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第2章 火龍・水龍 編
第61話 【攻略対象 火龍の変化体】怪現象の後は異常気象!?
しおりを挟む精霊姫の絶叫事件こと、「樹海の怪現象」解決から半年が過ぎた。
今日最後の講義の終了時刻を迎えたレーナとエドヴィンは、揃って講師に挨拶をして席を立つ。陽はまだ高く、夕刻まではまだ2時間余りありそうだった。
歴史、地理、言語、古語、算術、マナー、音楽、美術、ダンス、剣術、体術など、多岐に渉って行われる学習は、講師を招いて領主館の一室で行われている。エドヴィンは、レーナと共通のメニューの他に、次期当主教育も受けていると言うから驚きだ。
小さな精霊姫とアルルクは、座学となる科目は退屈だと言って、揃って席を外してしまう。揃って広大な領主館の敷地内を駆け回ったり、時には樹海まで足を延ばしている様で、意外に気の合うところを見せている。辺境伯も、その日のうちに返って来られる場所まで足を延ばすのは黙認している様だ。
そして座学が続いた今日は、いつも通り1人と1柱揃って樹海散策を楽しんで来たらしい。エドヴィンとレーナが講義を受けていた部屋を出るなり、騒がしくも目に眩しい赤緑凸凹コンビが駆け寄って来た。
『あづいわぁぁぁ ひからびちゃうぅぅ! ちょっと、子孫!! なんとかしなさいよねっ』
「木がいっぱいだから 涼しいかと思ったのに 暑いんだもんなー! ここって、おれたちの村よりも すっげー暑いのなっ」
いや、楽しんで来たというより、涼を求めて足を運んでいたようだ。
シュルベルツ領を含む『ベルファレア王国』にも、もちろん春夏秋冬はある。季節で言えば、今は晩秋にあたり、普段ならばとっくに冷たい風が冬の気配を運んでくる時期だ。それなのに夏の暑さが一向に引かないばかりか、更に日差しを強めて、うだる暑さの日々を更新し続けている。そんな季節外れの暑さは、樹海の深淵に至っても逃れることは出来なかったようだ。
「気候をどうこう出来るわけないだろ。まず、暑いと思うなら走り回るな。屋敷の庭園にある、湖の東屋で涼んでいればいいだろ」
呆れて溜息交じりに告げるエドヴィンに、アルルクが唇を尖らせる。
「だって、もう側じゃないしっ 水も減って小っちゃくなってんだぜ? あんな小屋で寝てもあっついだけだって!」
「は? 小さくなってるだって?」
アルルクの言葉に、エドヴィンが目を見開いて声を裏返らせる。
「だって、その東屋って……前に、アルルクが湖に飛び込んだ場所よね?」
「レーナに しこたま怒られた場所だな」
レーナの思い描く場所は、夏の憩いの場所として作られた東屋だ。領主邸敷地内で最も大きな湖の中に島の様に浮かんで見える建物は、清しい白一色で統一されており目にも涼しい。
アルルクが領主館へ居座るようになってすぐに好奇心旺盛な彼が見付け、皆でも一度、訪れたことがある。アルルクが村の川遊びを思い出して湖へ飛び込んだのは、そのときの出来事だ。
それからすぐに事件解決のため遅れてしまった学習ノルマを取り返すべく、2人は勉強漬けとなった。
だから、エドヴィンは、季節外れの暑い日が続くとは思ってはいたけど、細やかな周囲の変化に注意は行き届いていなかった。レーナは、そもそもシュルベルツ領に来てまだ日も浅いため、プペ村とは随分気候が違うのだなと感じていた程度だ。
「一体どういうことだ? 夏は多少水嵩が減ることはあっても、水面を渡る風で涼は求められるはずだが。どこか別の場所と勘違いしていないか?」
「けど、領主邸の敷地内を隈なく走り回って、わたしよりもこの場所のことが良く分かってるアルルクが言うのよ」
怪訝な表情を崩さないエドヴィンだったが、レーナの言葉に「うむ」と小さく同意を告げる。
「とにかく、ちゃんと見に行ってみましょう?」
レーナの言葉に、3人と1柱は揃って湖の東屋へ向かったのだった。
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