心のテロップが見える彼女は、今日も勝手にツッコむ

由比ヶ浜入鹿

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01. バレてないよ!

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# バレてないよ!

 【本音:バレてない…よね?】

 カフェで待っていたすずの頭上に、でかでかとテロップが浮かんでいる。
 バレてます。めちゃくちゃ見えてます。
 というか、カバンからケーキ箱の角がはみ出してるんだけど。

 私には人の本音がテロップで見える。短くて、だいたい誤解させてくる。でも今日は誤解の余地がない。今日は私の誕生日で、すずはサプライズを企んでいる。丸見えだ。

「まひる! 今日は、えっと、なんでもない日だよね?」

 【本音:今日はなんでもない日、今日はなんでもない日…】

 自己暗示が漏れてる。
 でも、ここは気づかないフリをしよう。すずがこんなに頑張ってるんだから、最後は「えー! 知らなかった!」って感動してあげたい。

「うん、普通の日だね」
「だよね! 普通!」

 すずの笑顔がひきつっている。
 そして私の目が泳いでいる。演技、下手すぎる。お互いに。

 【本音:まひる目泳いでる…気のせい?】

 気のせいじゃないです。
 でも気のせいってことにして。お願い。

「あ、ちょっとトイレ……」

 すずが立ち上がった瞬間、カバンが傾いた。ケーキ箱がさらに露出する。「ハッピーバースデー」の文字がチラッと見えた。
 私は全力で視線を逸らす。見てない。なにも見てない。

 【本音:絶対バレてる…もう無理…】

 すずの本音が、悲痛だった。
 泣きそうな顔で「バレてない」って信じようとしてる。
 もう限界だった。

「バレてないよ!」

 言ってしまった。
 沈黙。
 すずが固まる。私も固まる。

「……今の発言で、バレたね?」
「うん」

 二人の間に、数秒の沈黙が落ちる。
 そして、すずが吹き出した。

「やっぱバレてた!」
「ごめん、最初から見えてた」
「知ってた! だって目、めっちゃ泳いでたもん!」

 すずがカバンからケーキ箱を取り出す。開けると、小さなホールケーキ。ロウソクが一本、ちょこんと刺さっている。

「もういいや、一緒に食べよ」
「うん」

 フォークを二本もらって、ケーキを真ん中から崩していく。
 サプライズは失敗した。でも、なんだか楽しい。

「来年は私がサプライズする番ね」
「え、まひるが? 絶対バレるよ」
「バレない。私にはテロップが見えるんだから、すずの反応も読める」
「それ逆に怖いんだけど」

 すずが笑う。私も笑う。
 毎年これでいい気がする。サプライズが成功しなくても、こうやって笑ってケーキを食べられるなら。

 ……問題は、私の演技も下手だってことだけど。

 【本音:来年どうやってバレないようにしよう…でも、まあいっか】
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