独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

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第1章 精霊姫 編

第47話 【攻略対象 辺境伯令息】エドヴィンの叫び

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 レーナの言葉を遮って、女の声が響いた。しかも、脳裏に直接だ。

(来たーーー!)

 すぐに来るだろうと覚悟はしていた。けれど気を失うほどの破壊力を持つ、トラウマものの絶叫で深く心に刻まれたその「声」に、レーナは全身を強張らせる。傍のエドヴィンをはじめ、領兵や執事にもその声は聞こえているのだろう。皆一様に顔を青くしている。

 ただ一人、事情の分かっていないアルルクだけは耳に指を突っ込んで、怪訝そうに頭を傾げる。

『渡さない。帰らせないわ。この子は私と一緒に居るの。もう忘れられるのはたくさん! 勝手な決まりを作って、本当の約束を反故にして……あたしのことなんて何も考えないで、勝手に都合よく解釈して、忘れるなんてっ!! 勝手なことをするなら、あたしだって代わりを手に入れて好きにさせてもらうわ!!!』

 荒ぶる声が紡ぐ身勝手な恨み節は、かつて彼女と、初代ドリアーデ辺境伯との間に結ばれた約束があったこと、そしてそれが違えられたことを伝えている。

 約束した当人は、遥か昔に自身の命が尽きた後の愛の証明を、何らかの方法で後世の人間に表わしてもらおうとしたのだろう。

(多分、ネリネの花を彼女に贈るとか、そんな話なんだよね。それを忘れられない様に、シュルベルツの人たちが必ず「精霊姫とネリネの花」をセットで思い浮かべるまでに、念入りに、常識レベルに定着するほどまでに刷り込んで遺した……と)

 美談ではあるが、他人である子孫や後世の人間にとっては、とんでもない巻き添えをくらう迷惑な話でしかない。

「ほんと、はた迷惑な話」

『尽くしてきたあたしに、愛も知らない人間の小娘ごときが偉そうに!』

 レーナが、ぽろりと本心を零せば、精霊姫がキンキンと響く声で喚きたてる。

(あ、しまった)

 後悔するが遅かった。再びレーナの足元の地中から、尖った根っこが大挙して突き出してくる。

 しかも、レーナの左右の手を取ってエドヴィンとアルルクが立っているのだが、狙いは彼女一人らしく、レーナの所にだけ幾つもの根の先が飛び出してくる。足元の地面が急に剣山に変わった様な感覚だ。

「っつ!!」

 両足を地中から何か所も刺されて声にならない悲鳴を上げるレーナだが、刺さる傍から修繕リペアで吸収してしまうから怪我には至らない。けれど痛いものは痛い。

 その状況に気付いたアルルクは、さっとレーナを抱え上げ、エドヴィンは物理防御の魔法をレーナに掛ける。散々刺さった後での2人の行動だが、傷も残っていなければ血も出ていないから、後手でしかないことを指摘するにも説得力がなくて、レーナはむぐぐと口を噤む。

『なによあなたっ! 全部取り込む気!?』

 苛立った精霊姫の言葉に、守っていたつもりの2人がぎょっとレーナを見る。そうなのだ、実は手遅れだったんだよと苦笑してみせるしかない状況だ。

(精霊姫ったら、余計なことを言ってくれちゃって。アルルクとエドが気にしちゃうじゃない!)

 内心腹を立てつつの笑顔だったのだが、その引き攣ったレーナの笑顔を、エドヴィンは辛いのを堪えて自分に心配を掛けまいとする「健気な表情」だと捉えてしまった。
 だから、何とかして精霊姫を止めようとエドヴィンは考えを巡らせる。けれど、樹海の植物を自在に操り、結界を張って人の侵入を妨げ、いとも簡単に人一人を攫ってしまう存在に対して、あまりに自分は非力だとも理解してしまっている。

 それならば――嘗て人の男と恋に落ち、いまだ暖かな想い出を抱き続ける彼女ならば、情に訴えればなんとかなるのではないかと、エドヴィンは考えた。「そうだ……ドリアーデ一族を見守ってくださった方だ。私が訴えればきっと……」と、自らの気持ちを纏める様に呟いて、決意の強い光を宿した瞳で祠を見据える。

「もうやめてくれ! おばあさま!!」

 何とかして精霊姫を止めようとしたエドヴィンは、必死の叫びを上げた。
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