あいつは何を教えているんだろう……そしてなぜ天月さんは真剣に聞いているのだろう……まぁ、いいか。楽しそうにしているし。)


 こうして権田支部はシーカーそれぞれが、この日全ての時間をユニーク過ぎるトレーニングに費やした。そして同様に4日、5日もひたすらトレーニングを重ねて、6日を迎えるのであった。

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