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第三章 関東大一揆、洛外編
第93話 ドーナツのおかげ
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12月16日 8:50––
太地たちは権田支部へ急いだ。とんでもない事態だ。過去にたった一日で七回もの爆破テロが起こったことはあっただろうか。
これだけは何としても防がなければ。
権田支部で成美と合流した。当然成美も犯行予告の動画は確認していた。
GSD本部としては状況整理で手一杯で小松部長からは前回と同じ指令が強調されて出される。
「権田支部で今度こそ場所を特定しろと言われたのですわ」
『今度こそか……まぁ、確かに絶対命令だよな。七箇所もやられたら関東の住民は恐怖で役所にいけねぇわ』
「今でもすでに怖いしね。メディアは毎日このニュースだし、予告日ではなくても役所に行くの怖いだろうね」
とりあえず、支部司令室で関東マップを見る太地たち。赤いシールも大分増えてしまった。
『それにしてもわけわかんねえな。なんでいきなり東京にせめてこねえんだ? オイラなら攻めたいところに向かって総攻撃しかけるけどなぁ』
六太の意見も筋が通っている。一揆と謳っているわけだがら、戦略練って戦うというよりも全員で一気に攻めるイメージの方が強い。しかし現状は予告文というルールに従って無差別に行政を攻撃しているようにしか見えない。
『相変わらずどこに向かって進撃してるのか、さっぱりわからねぇ』
月人が地図上の襲撃された箇所を最初から順に指でなぞっていく……
いわき市、長野市、藤枝市、諏訪市、那須町、軽井沢町、矢板市、河津町……むちゃくちゃな順序だ。
「ターゲットの地域名にヒントがあるかもですわ。頭文字をとって繋げて読むとか、漢字を音読みで……」
成美もいろんなアプローチで考えてはいるが、全くわからない。そもそも本当に規則性があるのだろうか? 三人が疑問を感じ始めたところで太地が再び犯行予告文を確認していく。
《無能さを知らずに哀れに散っていった愚民共、そして観る価値のない三流喜劇を演じてくれたゴミ政府の諸君へ、ここに心から敬意を表し、その気概に対し誠実に応えていく所存である!
<1回目>
犯行予告無し。
11月30日 1:10 (福島県いわき市)
<2回目>
我々NFNFは、ここに関東大一揆の進撃開始を宣言する。
これから捲き起こる全ての事象、それはここまで私利私欲で国家を利用し続けてきたダミーガバメントの諸君に捧げるささやかな労いの品として、受け取ってもらえると幸いだ。
11月30日 22:15 (長野県長野市)
<3回目>
ダミーガバメントのゴミ共、並びにその下で幸せに暮らす愚民共に告ぐ。これより我々NFNFは関東大一揆を一歩洛中へと進撃する。
12月7日 07:53 (静岡県藤枝市)、09:30(長野県諏訪市)、12:26(栃木県那須町)
<4回目>
そして我々NFNFは関東大一揆をまた一歩洛中へと進撃する。
12月15日 10:11 (軽井沢町)、12:14(矢板市)、 19:09 (河津町)
<5回目>
《政府の諸君、我々の進撃をここまで防いだことは称賛に値する。しかし残念ながら、そんな活躍もどうやらここまでのようだ。
関東大一揆は、いよいよ御土居を攻め落とす。
12月23日 07:12 07:42 08:56 10:44 12:16 13:21 14:54
「御土居を攻めるのか……つまり洛外を突破して洛外と洛中の境界線、砦となる御土居が今回の進撃地という位置付けなんだな」
「つまり都内へ攻め込むってことですわ?」
『いや、ちょっといきなり過ぎるような気もするがなぁ。これまでの経緯からするとだが』
「……」
(奴らのいう『進撃』、『一歩』という表現は一体なんなんだ? どこに向かって進んでいるのか全くわからない。方向も狙う場所もバラバラだ。東京へ向かって進軍しているわけでは無いのか? 何か別の狙いがあるとか? 全くわからない……)
その後も全員で話し合ったものの、犯行予告の解読に対する進展は何もなく3時間が経過した。
「ダメですわ! 一回休憩も兼ねて昼食をとるのですわ!」
『あぁ、そうしよう。ちっともいい閃きがこねぇわ』
『よっしゃ~! 権田邸のランチタイムだぜ! オイラもう、腹がポコポコだよ』
「むっちゃん……お腹減っているのか、満腹なのかわからないよ」
* * *
12月16日 12:30–– 権田邸ダイニングホール
『今更なんだが現代においてダイニングがホールである必要性ってあるのか?』
月人が疑問に思うほど天井が高い。正直ちょっと落ち着かない。
「広い方が気持ちがいいのですわ! クルミはとてもライクですわ!」
久々のクルミだ。そういえば権田支部にはよく来るがクルミとはしばらく会っていない気もする。もしくはここ数日があまりに激動過ぎて、体感的には半年以上経っているように感じているだけかもしれない。
「クルミちゃん元気そうだね」
「エブリディ元気ですわ!」
習ったばかりの英語を披露したいのだろう。ちょいちょいカタカナ英語をぶっ込んでくる。恥ずかしそうにする成美とバカウケする月人。それを見て太地も少し気が紛れる。
「そういえば、成美先輩は学校の方はどうしてるんですか? 休学制度ってありましたっけ?」
「ありませんわ。特別にオンラインで講義を受けたり、小テストを受けたりして、それを出席代わりとしていただいていますわ」
「久々に青一高に行きたいですね」
「皆さん、太地さんのこと気にされていたのですわ」
『こんな太地に友達ができるなんて……』
『オイラ以外にマブダチいたのかよ?』
「クルミは太地のフレンドですわ!」
「いや皆さん、友達くらい普通にいますから……」
美味しい食事を楽しく終えて、いい気分転換になって再び司令室へ。真っ先に目に入る赤いシールが貼られた地図の存在。最早ストレスとなりつつある。これまで何時間にらめっこをしたのだろうか。
改めて、御土居というキーワードに着目する。間違いなく豊臣秀吉が関白の地位を得て、聚楽第建造の後に築いた土塁のことを指しているはずだ。
洛北からの侵入を防ぐための防壁としての役割を担っていた御土居。そこが次のテロの標的となっている。太地と月人にとって、この点が妙に引っ掛かっていた。
『御土居って防壁だろ? 防壁が爆破の対象になるってどういうことだ? 普通その中の城が標的になるだろ?』
「うん、まずは御土居を突破して、その後に城を狙うという意味なのか……」
「ターゲットは七箇所ありますわ。どれかが御土居でそのほかが城という位置付ということ……何か変ですわ」
「うん。この違和感は僕にとって『進撃』とか『一歩』とかの違和感と全く同じだ。文面通りに実際は進んでいないように思うんだが、NFNFにとっては有言実行できているようだから。そこがすごく解読する鍵になりそうな気がするんだよなぁ」
三人が再び考え込んで2時間程経過した。
––ガチャ!
「スイーツタイムですわ!」
クルミが司令室へ入ってきた。気を利かせてお茶とスイーツを準備してくれたのだ。
「これはミスッタードーナツという有名店のドーナツですわ!」
『名前……なんか色々ツッコミどころあるけどな……』
六太が嬉しそうに選んでいる。
『太地! オイラはこのポメデリングが食べたいから食ってくれ!』
アイドルの六太と月人は太地が感じた味覚を共有できるのだ。
「はいはい。わかったよ」
パクッと一口食べた瞬間に感じる脳が癒される感覚。脳が糖分を欲しているのがよくわかる。月人も満足そうだ。六太も大興奮で、 テーブルの上をペタペタ歩いて太地に次のドーナツを持ってアピールする。
「わかったからそんなに顔に近づけるなって。これ先に食べてからね!」
『それ一旦皿において、先にこのゴールデンチョコドーナツを食ってくれよ!』
「わかったって。ちょっとそんなに動かしたら表面の砂糖がこぼれるから……ん?」
地図と六太が持つドーナツが重なって太地の目に飛び込んできた。
そして太地の表情が一変する。
「まさか! そんな……」
『ん? どうした?』
ゆっくりと地図へ歩み寄り、正面で立ち止まる。ジッと見直してから、振り返って月人たちに告げる。
「 輪っかだ……関東大一揆の進撃は同心円状の定義だったんだ」
太地たちは権田支部へ急いだ。とんでもない事態だ。過去にたった一日で七回もの爆破テロが起こったことはあっただろうか。
これだけは何としても防がなければ。
権田支部で成美と合流した。当然成美も犯行予告の動画は確認していた。
GSD本部としては状況整理で手一杯で小松部長からは前回と同じ指令が強調されて出される。
「権田支部で今度こそ場所を特定しろと言われたのですわ」
『今度こそか……まぁ、確かに絶対命令だよな。七箇所もやられたら関東の住民は恐怖で役所にいけねぇわ』
「今でもすでに怖いしね。メディアは毎日このニュースだし、予告日ではなくても役所に行くの怖いだろうね」
とりあえず、支部司令室で関東マップを見る太地たち。赤いシールも大分増えてしまった。
『それにしてもわけわかんねえな。なんでいきなり東京にせめてこねえんだ? オイラなら攻めたいところに向かって総攻撃しかけるけどなぁ』
六太の意見も筋が通っている。一揆と謳っているわけだがら、戦略練って戦うというよりも全員で一気に攻めるイメージの方が強い。しかし現状は予告文というルールに従って無差別に行政を攻撃しているようにしか見えない。
『相変わらずどこに向かって進撃してるのか、さっぱりわからねぇ』
月人が地図上の襲撃された箇所を最初から順に指でなぞっていく……
いわき市、長野市、藤枝市、諏訪市、那須町、軽井沢町、矢板市、河津町……むちゃくちゃな順序だ。
「ターゲットの地域名にヒントがあるかもですわ。頭文字をとって繋げて読むとか、漢字を音読みで……」
成美もいろんなアプローチで考えてはいるが、全くわからない。そもそも本当に規則性があるのだろうか? 三人が疑問を感じ始めたところで太地が再び犯行予告文を確認していく。
《無能さを知らずに哀れに散っていった愚民共、そして観る価値のない三流喜劇を演じてくれたゴミ政府の諸君へ、ここに心から敬意を表し、その気概に対し誠実に応えていく所存である!
<1回目>
犯行予告無し。
11月30日 1:10 (福島県いわき市)
<2回目>
我々NFNFは、ここに関東大一揆の進撃開始を宣言する。
これから捲き起こる全ての事象、それはここまで私利私欲で国家を利用し続けてきたダミーガバメントの諸君に捧げるささやかな労いの品として、受け取ってもらえると幸いだ。
11月30日 22:15 (長野県長野市)
<3回目>
ダミーガバメントのゴミ共、並びにその下で幸せに暮らす愚民共に告ぐ。これより我々NFNFは関東大一揆を一歩洛中へと進撃する。
12月7日 07:53 (静岡県藤枝市)、09:30(長野県諏訪市)、12:26(栃木県那須町)
<4回目>
そして我々NFNFは関東大一揆をまた一歩洛中へと進撃する。
12月15日 10:11 (軽井沢町)、12:14(矢板市)、 19:09 (河津町)
<5回目>
《政府の諸君、我々の進撃をここまで防いだことは称賛に値する。しかし残念ながら、そんな活躍もどうやらここまでのようだ。
関東大一揆は、いよいよ御土居を攻め落とす。
12月23日 07:12 07:42 08:56 10:44 12:16 13:21 14:54
「御土居を攻めるのか……つまり洛外を突破して洛外と洛中の境界線、砦となる御土居が今回の進撃地という位置付けなんだな」
「つまり都内へ攻め込むってことですわ?」
『いや、ちょっといきなり過ぎるような気もするがなぁ。これまでの経緯からするとだが』
「……」
(奴らのいう『進撃』、『一歩』という表現は一体なんなんだ? どこに向かって進んでいるのか全くわからない。方向も狙う場所もバラバラだ。東京へ向かって進軍しているわけでは無いのか? 何か別の狙いがあるとか? 全くわからない……)
その後も全員で話し合ったものの、犯行予告の解読に対する進展は何もなく3時間が経過した。
「ダメですわ! 一回休憩も兼ねて昼食をとるのですわ!」
『あぁ、そうしよう。ちっともいい閃きがこねぇわ』
『よっしゃ~! 権田邸のランチタイムだぜ! オイラもう、腹がポコポコだよ』
「むっちゃん……お腹減っているのか、満腹なのかわからないよ」
* * *
12月16日 12:30–– 権田邸ダイニングホール
『今更なんだが現代においてダイニングがホールである必要性ってあるのか?』
月人が疑問に思うほど天井が高い。正直ちょっと落ち着かない。
「広い方が気持ちがいいのですわ! クルミはとてもライクですわ!」
久々のクルミだ。そういえば権田支部にはよく来るがクルミとはしばらく会っていない気もする。もしくはここ数日があまりに激動過ぎて、体感的には半年以上経っているように感じているだけかもしれない。
「クルミちゃん元気そうだね」
「エブリディ元気ですわ!」
習ったばかりの英語を披露したいのだろう。ちょいちょいカタカナ英語をぶっ込んでくる。恥ずかしそうにする成美とバカウケする月人。それを見て太地も少し気が紛れる。
「そういえば、成美先輩は学校の方はどうしてるんですか? 休学制度ってありましたっけ?」
「ありませんわ。特別にオンラインで講義を受けたり、小テストを受けたりして、それを出席代わりとしていただいていますわ」
「久々に青一高に行きたいですね」
「皆さん、太地さんのこと気にされていたのですわ」
『こんな太地に友達ができるなんて……』
『オイラ以外にマブダチいたのかよ?』
「クルミは太地のフレンドですわ!」
「いや皆さん、友達くらい普通にいますから……」
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改めて、御土居というキーワードに着目する。間違いなく豊臣秀吉が関白の地位を得て、聚楽第建造の後に築いた土塁のことを指しているはずだ。
洛北からの侵入を防ぐための防壁としての役割を担っていた御土居。そこが次のテロの標的となっている。太地と月人にとって、この点が妙に引っ掛かっていた。
『御土居って防壁だろ? 防壁が爆破の対象になるってどういうことだ? 普通その中の城が標的になるだろ?』
「うん、まずは御土居を突破して、その後に城を狙うという意味なのか……」
「ターゲットは七箇所ありますわ。どれかが御土居でそのほかが城という位置付ということ……何か変ですわ」
「うん。この違和感は僕にとって『進撃』とか『一歩』とかの違和感と全く同じだ。文面通りに実際は進んでいないように思うんだが、NFNFにとっては有言実行できているようだから。そこがすごく解読する鍵になりそうな気がするんだよなぁ」
三人が再び考え込んで2時間程経過した。
––ガチャ!
「スイーツタイムですわ!」
クルミが司令室へ入ってきた。気を利かせてお茶とスイーツを準備してくれたのだ。
「これはミスッタードーナツという有名店のドーナツですわ!」
『名前……なんか色々ツッコミどころあるけどな……』
六太が嬉しそうに選んでいる。
『太地! オイラはこのポメデリングが食べたいから食ってくれ!』
アイドルの六太と月人は太地が感じた味覚を共有できるのだ。
「はいはい。わかったよ」
パクッと一口食べた瞬間に感じる脳が癒される感覚。脳が糖分を欲しているのがよくわかる。月人も満足そうだ。六太も大興奮で、 テーブルの上をペタペタ歩いて太地に次のドーナツを持ってアピールする。
「わかったからそんなに顔に近づけるなって。これ先に食べてからね!」
『それ一旦皿において、先にこのゴールデンチョコドーナツを食ってくれよ!』
「わかったって。ちょっとそんなに動かしたら表面の砂糖がこぼれるから……ん?」
地図と六太が持つドーナツが重なって太地の目に飛び込んできた。
そして太地の表情が一変する。
「まさか! そんな……」
『ん? どうした?』
ゆっくりと地図へ歩み寄り、正面で立ち止まる。ジッと見直してから、振り返って月人たちに告げる。
「 輪っかだ……関東大一揆の進撃は同心円状の定義だったんだ」
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