世界を破滅させる聖女は絶賛引き籠り中です

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幕間 勇者召喚

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「……ロストテクノロジーと呼ばれる古代の技術を復活させて文明を発展させている世界か。」
俺、高宮和人は、ディスプレイの画面を見ながら、つい声に出してそう呟く。
「っと、つい、独り言が多くなるなぁ。……って今もか。」
訳あって独り暮らしを始めて半年、出来るだけ人と関わらないようにしてきたため、対人スキルは最低に近く、かといって『独りでも生きていける!』と胸を張って言えるほど強くもない。
結果として、この独り言の癖がついてしまった。
……声に出せば、誰かが聞いてくれるような気もするからな。
勿論そんなことがある筈もなく、誰もいないことを思い知らされる結果となるだけなのだが、一度染みついた癖は中々治らないらしい。

「っと、続きは?」
俺は、おかしな方向に行き始めた思考を無理やり画面の中へと引き戻す。
今見ているのは『アルティメットスキル・オンライン』というMMORPGのチュートリアル画面だ。
『自分だけの究極のスキルを探す』という触れ込みのDMを目にしたのが3日前。よくあるスパムだと思って無視していたが、今日バイトを首になったおかげで時間が余る様になってしまったため、なんとなくDMのリンクを参照してみたのだ。

バックストーリーを読みすすめていくと、舞台になるのは高度文明が滅亡した数万年後の世界で、そこは文明水準は衰退したものの、遺跡として発掘される古代文明の道具や知識などを使いつつ新たな文明を築き上げている。
しかし、魔王復活の噂が流れ始め、それと同時に各地の魔獣たちの活動が活発になる。中には魔族の目撃情報まで飛び交い、各国は隣国の動きを気にしつつも対魔王軍に備えている。
プレイヤーは、そこで冒険者となりロストテクノロジーの発見を求めて冒険するもよし、腕にものを言わせて成り上がるのもよし、国家間を縦横無尽に移動し莫大な富を築くのもよし、魔王軍と戦い、魔王を討伐する勇者を目指すのもよし……すべては手にしたスキルをうまく使い、プレイヤーの才覚で好きに生きていく……といった趣旨のゲームだという事がわかる。

「ってことは、重要なのはスキルの組み合わせってことか。」
キャラメイキング画面に切り替わったディスプレイを見ながら呟く。
画面にはキャラクターの画像と各種ステータス及び、現在所持しているスキルの一覧などが表示されている。

種族 : ヒューマン BP:10
STR 10
INT 10
VIT 10
DEX 10
SPD 10
LUK 10
Total 60

クラス未定 
選択可能クラス一覧
『       』
所持スキルなし 所持SP:20
取得可能スキル
『       』

現在画面に映っているのがデフォルトなのだろう。試しにステータスのSTRの横の上向きの矢印をクリックしてみる。
1回クリックする度にSTRの数値が増えていく。
STRの値が15になったところで、選択可能クラスに『戦士』が現れ、スキル一覧に武器の心得や縦装備など、いかにも戦士に必要と思われるスキルが並んでいた。
次に種族のタブをクリックすると、エルフやドワーフといったおなじみの種族からフェアリーやトロールといった、RPGでプレイヤーが選べる種族としてはニッチなものまで多くの種族が現れる。
試しに『獣人』を選んでみると、さらに選択肢が出てきたので、その中から『狼』を選ぶ。
すると……

種族 : 獣人(狼) BP:12
STR 16
INT 8
VIT 12
DEX 8
SPD 18
LUK 6
Total 68

クラス未定 
選択可能クラス一覧
『 戦士 傭兵 』
所持スキルなし 所持SP:15
取得可能スキル
『獣化 格闘術 基本武器の心得 隠蔽 速度上昇 ……』

いくつかの項目が変わる。
その後も、確定ボタンはクリックせずに、色々触ってみてわかったことをひとつづつメモしていく。

まず、種族によって、基本ステータス値が変わる。
これは想定内の事で、エルフだと、INTが高いがVITが低いなど種族ごとに特性がある。ただし、固定ではなく、選び直す毎に数値に多少のばらつきがあった。
何度か繰り返せばVITが高めのエルフといったようなキャラクターも出来そうだ。最も基本値のみの事なので、今後の成長次第ではどう転ぶかわからないが。

次にクラスだ。
これはステータスの最低値が決まっているらしい。例えばSTRが14の時には出てこなかった『戦士』がSTRが15になると現れる。同じようにINTを15にすると『魔術師』が出てきた。
色々触ってみたけど、確認できたのは『戦士』『魔術師』『探索者』『神職者』『平民』の5つの職業だけだった。
単純にステータス値が足りないのか、初期はそれだけしか選べないのか、他に取得条件があるのか、今の段階では何とも言えない。

スキルは、どうやらクラスと連動しているらしく、選んだクラスによって、選べるスキルが変わっていた。
ただ、同じクラスでも種族やステータスによっては、現れるスキルに変動があるので、種族、ステータスにも関連することは間違いない。

そして、何より重要だったのが『再選択』と書かれた見えづらいボタンの存在だ。
何気に押してみると、ステータス値とBP、SPが変動する。
「これは種族を決めた後リセマラしろってことだよな。」
クリックし、変わる数値を見ながら呟く。
「とはいってもボーナスポイントが増えるなら、種族はヒューマン一択かな?」
ステータス値の総合値はヒューマンよりた種族の方が高い。しかし、種族特性なのか、妙に偏っているのだ。
一番偏っていたのはフェアリーで、総合値は108と他の種族と比べて圧倒的に高いのだが、その内訳はINTとSPDが共に50で、他の4項目が2といったように極端な差がある。
それに対し、ヒューマンは総合値が40~70と圧倒的に低めではあるが、すべてのステータス値に差がほとんどなく、これは成長値もバランスよく上がるだろうと期待できる。
低い総合値は、高いボーナスポイントで補えばいい。
一見すれば、同じ高いボーナスポイントなら、総合値の高い種族を、とも思わなくもないが、考えてみて欲しい、フェアリーの低いステータスをボーナスポイントで補完したとしても、フェアリーが剣をもって前線で戦う、というのは無理があるだろう。
運営側も、そのあたりの世界観は崩れないように調整はしているはずだ。
なりたい種族、クラスがあって、その弱点を補完すると言うなら別だが、そうでないのならば、バランスよく育てるのが無難だろう……もちろん、考え方は人それぞれだが。
とにかく、俺の戦いはこれからだっ!
俺は、万難を排して画面に向かい、マウスをクリックし始めた。


「……これで勘弁してくれぇ。」
どれだけクリックしたかわからない。3桁を半ば近くまで過ぎたころは、すでにクリックするだけの機械となり果てていた俺だ。
気づけば窓の外が白み始めている。
「これなら当面問題ないだろう。」
俺は画面を見ながら呟く。
問題ないというか、もう一度やり直して、この結果に近いところに戻すのにどれだけかかるかを考えると、これ以上の結果はないと無理やり結論付ける。
一晩かけて出した結果がこれだ。

種族 : ヒューマン BP:199
STR 13
INT 15
VIT 15
DEX 10
SPD 12
LUK 10
Total 70

「まぁ、SPが心許ないけど、それは仕方がないだろう。」
現在の所持SPは42。初期の20の倍はあるのでまぁいい方だろう。それより、欲を出してBPが減る方が問題だ。
リセマラをしている間、BPの変動はほとんどが10~30の間だった。たまに80とか90という数値が出るのだが、最初の頃に200越えのBPを見てしまったのがいけなかった。
200を超えるBPがあることを知ってしまうと2桁では満足できずたまに出る3桁も105とか108程度では納得できなかったのだ。
今の数値に至る直前にSP80という高数値が出たのだが、ステータスのトータルが48、BPが35と低めだったために却下したのだ。
50越えのSPを見たのが初めてだったため、ついもう一回、という気持ちもあったが、一晩かけて1回しか出なかったものが、次に出るのはいつか?しかもその時点のBPが今より納得いくものとは限らない。
どこかで妥協しなければ……いや、はっきり言おう、もう疲れたのだ。
199のBPなんて十分すぎる。あまり欲をかいてはいけないのだ。

「さて、このポイントをどう振るか……。」
ヒューマンを選んだからにはバランスよく振っていくべきだろうけど……やっぱ魔法は使いたいよな、とINTにポイントを割り振る。
「うーん、魔法使いって、腕力体力が低いのが問題なんだよな。」
後方からの攻撃・支援なのだから、防御力が低いのは仕方がない。直接戦うわけではないので攻撃力も必要ない、必要ないのだが……。
しばらく考えてから、VITにも割り振る。
「体力があれば死ににくいもんな。」
その後、少し考えてSTRにも振る。魔力が尽きた時、攻撃手段があるのはいい事だ。
色々考えて割り振った結果がこんな感じだ。

種族 : ヒューマン BP:199
STR 12→60
INT 13→70
VIT 13→60
DEX 10→25
SPD 12→29
LUK 10→25
Total 70→269

「うーん、バランスよく割り振ったはずなのに、おかしい……まいっか。」
その後、職業に魔術師を選び、魔術師関連のスキル……属性魔法・神聖魔法・詠唱短縮・必要魔力軽減のスキルを各8ポイントづつ使用して取得する。
「残り10ポイントか……。」
少し考えてから、格闘と耐久力アップのスキルを取る。
魔法が使えなくなった時の保険だ。武器を使うとなると、他のスキルも必要になってくるけど、格闘であれば余計なスキルは必要ない……筈。

「よしっ、これでOKだな。」
俺は確定のボタンをクリックする。
軽快な音楽と、美麗なグラフィック、そして、ストーリーに沿ってオープニングが流れる。
そして長いオープニングムービーが終わると『START』のボタンが現れる。
「ここから俺の冒険が始まるぜっ!」
俺はそう叫びながらクリックする。

そして意識が暗転する……。
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