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第四章 関東大一揆、洛中編
第102話 優秀過ぎるアイドル
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12月19日 08:00— 権田支部トレーニングルーム
今朝は沢田トンボと片瀬片奈も合流し、朝からトレーニングルームで各々のスキルアップを目指し訓練している。千鶴と成美と太地には六太が教官としてついて、トンボと片瀬には月人がついている。
六太は成美と千鶴に指示をだしながら、回復薬をせっせと拵えるという離れ業をやってのけ、月人はトンボと片瀬から同時に攻撃を受ける役割を担いながら、昨晩三人で話していた左手【フリーハンド】のことを考えている。
やはり太地のアイドルであるこの二人は優秀過ぎる。
一方、その主である太地も十体の攻撃型トレーニングドール(赤鬼生成レベル)への攻撃と防御をこなしつつ、背後から頻繁に襲ってくる成美の弓矢を二回に一回程度はかわせるようになっていた。そしてブツブツ言いながら自身のスキルアップも研究している。
昔、聖徳太子は一度に十人の話を同時に聞き分けたそうだが、それには及ばないにしても、彼らは超人だと周りのシーカーは感じていた。
『片奈の闇夜刀、使い方がかなり良くなってきたな。日本刀のイメージから時にはテニスラケットくらいの面を作り出せるようになってる。前回赤鬼ローダーの身体を抉り取った攻撃……これだな⁈』
「えぇ、闇夜刀をロードする際のイメージを変えることで線を面に変えることが自由にできるみたい。まだコントロールが不完全ではあるけどね」
『ポイントは面での一太刀は空気抵抗を受ける分、スピードが落ちることだな。それとDeep Amazo-nightの力をもう少し上手く引き出せるようになったら、飛び道具的に闇を放てそうな気がするんだが……』
「え! マジで⁈ それ最強じゃん!」
『いや、できるかどうかはお前の努力とBloody Codeによるからな。俺も確証は無いが……兎に角、筋力とスタミナもサボらず鍛えろよ!』
「わかったわ!」
攻撃を受けながら指導する姿と攻撃しながら指導を受ける姿、異質だったが大分見慣れた光景へと変わってきた。月人はそれを二人同時にやっているわけだが。
『トンボ、お前のスキル【友の力】、特にダブルエレメントはエネルギーを消耗し過ぎるみたいだな。ただ、今のところ戦えてるじゃねぇか』
「そうっスね。六太さんから薬に頼るなって言われてからここ数日はひたすら体力アップをしてたっス。エネルギー自体、体力とは関係ないって六太さんに言われたんすけど、俺、鍛え方分からなかったからとりあえず山に籠ってたっス」
『短期間とはいえ、山籠りか……何をしていたんだ?』
「えっと、そうっスね……熊狩りとか、滝にうたれてみたり、崖をよじ登ってみたり」
『なるほど。それで筋力も精神も両方鍛えられたわけか。無意味そうで結構いい訓練だったかもな。ダブルエレメントの持続時間も5分ほど。その後も戦えているしな』
「まぁ、一発も月人さんに当てられていないのが悔しいっスけど。こっちは何発も食らってるのに––」
そしてボディに強烈な蹴りを入れられて吹っ飛ぶトンボ。
『まぁ、それは仕方ねぇよ。俺は強いから』
月人のドヤ顔は全く嫌味っぽさが無い。本当に桁違いの強さだから。トンボも片奈も気持ちよく訓練できているようだ。どんどん月人から吸収していく。
一方、太地たちも負けていない。
『千鶴、かなり良くなっているぞ! できるならそこからもっと仲間に対して次の動きを意識しやすい視界を共有してやれ。成美と太地が同一人物と錯覚するくらいの共有度が理想だ』
「むっちゃん……難しい。どういうこと?」
『ん? なんていうかステータス【察】の能力をもっと高める……て言ってもわかりにくいな。よく以心伝心って言うだろ? まさにアレだ。双子レベルで共有させるために千鶴のスキルで二人の間の意識の架け橋を担ってやるんだよ。今以上に渡りやすい橋を掛けてやるって感じ。わかるか?』
「……うん。……なんとなくわかる」
『間があるな。まぁ、今すぐは無理だろうけどそこを意識してお前なりの答えを出せばいいさ』
「うん。わかった」
『成美はもっと弓を射るスピード上げろ。今太地がほとんどドールの相手してるじゃねぇか。今の倍は射撃しろって』
「そうしたいのはワタクシも同じなのですわ。でも結構太地さんに当ててしまうのが……」
『大丈夫だって、今以上に矢を放つことで本番に失敗を少なくできるんだからよ。(まぁ、本番の失敗=即死レベルだが、それは一旦置いといて)太地もかなり矢を避けてるし、お前の矢の攻撃も四本に一本は太地が避けることなくスムーズにドールを射抜いてる。この攻撃のポイントは直接ドールを射抜く弾道と迂回して太地の背後からドールを射抜く弾道があることだ。両方混ぜて矢を放て。そして太地のことは気にせずにもっと矢を放て』
「わ、わかりましたわ!」
同時に六太は太地にも念話で伝える。
『太地、お前の意識をより強く千鶴にリンクできるように頑張れるか? 千鶴や千鶴を介して成美がお前の意図を察知できるように』
「了解! やってみるよ。そろそろドールも足りないから月人に出してもらうか」
こうして、午前中はシーカー各々が充実した時間を過ごした。スキル使用による回復薬を六太からもらい、身体の休息として昼食を摂る。六太がふざけて成美が慌てるいつものシーンを太地が笑って流す。そして午後も同様にハードなトレーニングを行い、夕方解散後は各自のトレーニングで身体を追い込んでいく。これが今の日常となりつつあった。
刮目すべき点として六太の別の功績をここで紹介しておく。
六太は一つ大きな役割を果たしていた。それは権田成美と天月千鶴との関係性だ。今はかなり良好で、二人が心の壁を取り除いて話しかけるようになっている。成美はもともと名家である天月千鶴に、いや天月家に対して対抗意識があった。何より天月千早を太地争奪戦のライバルと勝手に認定している点から、姉の千鶴に対してもそれを警戒していた。
しかし、それは杞憂だったと成美は気付く。
姉の千鶴は六太に対して最上級の愛情と尊敬の念を持って接している。そして、成美と太地は同列の扱いだと気がついたのだ。もっと言うなら他のシーカーはその更に外側に位置しているのだろう。
千鶴はもともと社交的な性格ではない上に、スキル【見透かされた世界】のせいで見え過ぎる現実を拒絶すべくサングラスを掛けていた訳だが、その結果どんどん内向きな性格になり、周りからもとっつきにくい性格と誤解され、悪循環を生んでいた。それを救ったのが黒ポメラニアイドルの六太なのだ。
もともと犬好きの千鶴にとって、キュート過ぎる存在だった六太は今の千鶴の無くてはならない存在であると共に、ポ目薬をはじめ、スキルの上達やメンタルケアなど、全ての面で支えてくれるパートナーになっているのだ。
そんな六太がいるから、権田家でのお泊まり合宿も全く苦にならなかったし、成美とも仲良くなれた。今ではサングラスも必要無くなるくらいに目も回復し、天月家全体で喜ばれているという素敵なお話だ。
もはやちょっとした宗教レベルで六太を崇拝、敬愛している。それが天月千鶴なのだ。
こうして六太を介して急速に仲良くなっていく成美と千鶴。
そんな二人が今後の戦闘において伝説級の活躍をみせることになるとは誰一人知る由もなかった。
今朝は沢田トンボと片瀬片奈も合流し、朝からトレーニングルームで各々のスキルアップを目指し訓練している。千鶴と成美と太地には六太が教官としてついて、トンボと片瀬には月人がついている。
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やはり太地のアイドルであるこの二人は優秀過ぎる。
一方、その主である太地も十体の攻撃型トレーニングドール(赤鬼生成レベル)への攻撃と防御をこなしつつ、背後から頻繁に襲ってくる成美の弓矢を二回に一回程度はかわせるようになっていた。そしてブツブツ言いながら自身のスキルアップも研究している。
昔、聖徳太子は一度に十人の話を同時に聞き分けたそうだが、それには及ばないにしても、彼らは超人だと周りのシーカーは感じていた。
『片奈の闇夜刀、使い方がかなり良くなってきたな。日本刀のイメージから時にはテニスラケットくらいの面を作り出せるようになってる。前回赤鬼ローダーの身体を抉り取った攻撃……これだな⁈』
「えぇ、闇夜刀をロードする際のイメージを変えることで線を面に変えることが自由にできるみたい。まだコントロールが不完全ではあるけどね」
『ポイントは面での一太刀は空気抵抗を受ける分、スピードが落ちることだな。それとDeep Amazo-nightの力をもう少し上手く引き出せるようになったら、飛び道具的に闇を放てそうな気がするんだが……』
「え! マジで⁈ それ最強じゃん!」
『いや、できるかどうかはお前の努力とBloody Codeによるからな。俺も確証は無いが……兎に角、筋力とスタミナもサボらず鍛えろよ!』
「わかったわ!」
攻撃を受けながら指導する姿と攻撃しながら指導を受ける姿、異質だったが大分見慣れた光景へと変わってきた。月人はそれを二人同時にやっているわけだが。
『トンボ、お前のスキル【友の力】、特にダブルエレメントはエネルギーを消耗し過ぎるみたいだな。ただ、今のところ戦えてるじゃねぇか』
「そうっスね。六太さんから薬に頼るなって言われてからここ数日はひたすら体力アップをしてたっス。エネルギー自体、体力とは関係ないって六太さんに言われたんすけど、俺、鍛え方分からなかったからとりあえず山に籠ってたっス」
『短期間とはいえ、山籠りか……何をしていたんだ?』
「えっと、そうっスね……熊狩りとか、滝にうたれてみたり、崖をよじ登ってみたり」
『なるほど。それで筋力も精神も両方鍛えられたわけか。無意味そうで結構いい訓練だったかもな。ダブルエレメントの持続時間も5分ほど。その後も戦えているしな』
「まぁ、一発も月人さんに当てられていないのが悔しいっスけど。こっちは何発も食らってるのに––」
そしてボディに強烈な蹴りを入れられて吹っ飛ぶトンボ。
『まぁ、それは仕方ねぇよ。俺は強いから』
月人のドヤ顔は全く嫌味っぽさが無い。本当に桁違いの強さだから。トンボも片奈も気持ちよく訓練できているようだ。どんどん月人から吸収していく。
一方、太地たちも負けていない。
『千鶴、かなり良くなっているぞ! できるならそこからもっと仲間に対して次の動きを意識しやすい視界を共有してやれ。成美と太地が同一人物と錯覚するくらいの共有度が理想だ』
「むっちゃん……難しい。どういうこと?」
『ん? なんていうかステータス【察】の能力をもっと高める……て言ってもわかりにくいな。よく以心伝心って言うだろ? まさにアレだ。双子レベルで共有させるために千鶴のスキルで二人の間の意識の架け橋を担ってやるんだよ。今以上に渡りやすい橋を掛けてやるって感じ。わかるか?』
「……うん。……なんとなくわかる」
『間があるな。まぁ、今すぐは無理だろうけどそこを意識してお前なりの答えを出せばいいさ』
「うん。わかった」
『成美はもっと弓を射るスピード上げろ。今太地がほとんどドールの相手してるじゃねぇか。今の倍は射撃しろって』
「そうしたいのはワタクシも同じなのですわ。でも結構太地さんに当ててしまうのが……」
『大丈夫だって、今以上に矢を放つことで本番に失敗を少なくできるんだからよ。(まぁ、本番の失敗=即死レベルだが、それは一旦置いといて)太地もかなり矢を避けてるし、お前の矢の攻撃も四本に一本は太地が避けることなくスムーズにドールを射抜いてる。この攻撃のポイントは直接ドールを射抜く弾道と迂回して太地の背後からドールを射抜く弾道があることだ。両方混ぜて矢を放て。そして太地のことは気にせずにもっと矢を放て』
「わ、わかりましたわ!」
同時に六太は太地にも念話で伝える。
『太地、お前の意識をより強く千鶴にリンクできるように頑張れるか? 千鶴や千鶴を介して成美がお前の意図を察知できるように』
「了解! やってみるよ。そろそろドールも足りないから月人に出してもらうか」
こうして、午前中はシーカー各々が充実した時間を過ごした。スキル使用による回復薬を六太からもらい、身体の休息として昼食を摂る。六太がふざけて成美が慌てるいつものシーンを太地が笑って流す。そして午後も同様にハードなトレーニングを行い、夕方解散後は各自のトレーニングで身体を追い込んでいく。これが今の日常となりつつあった。
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六太は一つ大きな役割を果たしていた。それは権田成美と天月千鶴との関係性だ。今はかなり良好で、二人が心の壁を取り除いて話しかけるようになっている。成美はもともと名家である天月千鶴に、いや天月家に対して対抗意識があった。何より天月千早を太地争奪戦のライバルと勝手に認定している点から、姉の千鶴に対してもそれを警戒していた。
しかし、それは杞憂だったと成美は気付く。
姉の千鶴は六太に対して最上級の愛情と尊敬の念を持って接している。そして、成美と太地は同列の扱いだと気がついたのだ。もっと言うなら他のシーカーはその更に外側に位置しているのだろう。
千鶴はもともと社交的な性格ではない上に、スキル【見透かされた世界】のせいで見え過ぎる現実を拒絶すべくサングラスを掛けていた訳だが、その結果どんどん内向きな性格になり、周りからもとっつきにくい性格と誤解され、悪循環を生んでいた。それを救ったのが黒ポメラニアイドルの六太なのだ。
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