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第四章 関東大一揆、洛中編
第109話 狙いは県庁?
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12月23日 8:20―― 静岡県沼津市役所
それは全ての力を出し切った最後の一撃だった。
阿部十郎を払いのけて、無残な姿になった田中大佐のもとへ歩み寄る。そして獅子王部長が崩れ落ちる。
「クソォ!!!!」
そこへ到着したGGスタリオン。太地たちが降りてきた。状況は天月千鶴のスキル、見透かされた世界を共有したことで事前に把握していた。
すぐさま切り落とされた左腕を持ってくる。
「……な、何をしとるんじゃ……」
ここで全てを出し切った獅子王部長が意識を失う。
「獅子王部長! 今助けますわ!」
『大丈夫だ! 太地、ポメナインを塗ったぞ! 腕を繋げろ!』
「わかった!」
何とか傷は回復し始めた。しかし出血の量があまりにも多過ぎる。
「医療課を待つ時間はありませんわ! GGスタリオンの医務室へ運ぶのですわ!」
《小松部長! 獅子王部長の血液型を教えてください! 今から輸血します》
《B型 Rh+だ! 確かめるまでもねぇ。なんとしても獅子王部長を救ってくれ》
《もちろんですわ! 全力を尽くしますわ》
小松部長とのリンクを切る。そしてたった一人の生存者をGGスタリオンへ搬送し、権田支部医療課が懸命に治療を続けた。
* * *
時は遡り、昨日(22日)の探索課ミーティングにて
ミーティングの最後に月人は小松部長にある事を確認していた。
『おっちゃん、今回の爆弾の件、調査課は市役所だけでなく県庁も含めて調べているんだよな? つまり甲府、前橋、宇都宮と水戸だ』
「あぁ、いずれも県庁には爆弾が仕掛けられていなかったという報告だ。不破のババアは県庁の人間も23日は避難するように指示を出しているがな」
『それでいいと思うぜ。長野県庁がやられているからな。逆に爆弾が市役所だけにしか仕掛けられていなかったことが気になっちまうぜ』
「……小松部長、その爆弾の有無の報告は当然調査課が行なっているんですよね? 偽りって可能性はありませんか?」
「太地……疑っているのか? 調査課を」
「僕は調査課とは接点がありませんから正直わかりません。ただ、県庁に爆弾がなかったという報告はちょっと引っかかりますね」
月人も同意している。
「今回の爆破テロは権威を失墜させることが目的で、特に県庁爆破なんかはNFNFにとって格好の的ですからね」
「狙ってくるはずだってことだな。空の状態で」
「そうですね。NFNFにとっても人的被害が出すぎるのはよくないはずですから。仮に政権強奪に成功すれば、その後日本を統治していくのは宍土将臣ですからね。不要な犠牲は避けたいはずです」
『もちろん多少の犠牲は必要だった。この一連のテロにリアリティーを持たせて市民に強い恐怖心を抱かせるためにな。だがそれは……これまで十分なくらい犠牲を出しちまった。もうこれ以上の犠牲は奴らも望んでいないとは思いたいが……』
「俺の頭では、結局どういうことかわからないっス……」
トンボが混乱する。
「えっと、県庁の人間や俺たちGSDはNFNFからすると憎むべき偽物政府の犬だから県庁は壊したい……それなら爆弾を仕掛けるべき? でも将来のことを考えて、県庁の人間を殺さないほうがいい。だからこれ以上不要な犠牲は要らない、ってことは爆弾を仕掛けない? で、なぜ調査課はスパイ?」
「……県庁に仕掛けられた爆弾が本当は存在するのにGSDに報告せずに伏せている可能性を疑っているんだよね。もしくは調査課が県庁にこれから仕掛けることを……かな」
高杉が代わりに説明する。
「確かに、ちょっと奇妙ですわ。今回の御土居と題した戦いで県庁が四箇所ともスルーされているこの現状……」
「まず、調査課がスパイかどうかでいうと部長の吉幸一は白だと思うぞ。何かあるとすれば隊員だな……あいつは部下の管理って意味では獅子王部長並みに適当だからな。可能性はある。だが、その辺はご令嬢がしっかり調べたんだろ?」
「調査課のスタッフは総勢で60名程度ですわ。権田財閥のほうで身元調査をした結果は問題なかったですわ。ただ、その問題というのも過去にNFNFとの繋がりや農業関連の事業と繋がりがあるか、犯罪歴があるかを調べた結果ですわ」
『宍土を別のかたちで慕っている、思想に共感を持っている、そういった信仰心までは調べようがないってことだな?』
「えぇ、その通りですわ。やれることの限界として、一定期間24時間体制で監視をつけて徹底的に調べはしましたわ。これ以上はちょっと……」
「いや、十分でしょ。逆に個人の情報を丸裸にできたら怖いよ」
「スマホの使用履歴も全てチェックしていますわ」
「丸裸だった……ひょっとして僕のスマホも?」
高杉が汗をかくほど焦り始めるが、首を振るお嬢。
「探索課は対象外ですわ」
ホッとする高杉。
「「「……」」」
『……ローダーのリンクによる念話は調べようがねぇだろ?』
月人が発した一言がシーカー全員の表情を一変させる。
「ねぇ、それって調査課に限ったことじゃなくなるよね? 他の課のローダーにも――」
「いやそれはありえねぇな」
片奈の疑問を遮って小松部長が冷静に反応する。
「GSD内で活動する全てのローダーには宝生のスキル【Compulsory order<強制命令>】によってリンク念話の内容も宝生が管理できる仕組みになっているからな。下手な会話しようもんならすぐに見つかるぜ」
宝生がメガネをクイッとあげて反応する。
『宝生、一つ確認だが、お前のスキルはGSDのローダーから発した念話において成立する命令なんじゃねぇのか?』
「え? はい。それはその通りです。ローダー同士の会話を管理するための強制命令ですから。当然、GSDローダーから発した…… あっ、まさか⁈」
『俺、太地、ポメ公の三人はそのスキルをかけられていない。つまり外部の人間扱いだ。百歩譲って太地がGSDのローダー扱いだとしても、俺やポメ公はリンクでおっちゃんやお嬢、千鶴と念話で話をしているぜ。お嬢ももしかすると外部扱いかもな』
ハッとする宝生。月人は全てを察したが話を続ける。
『宝生、ポメ公と千鶴とお嬢はここ数日頻繁にリンクして念話しているが、その内容は受け取っているのか?』
「いいえ……何も受け取っていません」
「……つまりそれって」
『あぁ、GSD以外の外部のローダーから念話で連絡をとった場合、宝生のスキルは発動しねぇみたいだな』
「すみません……そんな抜け穴があったなんて」
「いや、宝生さんのミスではありませんよ。当時そのスキルを発動する際の状況と今とは違うでしょうから。また落ち着いてからやり直せばOKですよ」
太地のフォローに救われる宝生。周りのシーカーもその通りだと頷いている。
「あくまで可能性としてですが、研究課はやはり白としておきましょう。技術を盗んだ形跡が全くなく、NFNFがここまで使用したスキルや武器から判断するに、GSDの技術を応用したとは到底思えないので」
「おう。それは一理あるな。無駄に網を広げるよりもまずは冷静にできることを考えるとするか。そうなると、相変わらず機動課は23日に白黒はっきりするな。医療課と救援課はもともとなしと考えていいから、調査課と総務課だな」
『総務課はひとまず、保留でいいんじゃねぇか? そうなったら明日の決戦に関わってくるのは調査課のみだぜ』
「宝生、いますぐ不破のババアに報告しろ! 調査課の件も含めて対策を立て直すぞ!」
「「「了解!」」」」
22日の作戦会議はこうしてなんとかまとまったのだった。
* * *
12月23日 7:50―― 山梨県甲府市役所
太地たちは甲府市役所に待機していたが、小松部長から連絡を受けて月人を残して機動課を救いに沼津市へ向かった。
そして、その頃同時に権田支部のローダーより報告が入る。
「山梨県庁で爆弾が発見されました」
それは全ての力を出し切った最後の一撃だった。
阿部十郎を払いのけて、無残な姿になった田中大佐のもとへ歩み寄る。そして獅子王部長が崩れ落ちる。
「クソォ!!!!」
そこへ到着したGGスタリオン。太地たちが降りてきた。状況は天月千鶴のスキル、見透かされた世界を共有したことで事前に把握していた。
すぐさま切り落とされた左腕を持ってくる。
「……な、何をしとるんじゃ……」
ここで全てを出し切った獅子王部長が意識を失う。
「獅子王部長! 今助けますわ!」
『大丈夫だ! 太地、ポメナインを塗ったぞ! 腕を繋げろ!』
「わかった!」
何とか傷は回復し始めた。しかし出血の量があまりにも多過ぎる。
「医療課を待つ時間はありませんわ! GGスタリオンの医務室へ運ぶのですわ!」
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《B型 Rh+だ! 確かめるまでもねぇ。なんとしても獅子王部長を救ってくれ》
《もちろんですわ! 全力を尽くしますわ》
小松部長とのリンクを切る。そしてたった一人の生存者をGGスタリオンへ搬送し、権田支部医療課が懸命に治療を続けた。
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時は遡り、昨日(22日)の探索課ミーティングにて
ミーティングの最後に月人は小松部長にある事を確認していた。
『おっちゃん、今回の爆弾の件、調査課は市役所だけでなく県庁も含めて調べているんだよな? つまり甲府、前橋、宇都宮と水戸だ』
「あぁ、いずれも県庁には爆弾が仕掛けられていなかったという報告だ。不破のババアは県庁の人間も23日は避難するように指示を出しているがな」
『それでいいと思うぜ。長野県庁がやられているからな。逆に爆弾が市役所だけにしか仕掛けられていなかったことが気になっちまうぜ』
「……小松部長、その爆弾の有無の報告は当然調査課が行なっているんですよね? 偽りって可能性はありませんか?」
「太地……疑っているのか? 調査課を」
「僕は調査課とは接点がありませんから正直わかりません。ただ、県庁に爆弾がなかったという報告はちょっと引っかかりますね」
月人も同意している。
「今回の爆破テロは権威を失墜させることが目的で、特に県庁爆破なんかはNFNFにとって格好の的ですからね」
「狙ってくるはずだってことだな。空の状態で」
「そうですね。NFNFにとっても人的被害が出すぎるのはよくないはずですから。仮に政権強奪に成功すれば、その後日本を統治していくのは宍土将臣ですからね。不要な犠牲は避けたいはずです」
『もちろん多少の犠牲は必要だった。この一連のテロにリアリティーを持たせて市民に強い恐怖心を抱かせるためにな。だがそれは……これまで十分なくらい犠牲を出しちまった。もうこれ以上の犠牲は奴らも望んでいないとは思いたいが……』
「俺の頭では、結局どういうことかわからないっス……」
トンボが混乱する。
「えっと、県庁の人間や俺たちGSDはNFNFからすると憎むべき偽物政府の犬だから県庁は壊したい……それなら爆弾を仕掛けるべき? でも将来のことを考えて、県庁の人間を殺さないほうがいい。だからこれ以上不要な犠牲は要らない、ってことは爆弾を仕掛けない? で、なぜ調査課はスパイ?」
「……県庁に仕掛けられた爆弾が本当は存在するのにGSDに報告せずに伏せている可能性を疑っているんだよね。もしくは調査課が県庁にこれから仕掛けることを……かな」
高杉が代わりに説明する。
「確かに、ちょっと奇妙ですわ。今回の御土居と題した戦いで県庁が四箇所ともスルーされているこの現状……」
「まず、調査課がスパイかどうかでいうと部長の吉幸一は白だと思うぞ。何かあるとすれば隊員だな……あいつは部下の管理って意味では獅子王部長並みに適当だからな。可能性はある。だが、その辺はご令嬢がしっかり調べたんだろ?」
「調査課のスタッフは総勢で60名程度ですわ。権田財閥のほうで身元調査をした結果は問題なかったですわ。ただ、その問題というのも過去にNFNFとの繋がりや農業関連の事業と繋がりがあるか、犯罪歴があるかを調べた結果ですわ」
『宍土を別のかたちで慕っている、思想に共感を持っている、そういった信仰心までは調べようがないってことだな?』
「えぇ、その通りですわ。やれることの限界として、一定期間24時間体制で監視をつけて徹底的に調べはしましたわ。これ以上はちょっと……」
「いや、十分でしょ。逆に個人の情報を丸裸にできたら怖いよ」
「スマホの使用履歴も全てチェックしていますわ」
「丸裸だった……ひょっとして僕のスマホも?」
高杉が汗をかくほど焦り始めるが、首を振るお嬢。
「探索課は対象外ですわ」
ホッとする高杉。
「「「……」」」
『……ローダーのリンクによる念話は調べようがねぇだろ?』
月人が発した一言がシーカー全員の表情を一変させる。
「ねぇ、それって調査課に限ったことじゃなくなるよね? 他の課のローダーにも――」
「いやそれはありえねぇな」
片奈の疑問を遮って小松部長が冷静に反応する。
「GSD内で活動する全てのローダーには宝生のスキル【Compulsory order<強制命令>】によってリンク念話の内容も宝生が管理できる仕組みになっているからな。下手な会話しようもんならすぐに見つかるぜ」
宝生がメガネをクイッとあげて反応する。
『宝生、一つ確認だが、お前のスキルはGSDのローダーから発した念話において成立する命令なんじゃねぇのか?』
「え? はい。それはその通りです。ローダー同士の会話を管理するための強制命令ですから。当然、GSDローダーから発した…… あっ、まさか⁈」
『俺、太地、ポメ公の三人はそのスキルをかけられていない。つまり外部の人間扱いだ。百歩譲って太地がGSDのローダー扱いだとしても、俺やポメ公はリンクでおっちゃんやお嬢、千鶴と念話で話をしているぜ。お嬢ももしかすると外部扱いかもな』
ハッとする宝生。月人は全てを察したが話を続ける。
『宝生、ポメ公と千鶴とお嬢はここ数日頻繁にリンクして念話しているが、その内容は受け取っているのか?』
「いいえ……何も受け取っていません」
「……つまりそれって」
『あぁ、GSD以外の外部のローダーから念話で連絡をとった場合、宝生のスキルは発動しねぇみたいだな』
「すみません……そんな抜け穴があったなんて」
「いや、宝生さんのミスではありませんよ。当時そのスキルを発動する際の状況と今とは違うでしょうから。また落ち着いてからやり直せばOKですよ」
太地のフォローに救われる宝生。周りのシーカーもその通りだと頷いている。
「あくまで可能性としてですが、研究課はやはり白としておきましょう。技術を盗んだ形跡が全くなく、NFNFがここまで使用したスキルや武器から判断するに、GSDの技術を応用したとは到底思えないので」
「おう。それは一理あるな。無駄に網を広げるよりもまずは冷静にできることを考えるとするか。そうなると、相変わらず機動課は23日に白黒はっきりするな。医療課と救援課はもともとなしと考えていいから、調査課と総務課だな」
『総務課はひとまず、保留でいいんじゃねぇか? そうなったら明日の決戦に関わってくるのは調査課のみだぜ』
「宝生、いますぐ不破のババアに報告しろ! 調査課の件も含めて対策を立て直すぞ!」
「「「了解!」」」」
22日の作戦会議はこうしてなんとかまとまったのだった。
* * *
12月23日 7:50―― 山梨県甲府市役所
太地たちは甲府市役所に待機していたが、小松部長から連絡を受けて月人を残して機動課を救いに沼津市へ向かった。
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