Bloody Code 〜特殊な血を持つ天才少年が謎のリングで仲間になった「アイドル」と現実世界を無双する〜

大森六

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第四章 関東大一揆、洛中編

第118話 あんやや

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 12月23日 13:50―― 水戸市役所


 水戸市役所では成美たちが十番隊隊長原田左之助に苦戦していた。

 高杉に似たような防御系スキルを得意とする黒鬼般若はんにゃローダーだ。成美の弓撃を壁面バリアで防御し、片奈の闇すらも身体を覆うようにバリアをはって防いでいた。そして一発の打撃が重くて破壊力がある。


『我がスキル<気合の盾>は誰にも破ることはできんぞ』


 攻撃力はあるが、スピードが劣るため、片奈や成美には当たらない。しかし、攻撃を全て完璧に防御される。何より疑問なのは闇属性の攻撃を物理防御のスキルでなぜ防げているのか?


(まさか、闇の力が弱すぎるってことなんじゃ……)

 冬とはいえ、天気が良く空気がすんだ環境で照らす陽の光が想像以上に片奈の闇の力を弱めていた。

 と、考え込んでしまった片奈の小さな隙を見逃さず、原田左之助が強烈な左ボディーを叩き込む。


「グハッ! し、しまった……」

『もらったぞ! トドメだ!』


 原田がたたみかけようとした瞬間、顔面に向かって3本の矢が放たれた。それを下がって払いのける。

『ちっ、無駄なあがきを』


 すると、成美は何を思ったのか、倒れ込んでいる片奈に向かって矢を放った。
 数本の矢がドスドスと片奈の腹部に命中して突き刺さる。



『なんだと! 貴様なんのつもりだ』



 驚く原田に対し、間髪入れずに原田に向けて矢の雨を降らす成美。たまらず原田は全身にスキルを使用してバリアを形成し、これを防ぐ。


『一体、あやつは何を考え——』


 片瀬がサッと起き上がって成美の方へ向かう。


「サンキュー成美ちゃん! 矢のスキル、こんな使い方ができるのね!」

「上手くいってよかったですわ! 五分五分でしたわ!」


「……五分五分で私の身体に矢を放ったの? すごいメンタリティーね」


 そう、成美は六太むったの回復塗り薬、ポメナインM軟膏を矢の先端にたっぷり塗ってそれを片奈に放っていた。突き刺さった矢の傷もそのまま回復したのだが、これについては矢の形状を変えるとか、色々と突き刺さるリスクを抑えるアイデアもありそうなものだが……
 まぁ、無事に回復したということで片奈はこの件を忘れることにした。


 二人は市役所の大きな影に入っている。市役所北側の駐車場ということで、巨大な影があるのだが、原田はここへは入ってこなかった。深い影では自身のスキルで闇の攻撃を防げない可能性があるからだろう。


「ねぇ、成美ちゃんのその矢のスキル、もしかしてこういうことできない?」


 二人で話し込む様子をじっと待っている敵はいない。原田は付近においてある自動車を持ち上げてぶん投げてきた。やはり原田は影の領域には入らない。あそこは片奈の独壇場だ。


「ったく、うるさいゴリラね! 今相手してやるわよ」


 片奈がまっすぐ原田の方へ歩いてくる。そして陽が当たる場所へと足を踏み入れた。さらに前へ歩み寄る。ニヤリと笑う原田。

『覚悟を決めたようだな! 望み通りあっさり殺してやる!』


「成美ちゃん、今よ!」

「了解!」

 念話で呼吸を合わせて、片奈が大きく殴りかかってくる原田の攻撃をサイドステップでかわす。その瞬間かわして空いた目の前から数本の矢がまっすぐ飛んでくる。


『く! 気合の盾!』


 スキルで盾を形成した原田の顔面と喉元と胸元を矢が貫通していく。


『ガッ! な、なぜ……』


 前方へ崩れ落ちる十番隊隊長原田左之助。


 サムズアップでお互い検討を称え合う成美と片奈。そこへ太地たちがやってきた。

「終わったみたいですね! 見てましたよ! 」

『いい連携だったな! 良くやったぜお前ら!』


 月人が褒め称えた。遠くから見えていたのだ。市役所の影で二人で話しているときに成美の矢の先端に闇を集約させて小さな深い闇の矢を作り出していたことを。相手のスキルに関係なく貫通すると読んでの作戦だったのだ。

「名付けて『闇夜矢あんやや』かな」

 ドヤ顔で命名する片奈。

「いや……それはすごく読みにくいですわ」

「僕もそう思います……」



 そして予想通り原田の身体も徐々に消失していった。驚く片奈たちの横で、月人は疑惑が確信に変わる。


『間違いない。黒鬼の隊長は宍土将臣ししどしょうじんが生み出したアイドルだ』



 * * *


 12月23日 16:00―― GSD ファシリティstella  探索課執務室


 探索課は銚子市には向かわなかった。

 県庁は存在せず、赤鬼部隊を殲滅せんめつした現状において爆弾処理が完了しているなら、NFNFエヌフも動かないだろうという小松部長の判断だった。そもそもシーカー全員がもう動ける体力を残していないことを部長はわかっていたのだろう。

 案の定、銚子市では何も起こらなかった。こうして23日御土居の戦いは終結を迎えた。


 執務室に集まったものの、誰も口を開こうとしない。それくらい疲労が蓄積していた。


 空気を読んで小松部長がサクッと話をまとめる。


「今日の総括は明日にするぞ! だが一点だけ、トンボ。お前から報告を頼む」


「了解っス!」


 トンボだけは元気そうだ。

 スキルで虫たちに富士山を調査させた結果、NFNFエヌフの拠点は富士山にあることが発覚した。しかも富士山の6合目辺りに地下空間を掘って誰にも見つかることなく活動していたようなのだ。トンボによると内部の重要空間には結界が張られていて、虫たちもそれ以上内部へは進めなかったそうだ。

 しかしアジトの入口は見つかった。富士山ふもと、5合目付近の三箇所が発見された。普段は見つからないように隠蔽されている。




「よし、了解した。今日のところは解散だ。明日、NFNFエヌフが動くことを前提にここでミーティングを行うぞ」


「了解!」


 GGラインに乗って帰宅する成美、太地、月人、千鶴の四人。月人が千鶴に話しかける。

『富士山に現れた宍土は元気そうだったか?』

「……元気かどうかはわからなかったけど、前橋市の時と比べて疲れていたと思う。宇都宮の時は最後、倒れて血を吐いてたから、ダメージは重そう」

「そんなに無茶して撃ったんですね。それにしても栃木県庁のアレは冗談抜きで死にかけたなぁ」


「それ、笑顔で言うようなことではないですわ」


『宍土のポテンシャルやばいな。10隊ものアイドルを作り出しているとしたら……』

「しかもあんなマンガみたいなレーザービーム撃ってくるし……」


「……六太さんはどうしているのですわ?」

 重くなる空気を感じて、話題を変えるお嬢。



「そういえば、ずっと休んでいますね。小屋から出てこないなぁ」


「むっちゃん……私たちのために頑張ってくれた……」


 千鶴も落ち込んでしまう。

「まぁ、今日はゆっくり休みましょう! 細かいことは明日GSDジスド本部で話せばいいし、全部忘れてゆっくり身体のリカバリーに努めましょう!」



 こうしてまだ夕方が始まった時間帯だったが、太地たちの長かった一日がようやく終わりをむかえた。
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